SDGsウェディングケーキとは?構造や層ごとの目標・意味を解説
日本でもすっかり定着してきた「SDGs」ですが、SDGsウェデイングケーキという言葉があるのはご存知でしょうか?
SDGsウェディングケーキとは、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)における17の目標を、ウェディングケーキのように表したモデルです。
それぞれの目標が関わり合う関係性について、サステナブルを目指す企業だけでなく、私たち個人にとっても身近な考え方として注目を集めています。
今回は、SDGsウェディングケーキという考え方や、SDGsウェディングケーキを構成する3つの層について、さらには日本のSDGs達成度についてもわかりやすく解説します。
SDGsウェディングケーキとは
SDGsウェディングケーキモデルとは、国連が提案した持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標をウェディングケーキのように表したものです。それぞれの目標は密接に関わっており、目標同士の関係性がわかりやすく示されています。
SDGsウェディングケーキのモデルは、スウェーデンのストックホルム・レジリエンス・センターの研究者、ヨハン・ロックストローム博士によって発表されました。
ヨハン・ロックストローム博士は、地球規模の持続可能性問題を研究し、国際的にも高く評価されている博士です。
SDGsには17の目標があり、ウェディングケーキモデルでは「生物圏」「社会圏」「経済圏」の3つに分かれています。そして、3つの層を通じて頂点に「パートナーシップで目標を達成しよう」という17番目の目標が配置されています。
SDGsウェデイングケーキを作る3つの層とは
SDSsウェディングケーキは、一番下から生物圏(Biosphere)、社会圏(Society)、経済圏(Economy)の層で構成されています。
一番上の層である「経済圏」のトップには、17番目の目標である「パートナーシップで目標を達成しよう」が置かれています。
それぞれの目標を達成するために国境はもちろん、業界や業種を越えた地球上のすべての人々が、パートナーとして協力していこうという意味を表しています。
ここからは、SDGsウェデイングケーキの3つの層について、それぞれ詳しく説明していきます。
生物圏(Biosphere)の層
一番下が、生物圏(Biosphere)の層です。私たちが生きていく上で必要不可欠な森林や海、水問題や気候変動に関する目標を含んでいます。生物圏の層は、以下の4つの目標です。
- 目標6:安全な水とトイレを世界中に
- 目標13:気候変動に具体的な対策を
- 目標14:海の豊かさを守ろう
- 目標15:陸の豊かさも守ろう
具体的には、海洋プラスチックごみの削減や森林保護活動などがあります。最近ではスーパーでのレジ袋が有料化したり、プラスチックストローが廃止されたりしています。
どれだけ社会が発展しても、経済が回っても、地球そのものが問題を抱えていては持続可能な世界は作れません。社会圏や経済圏を支えるためにも、しっかりとした土台となる生物圏が必要です。
社会圏(Society)の層
真ん中にあるのが、社会圏(Society)の層です。私たち人間が不自由なく生活したり、働いたりするための目標で、社会を作る上で大切な要素が含まれます。社会圏の層は、以下の8つの目標です。
- 目標1:貧困をなくそう
- 目標2:飢餓をゼロに
- 目標3:すべての人に健康と福祉を
- 目標4:質の高い教育をみんなに
- 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
- 目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 目標11:住み続けられるまちづくりを
- 目標16:平和と公正をすべての人に
具体的には、生活保護制度や再生可能エネルギーの普及などが挙げられます。日本は学校給食や国民健康保険制度などが整っているため、比較的、社会圏の層はしっかり作り上げられています。
しかし、まだまだジェンダーの面で不平等さが目立ったり、地震や台風の影響を受ける地域が多く存在したりと、課題が残されているのが現状です。
生物圏によって生活環境が整ったとしても、「差別・偏見」「地域格差」などの社会的な問題があっては、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」というゴールを達成することはできません。
社会圏の目標を達成することで、持続可能な社会に必要な「経済圏」の基盤を作り上げることができます。
経済圏(Economy)の層
一番上にある層が、経済圏(Economy)の層です。経済を豊かに発展させるために必要な目標が含まれます。
社会で働く人々の「働きやすさ」や、人や国に対する差別や偏見をなくすことで、国や世界の経済発展に繋がることを示しています。
経済圏の層は、以下の4つの目標です。
- 目標8:働きがいも経済成長も
- 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
- 目標10:人や国の不平等をなくそう
- 目標12:つくる責任 つかう責任
具体的には、最低賃金の引き上げや、持続可能な消費の推進が挙げられます。日本では、労働者の生活を支えるために最低賃金が定期的に見直され、引き上げられています。
エコマークが付いた製品や、省エネルギー性能の高い家電製品を選ぶことも大切です。環境負荷を減らすことができ、持続可能な消費に繋がります。
最上層にある経済圏は、生物圏と社会圏の両方が揃ってはじめて機能します。
SDGsウェディングケーキ全体の頂点に位置しているのが、17番目の目標である「パートナーシップで目標を達成しよう」です。SDGsウェディングケーキの軸とも言える目標17は、全ての目標を国境や業種に関係なく、全員で達成していくことが大切です。
日本のSDGsの目標別 達成度合い
持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が発表した報告書によると、2024年における日本のSDGs達成度は、167カ国中18位でした。
赤は「最大の課題」、オレンジは「重要課題」、黄色は「課題が残っている」、緑は「SDGsが達成できている」ことを意味しています。
中でも注目すべきは、以下の目標です。
- 目標13:気候変動に具体的な対策を
- 目標14:海の豊かさを守ろう
- 目標15:陸の豊かさも守ろう
上記の目標は「社会圏」「経済圏」の基盤になる「生物圏」に該当します。ところが、日本はまだ「最大の課題」を抱えているのが現状です。
日本は周りを海に囲まれた島国であるため、世界の水産物の漁獲量ランキングでは常に上位にいます。海の豊かさを守ることは、私たち日本人が意識しなければならない課題といえます。
報告書によると、ランキング1位であるフィンランドや、2位のスウェーデンでさえも、赤の「最大の課題」とオレンジの「重要課題」が表示されています。ランキングが上位の国であっても、目標を完全に達成するのはまだまだ難しい状況です。
SDGsウェディングケーキの軸でもある、17番目の目標「パートナーシップで目標を達成しよう」が示すように、国や企業はもちろん、私たち自身ができることから積極的に行っていくことが大切です。
Sustainable Development Report 2024(持続可能な開発報告書2024)のダウンロードはこちら 》
サステナブルを目指す企業にとって大切なこと
サステナブルを目指す企業にとって大切なことは、経済合理性では解決できない社会課題に取り組んでいく姿勢です。
企業がサステナビリティやSDGsに向けた取り組みを行う際、「経済合理性」の話がよく出ます。経済合理性とは、経済的な価値基準をもとに判断した場合に、利益があると考えられる状態のことです。
今、世界に残っている課題は、環境破壊や貧困・格差など、経済合理性の外側にあるものがほとんどです。利益を追求するのも大切ですが、経済合理性が成り立たない問題に対して、どのように解決していくかが問われています。
多くの経営者が、経済合理性の境界に立たされており、どう対処すればよいか悩んでいるのではないでしょうか。
サステナブルを提唱している企業にとって、社会課題にしっかりと向き合い、SDGsの目標達成に向けて貢献する姿勢が大切です。
最後に
SDGsウェディングケーキは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を3つの階層に分けたモデルであると解説しました。
一番下の「生物圏」は自然環境を守る目標、真ん中の「社会圏」は人々の生活に関する目標、そして一番上の「経済圏」は持続可能な経済成長を表しています。
自然を守ることが社会を支え、その結果、経済が成り立ちます。SDGsウェディングケーキモデルを理解することで、SDGsの目標がどのように関係しているかがわかりやすくなったのではないでしょうか。
まだまだ課題の多い日本において、国や企業だけでなく、私たち一人ひとりができることから積極的に行っていくことが大切です。
参照:
Sustainable Development Report 2024
The SDGs wedding cake – Stockholm Resilience Centre
SDGsのアイコン | 国連広報センター