環境負荷を低減するだけじゃない!炭素の固定までする未来のコンクリート
私たちが住んでいる家や、遊びに行く遊園地や美術館、そしてそこまで続く道、それらの多くはコンクリートでできています。私たちの生活にコンクリートは欠かせません。しかし、人口の増加による建設ラッシュによってコンクリートの需要が高まることで、砂不足や二酸化炭素の排出といった問題を引き起こしています。
コンクリートの原料となる「セメント」とは
セメントとは、コンクリートを作るための材料の一つで灰色の粉末です。出来上がったコンクリートの多くは、私たちが歩いている道や車の走る道路に使われています。また、私たちの生活には欠かせない防波堤やダム、上下水道などのインフラを整備する際にも使用されています。このように、コンクリートは私たちの生活基盤を整える上で重要な役割をに担っています。
成長の著しい発展途上国では建設ブームもあり、多くのセメントが必要です。2019年に世界で生産されたセメントは41億トン、エンパイアステイトビル約1万4470個分に相当します。今後、世界の人口が増えるにつれて、都市の数も増えると言われています。すると必然的に必要なセメントの量も増加するでしょう。
その一方で、セメントやセメントを原料とするコンクリートは、環境問題を引き起こしています。
セメントが引き起こす問題
セメントの原料には石灰石やねん土、けい石などが使用されています。これらを混ぜて高温で焼却することで出来上がりますが、製造過程で多くの二酸化炭素が排出されます。世界全体で排出される二酸化炭素のうち、セメント産業からの排出は約8%を占めています。
また、このセメントを原料とするコンクリートは、砂不足という問題も引き起こしています。コンクリートを作るには、セメントに水、石、そして砂を加える必要があります。しかし、建設ラッシュが進むことで砂の需要が高まっており、その結果海水浴場が消えてしまったり、島ごと消えてしまうケースが起こっています。
一方、世界では砂漠化が進んでいるので、砂は豊富にあるように感じるかもしれません。しかし、砂漠のサラサラな砂はコンクリートには不向きだと言われています。川にある川砂と呼ばれるものが最も上質で良いとされていますが、スリランカでは採取しすぎた結果、川が逆流するなどの事態が起きました。陸地が減少し、海面の上昇もあって肥沃な土壌で塩害が進み、そこに暮らす生物や、ウミガメのように砂浜で産卵する生き物にとって大きな脅威となります。
このように、セメントやコンクリートは地球温暖化や生物多様性の喪失に拍車をかけています。しかし、セメントの原料として砂の使用をゼロにすることは難しいのが現状です。一部の地域では、使用済みのコンクリートやガラスをすり潰して砂にしているところもあるなど、少しでも負担を軽減しようと世界各国で研究や取り組みが進められています。
二酸化炭素を吸収する地面
世界では、セメントやコンクリートに代わるさまざまな素材が開発されています。その中でも今回は、株式会社グリーン&ウォーターが開発した、二酸化炭素を吸収する性質をもつ海水から抽出されるマグネシウムを使用した塗装剤ZEROカーボNソイルをご紹介します。
ZEROカーボNソイルは、コンクリート並の強度を持っているので、駐車場や歩道用の塗装など、耐久性が求められる場所にも適しています。また、使用方法はとても簡単で、素材を敷き詰めた後に散水するだけで自然な土の風合いのまま固まります。さらに、使用している素材にも注目です。海水から抽出されたマグネシウムと、火山灰シラスから作られた天然無機質系凝集剤、そして山砂などの自然由来の素材のみ使用しており、使用後は土に還すことも可能です。
最後に
セメントやコンクリートは決して「悪」ではありません。私たちが日々安心かつ便利に生活ができているのは、安価で質の良いセメントが普及し、幅広くインフラに活用されているからです。問題は、その消費スピードが早すぎることです。
コンクリートの使用をゼロにすることは難しかもしれません。しかし、ご紹介したZEROカーボNソイルを活用すれば、原料となるセメントを使用せずにコンクリートのような強度を手に入れることができます。
国内外でさまざまな代替品が登場しています。環境負荷が少ないだけでなく、循環型社会も実現できるような素材を適材適所で活用し、地球全体で持続可能なインフラを整備していく必要があると感じました。