企業の成長の秘訣は、時代背景などのほかにもいくつかの要因があります。特にお互いを認め合い、協力し合う関係性を築き上げるという心意気も、企業および組織のステップアップにつながります。
本記事では、組織の多様性にまつわる内容とポイントについて解説していきましょう。
ダイバーシティとは
ダイバーシティ(Diversity)とは、和訳すると「多様性」を意味します。さまざまな価値観を持った人たちが、人種・国籍・性別・年齢・宗教などに関係なく同じ組織や集団の中で共存する状況を指します。また、ダイバーシティはビジネスシーンにおいてよく使われるワードです。この場合、幅広い層における人材の採用と育成と、働きやすい環境の提供を指します。
インクルージョンとは
インクルージョン(inclusion)とは、日本語で直訳すると「包括・含有・一体性」であり、ビジネスシーンでは、組織内にいるメンバーが個性や考え方、価値観を認め合い、一体感を意識して働くことを指します。しかもインクルージョンは、年齢・性別・国籍などに関係なく、活躍の場を平等に与えるという要素が含まれています。
2022年7月に世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2022」を発表しました。日本の順位は146カ国中116位(前年度は156カ国中120位)であり、ほぼ横ばいの状況です。以下のグラフでもわかるとおり、政治参画の項目においては、女性議員が少ないということもあり、低い数値となりました。日本でも女性の働き方は多様化していますが、衆議院の女性議員数の割合が10%未満という低い数値であり、女性が政治に参加しにくい状況が続いていることがわかります。
LGBTQについて
LGBTQとは、性的マイノリティを表すワードの一つです。アルファベットの文字は、各ワードの頭文字からとっています。詳細は次のとおりです。
- L:レズビアン(Lesbian:女性の同性愛者)
- G:ゲイ(Gay:男性の同性愛者)
- B:バイセクシュアル(Bisexual:両性愛者)
- T:トランスジェンダー(Transgender:心の性と身体の性との不一致)
- Q:クエスチョニング(性的指向や性自認が明確でない)
これまで日本では、LGBTQ対象者は学校でも勤務先でも「○○であるべき」などのしがらみによって肩身の狭い思いを強いられていましたが、最近の多様性を認める動きが活発になってきました。例えば、履歴書などの書類の性別欄に関しては、男か女かのいずれかを選ぶというケースがなくなりつつあります。
多様性の組織を成長するために必要なこと
日本の企業文化は、戦後の技術革新がもたらした均質性のもとに築かれました。高度経済成長期に日本企業が大きな成長を実現できた1つの要因は、高い技術力で低コスト化と製品の小型化を図り、同じような人たちと長時間労働のもと、同じ品質のものを大量生産するビジネスモデルを構築できたことにあります。しかし、今の消費者は、均質的ではなく、多種多様な需要を持っています。この需要に対応するため、日本企業もビジネスモデルを変革していく必要があります。しかし、過去の成功体験があまりにも大きすぎ、均質的な思考から抜け出せなくなっているように思われます。21世紀の市場動向を考えた場合、均質であることはリスクでもあるのです。
今の日本では少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、企業や業種によっては新たな人手を受け入れる場合があります。なかには多様性に富んだ組織づくりが必要とされることがあるかもしれません。多様性のある組織を育むポイントは次のとおりとなります。
- 仲間全員に明確なビジョンを伝え、ゴールがわかるようにする
- メンバーの得意不得意を把握することで適切なポジションを考え、活躍を後押しする
- 働く人たちは異なる価値観の人とも関係性が築けるよう、共存意識を持つ
- 自分との「違い」を認める、受け入れる心を持つ
多様性に富んだ組織は、年齢・性別・国籍などバックグランドも多種多様です。今までのやり方では通用しないこともあるかもしれませんが、発想を切り替え、臨機応変に対応できる姿勢が必要です。
ダイバーシティおよびインクルージョンに対して取り組んでいる企業事例紹介
近年、ダイバーシティおよびインクルージョンに取り組んでいる企業がクローズアップされています。ここでは企業事例について紹介しましょう。
日本IBM
日本IBMでは、従業員の多様性を尊重する環境の実現が、顧客の成功に導くための重要な経営戦略の1つと認識しています。女性とLGBTQ+当事者などの活躍支援などにおいてダイバーシティおよびインクルージョンに注力しています。
三井住友海上火災保険株式会社
三井住友海上火災保険株式会社では、「多様な社員全員が成長し、活躍する会社」を実現するために、従業員がダイバーシティとインクルージョンへの理解を深める取り組みを行っています。加えて、多様性を尊重する社風を定着させるための取り組みにも注力し、従業員が成長し、活躍できるよう環境整備と意識改革に積極的です。
近年の日本では、ジェンダー・年齢・国籍などに関係なく活躍できる組織が増えつつあります。多様な人材が活躍できる環境を整え、提供することは、今まで見えなかった部分が発見でき、新たな組織の創出のヒントにもなります。このような流れによって、ニーズに合った人材を確保しやすくなり、組織のイノベーションにもつながることでしょう。