インダストリー4.0と脱炭素|ドイツの取り組み事例を紹介
鉄道、ガス、水道、電気、道路やインターネットなど、私たちの生活基盤をインフラは日々の生活において欠かせません。日本は蛇口をひねれば飲料水が出るなど、質の高いインフラが整った国の一つです。これらのインフラは、整備されることで安定した経済活動や教育機会の提供などに繋がる重要な基礎です。日本と同様に非常にレベルの高いインフラが整っている国がドイツです。そのドイツでは、インフラのアップデートに、脱炭素化、デジタル化、分散化の考えが取り入れられ始めています。
ドイツのインダストリー4.0
2011年にドイツが提唱した「インダストリー4.0」は、「第4次産業革命」と呼ばれるプロジェクトです。インダストリーとは、産業を意味します。あらゆる産業基盤をデジタルプラットフォームに変え、エネルギー産業において、De-Carbonization (脱炭素化)、Decentralization(分散化)、Digitalization(デジタル化)の3つをテコに、新たなビジネスモデルへの転換を進めています。
この記事では、ドイツのインダストリー4.0に取り組むドイツの企業をご紹介します。
世界の産業革新に取り組むドイツ企業の事例
世界経済の発展や持続可能な社会の実現には、インフラ整備や各国の産業問題を解決する必要があります。ドイツ発のインダストリー4.0は産業界において大きな注目を集め、数多くの世界的な企業がドイツの事例を参考にし脱炭素化やデジタル化を進めています。
ボッシュ
世界150か国に整備工場を展開する世界最大の独立系整備工場ネットワークを保有するボッシュ。ボッシュの革新的技術と世界中で実績を残している信頼と品質をもとに、持続的なインダストリーサービスを開発・提供しています。
ボッシュは、インダストリー4.0への取り組みを積極的に行なっており、製造業におけるネットワーク化を推進しています。新型コロナウイルスの拡大により、工場内のIoT(モノのインターネット化)の重要性が高まりました。物流管理や稼働管理、品質管理など、より効率よく安定的に生産するためには、自動化と正確性が必須です。 そこでボッシュは、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット化)の活用で、各拠点の生産性を最大25%向上させることに成功。現在は、産業機器の技術開発と世界産業業界へのさらなる貢献を視野に入れて活動しています。
シーメンス
製造業でのデジタル化や自動化において、世界に先駆けてインダストリー4.0の取り組みを開始したシーメンス。世界をリードするテクノロジー企業で、 プロセス産業や製造業の生産性向上に向けたデジタル化と自動化を構築しています。IoTを用いたインフラ構築やモビリティなど、世界のデジタル化において先駆的な役割を果たしています。
また、シーメンスのドイツ・アンベルク工場は、インダストリー4.0を体現するモデル工場として知られており、「インダストリー4.0ファクトリー」とも呼ばれています。そこでは、毎秒1製品を月に100万以上製造し、受注から24時間で顧客の手元に届けられます。また、欠陥検出率は99.9989%と驚異の数字を出しています。
素晴らしい成果が出せた要因は、シーメンスの設計者やエンジニア、オペレーターが仮想世界内で製品を共同設計し、開発・改善を進めたからだといわれています。さまざまなセンサーやIoT機器の大規模な導入により、毎日5,000万件におよぶ製品やプロセスのデータを収集し活用しています。まさにデジタル化によって、効率化、自動化、脱炭素化、分散化と幅広く成功した事例の一つです。
コンチネンタル・オートモーティブ
コンチネンタル・オートモーティブ株式会社は、ドイツの総合自動車部品メーカーで世界60ヶ国以上に拠点を有する一大企業です。売上も世界トップクラスで、ボッシュやデンソーに並び、自動車業界のなかで自動運転技術の向上に向けて積極的に取り組んでいます。
コンチネンタルはもともとゴムメーカーとして創業し、徐々に自動車部品事業を拡大してきました。近年注力している技術が、先進運転システムです。車の運転をより安全にできるよう、さまざまな技術を駆使して、自社の成長発展と社会へ貢献するために研究・開発を続けています。
インダストリー4.0においては、コンチネンタルの複数の工場で実践しています。新規ネットワーク技術を導入し、データ分析や稼働ラインの最適化など、製品の品質向上と生産性向上につながっています。今後もシステムサプライヤーとして、ネットワーク技術や新規技術を開発し、世界中の自動車業界を牽引していくでしょう。
まとめ
世界全体を発展させていくためには、日本をはじめ開発先進国だけでなく、後発開発途上国の持続可能な産業化の推進やインフラ整備が必要だといわれています。
今回ご紹介した3社は、ドイツの大手企業であり、インダストリー4.0推進の役割を担っています。これらの取り組みを参考にしながら、日本だけでなく、世界中でインダストリー4.0を進めていく必要があります。そうすることで、産業の基盤を築くことができ、インフラの整備も行うことができます。これにより、より多くの国の飢餓や貧困、持続可能な産業の基盤となるのではないでしょうか。
最後に、インダストリー4.0は、すべてをデジタル化することがゴールではありません。あくまでも手段として、包括的で持続可能な産業化を形成することを目標としています。また、SDGsの追求だけではビジネスの競争力はつかないため、「SDGs x デジタル化 x 分散化」で事業の発想転換を行うことが大切です。製造業において、ハードウェアのみで勝負する時代は終わりです。ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた「ものづくりサービス業」への転換によって、グローバル市場で勝負できる競争力を確保できるのではないでしょうか。