ブッキング・ドットコム 2024年の7つの旅行トレンド予測を発表
旅行会社のブッキング・ドットコムは、「2024年の旅行に関する調査」を実施し、調査結果から7つの旅行トレンド予測を発表しました。私たちの生活に欠かせない水資源やウェルビーイングなど、サステナビリティに関わるさまざまな要素を、旅行者が求めていることが分かります。
本記事はブッキング・ドットコムによるトレンド予測を紹介しつつ、2024年に流行するであろう旅行について触れていきます。
ブッキング・ドットコムが予測する旅行トレンドとは
発表された2024年の旅行トレンド一覧を見てみましょう。
- もう1人の自分・主人公の私を楽しむ旅
- 水を通じて、生きている実感に触れる旅
- 偶然に導かれる、発見に満ちた旅
- 五感で味わい、風土を想う食体験
- 憧れのひとときを、アラカルトラグジュアリーで叶える旅
- デザイン美・マインドフルネスで、美意識をアップデートする旅
- よりよい明日へとつながる旅
ブッキング・ドットコムでは、近年著しいスピードで進化を遂げるAIが、今後どのように旅行セクターのビジネスモデルにポジティブな変化を与えるのか注目しています。また、他のトレンドでは、洗錬されたサステナビリティを求める動きを強く感じます。例えば、
「デザイン美」と「マインドフルネス」の両方を兼ね備えた旅が注目を集めることが予想されます。短期間の旅行だけでなく、人生においてより意識を高く持ち責任のある選択をしたいと願う旅行者たちにとって、インスピレーションにあふれる新たな可能性が広がっているのです。
水を通じて、生きている実感に触れる旅
サステナビリティの観点で特に注目したいトレンドが、「水を通じて、生きている実感に触れる旅」です。調査結果から、「気候変動が2024年の休暇の計画に影響を与えるだろう」と回答した旅行者が全体の51%にものぼりました。当然ながら、旅先の気候は過ごしやすさに大きな影響を与える要素であるとわかります。地球温暖化の進行により、日本はもちろん海外でも猛暑に苦しむ地域が増えています。そんな環境下だからこそ、暑さから逃れてリフレッシュできる「水」を通じて、生きている実感に触れる旅は、多くの旅行者に好まれると考えられています。
また、ただ涼しく、心地良いことだけが求められているだけではありません。例えば、マーメイドフィンを装着して海を泳ぐマーメイド体験やクルージングなど、「水」のある環境は旅行者に特別感を与えてくれます。そして、直接水に触れられなくてもサウンドバスをはじめ、水の要素を取り入れた体験ができれば、気持ちまで涼やかになれるのです。
「アラカルトラグジュアリー」という新ジャンル
旅行といえば「贅沢な体験」をイメージしてしまいがちですが、そんな固定概念が今後覆るのではと考えられています。2023年は、生活費が高騰する一方で、プチ贅沢がトレンドになりました。そのため2024年では、節約術を取り入れて低コストな旅行を楽しみつつ、「アラカルト」で贅沢を堪能できるプランが流行することが予測されているのです。
たとえば旅行先に近場を選べば、旅費を抑えて旅行を手軽に楽しめます。また、旅行のピークシーズンを避けて予約をするなど、経済状況が旅行トレンドに大きな影響を及ぼすことが予測されています。
人工知能(AI)の活用が一般化する時代、旅行者はAIという旅の相棒の力を借りて、お財布に優しい旅行計画をすることに興味があります。ブッキング・ドットコムの調査で、世界の旅行者の56%は、「AIには、旅をアップグレードできる付帯サービスやお得な情報についてアドバイスをしてほしい」と回答しています。AIを活用すれば、旅行先でのアクティビティやグルメなどの情報を簡単に収集することも可能となり、より充実した旅行を楽しめるようになると予測されています。
ローカルな食を味わう
世界の旅行者の61%が「今まで以上に、旅先の名物料理のルーツを知りたいと思っている」と回答しました。旅先で現地の美味しい食事を楽しみ、グルメをより探求したいと考える旅行者が非常に多いのです。そして、世界の旅行者の81%が「2024年はその土地ならではの料理に挑戦したい」と回答しており、旅先だからこそ味わえる、地元の食材を使ったグルメに触れたいと考えているようです。現地で親しまれている味を旅行者に提供することで、食文化の素晴らしさや奥深さなどを伝えられるでしょう。その土地ならではの食体験ができる時間になれば、より充実した旅行になるはずです。
さらに2024年は、食を探求する旅行者たちが、五感で食事を楽しめる体験を求めると考えられています。世界の旅行者の46%は「2024年はVRやARで進化した没入型の『フィジタル』(現実とデジタルの融合)な食体験をしたい」と回答しているため、空間演出や音楽などの要素が加わったグルメ体験の需要も高まっていくことでしょう。
サステナブルな旅行への着目も
デザイン美とマインドフルネスを兼ね備えた旅が注目されるとも予想されています。これまで「サステナブル」と「スタイリッシュ」のワードは似たニュアンスを必ずしも持っていたわけではありません。また、「エコトラベル」は原始的なキャンプ場をイメージさせるものでした。しかし、今後は「サステナブル」と「スタイリッシュ」「エコトラベル」の概念が融合し、快適さとデザイン性が同時に実現している宿泊・観光施設が求められるでしょう。
さらに「旅先の宿では、部屋に居ながらにして、外の自然の景色を楽しみたい」と回答した旅行者は65%でした。旅行を通じて環境やサステナビリティを感じさせる、また考えさせられる体験を求める旅行者は、世界的に増えていると考えられています。
サステナブルな旅行体験は、その旅行地の魅力や特徴などを知ると同時に、地元住民に対する理解を深められるメリットもあります。デザイン美や贅沢をただ求めるのではなく、美的感覚に訴えかけつつ、環境的・社会的な取り組みを感じさせるプランが、多くの旅行者の心に訴えかけるのです。
これまで以上に、2024年はサステナブルな旅行がより注目されるでしょう。サステナブルな旅行は、旅先の環境や地域コミュニティの経済を支援できる利点もあります。実際に世界で60%の旅行者が、「サステナブルな旅行アプリに興味がある」と回答しました。さらに、「あまり旅行者が訪れないような場所で地元の人々と交流すること」「旅行者がなかなかアクセスできない遠隔地を訪れること」などの体験を旅行中にしたいと希望する声も増えています。旅先でのサステナブルな体験を通じて、旅先から帰ったあとも、居住地の環境や周囲の地域コミュニティに対する配慮や関わりを持つことができるようになったと感じている旅行者もいるようです。
最後に
ブッキング・ドットコム・CMOであるアルヤン・ダイクは、2024年の旅行トレンド予測は「旅は日常から逃れるための手段ではなく、最高の生き方をするためのきっかけである、という旅行者の考えが反映されたものとなった」と語っています。
これまで旅行は非日常体験を楽しむためのものであり、贅沢な時間を過ごすことが美徳とされていました。しかし近年では、経済や環境、地政学などの変化が旅行者の価値観や考え方に影響を与え、選択肢や行動の変化をもたらしたように感じます。
2024年の旅行トレンド予測でサステナビリティに関わるテーマも大きく注目されています。しかしサステナビリティは、消費されるトレンドではありません。旅行・宿泊業者は、旅行者が求める選択肢の変化を見逃さず、旅行業におけるサステナビリティを当たり前の価値観とし、取り組みを推進してほしいと思います。
参照:ブッキング・ドットコム