ニュージーランドで起きた大災害は社会問題に|気候変動対策は?
南半球に位置するニュージーランドは、日本からも毎年多くの観光客が訪れる国の一つです。ニュージーランドでは、日本と同様に地震が発生します。
2011年に発生したクライストチャーチ地震を覚えている方も多いでしょう。また、2023年1月に大規模な洪水が発生しました。2月にはサイクロン(台風)が上陸し、歴史上3度目の緊急事態宣言が発令されました。
ニュージーランド周辺では、年に2回程度台風が発生しますが、上陸することはほぼないと言われていました。オークランドに20年以上住んでいる友人も、これまで経験したことがない大規模な災害だったと振り返っていました。
今回の記事では、まずニュージーランドの気候についてお伝えし、続いて2023年に起こった100年に1度と言われる大災害について、そしてニュージーランド政府の気候変動対策について解説します。
ニュージーランドの気候
南半球に位置するニュージーランドは、日本とは季節が逆転しており、四季がはっきりとした国です。気候は地域によって異なりますが、全体的に安定しており大雨が降ることはあまりありません。
また、年に2回程度台風が発生しますが、上陸することはほぼないと言われています。北島北部では亜熱帯性気候で温暖な夏が特徴的ですが、南島の内陸部や高山地帯では冬に気温が-10℃にまで下がることもあります。
それでも、ニュージーランド全体は国土が細長いため、多くの地域が海岸近くに位置しており、全体的に温暖な気候に恵まれています。
そんな安定した気候が特徴のニュージーランドで起きたのが、2023年1月に発生した大規模な洪水と、2月に上陸したサイクロン(台風)です。
ニュージーランドで起こった100年に1度の大災害
2023年1月から2月にかけて、ニュージーランド北部では、100年に1度と呼ばれる大災害が発生しました。豪雨に加え、サイクロン「ガブリエル」の上陸により、洪水や土砂崩れが発生しました。その結果、道路が封鎖されたり、孤立した街もあります。ニュージーランド政府は、今回のサイクロンによる被害額は、80億NZドル(約6,700億円)以上になる可能性があると発表しています。
サイクロンの上陸から半年以上経った今(2023年8月時点)でも、被災地では災害の痕跡が残っています。
同国の気候変動問題担当大臣であるジェームズ・ショー氏は、これらの災害の根本的な原因は気候変動であると国会で主張しました。この大臣の発言に対して、明確な原因が特定できないと否定する学者もいますが、影響を及ぼしている可能性はあると賛同する研究者もいます。
ニュージーランドの気候変動対策
ニュージーランド政府は、2022年に初めてGHG排出量削減に向けた具体的な計画を発表しました。計画には、交通・輸送部門からエネルギー、農業、廃棄物に至る各セクターの削減目標と目標を達成するための詳細なアクションプランが記載されています。
各セクターの具体的なアクションプランについて知りたい方はこちら
交通・輸送部門の具体的なアクションプランを見てみましょう。
交通・輸送部門の具体的なアクションプランとは
ニュージーランド政府は、交通・輸送部門の脱炭素化によって、ニュージーランドの国民に対して快適な交通手段を提供すると宣言しています。2035年までにすべての新車を低排出ガスまたはゼロエミッションとし、トラックや船舶、飛行機といった輸送手段の脱炭素化も大きく進展させる予定です。よりクリーンな交通手段に変えていくことは、脱炭素化を推進するだけでなく、排気ガスによる大気汚染や騒音の軽減にも繋がります。
ニュージーランド最大の都市であるオークランドでは、自動車による渋滞も社会問題となっています。アクションプランでは、都市部でより徒歩や自転車や公共交通機関を利用できるよう整備及び開発が進められていることが述べられています。
また、ニュージーランド政府は、今後も起こると予想される気候変動や大規模な自然災害に対して適応するための計画も発表しています。気候変動の適応とは、既に現れている、あるいは中長期的に避けられない気候変動の影響に対して、自然や人間社会の在り方を調整し、被害を最小限に食い止めたり、逆に気候の変化を利用した取り組みを指します。
ニュージーランドの気候変動に対する適応計画は、自然環境・生態系、建物、インフラ、コミュニティ、そして経済の5テーマで構成されています。同計画には、ニュージーランドが気候変動による脅威に適応するための戦略、政策、行動が記載されています。
具体例として、生態系というテーマに焦点を当てて紹介します。
自然環境・生態系から見る適応策
ニュージーランドは、豊かな大自然と生態系で成り立っています。健全な生態系は、気候変動の影響を緩和することができます。国際的に、生物多様性の危機と気候の危機は密接に関連していると認識されています。炭素を吸収し、循環することで気候変動の緩和に貢献しています。他にも、生態系を保護することは、水の安全保障や文化の保護、心身の健康にも影響します。
ニュージーランドは、農業大国として多くの野菜やフルーツを栽培しています。しかし、近年はクイーンズランド・フルーツフライ(Qフライ)という害虫による被害が多発しており、バイオセキュリティ上の脅威となっています。今後、地球の平均気温が上昇すると、Qフライが侵入地に定着する可能性が高くなると言われており、2015年にはQフライの集団繁殖が発見されました。しかし、同国はそれ以降、監視を続けており、2015年から2023年の現在に至るまでQフライによる定着を防いでいます。
最後に
ニュージーランドは、2023年はじめに起こったサイクロンや洪水により甚大な被害を受けました。同国は、今後も起こると予想される気候変動による脅威に対応するための対策、そして気候変動を緩和するための対策も同時に行っています。
日本でも、近年大型の台風上陸や豪雨による被害が頻繁に起こっています。私たちは、脱炭素やカーボンニュートラルといった緩和策に目が行きがちですが、適応策についても再考が必要だと感じます。気候変動の適応策は、自治体に委ねられている部分が非常に多いです。予算の関係もあり、自治体によって適応策の実施状況が大きく異なります。根本的な対応方法から変えるべき時なのかもしれません。