SDGs導入の5ステップ|企業が成功するための具体的手順を徹底解説
国連が掲げている持続可能な開発目標SDGsに取り組んだ方が良い、ということは理解していながら、具体的な方法が分からずなかなか踏み出せないという企業は多いのではないでしょうか?
そうした企業に向けて、具体的な取り組み方を5つのステップに分けて解説した、「SDGコンパス」という行動指針があります。本記事では、SDGコンパスの5つのステップについて、できるだけ簡潔に解説していきます。
今こそ企業はSDGsに取り組むべき
SDGsといえば、国や政府が先導して取り組む国際的な未来への目標です。しかしその取り組み自体は、国だけでなく企業や個人までが我が身のことと捉えることが大切で、特に経済活動を担う企業が積極的に取り組むことでSDGsのゴールが近づき、それは巡り巡って企業自体の価値を高めることにも通じます。
地域社会への貢献を通してSDGs実現へ取り組むことは、単に地球の未来に優しい企業を目指すだけでなく、社会的に意義のある活動に貢献する企業としてのブランド価値を向上させることにも繋がります。そこからさらに新規事業の創出を始め、人材採用や新規顧客の獲得などさまざまな付加価値を生み出すでしょう。
SDGコンパス(SDGsの企業行動指針)
しかし、企業のSDGsへの取り組みは一見敷居の高いものに見えるかもしれません。こうした問題を解決するために、特に企業がSDGsへ取り組むための方法を5ステップに分けて解説した、SDGコンパス(SDGsの企業行動指針)という手引書が作成されました。
30ページからなるこの手引書(日本語版)は、国際的なNGOであるGRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)、国連グローバル・コンパクト、国際企業で構成されるWBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)の3団体が共同で2016年に制作。日本向けにはGCNJ(グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン)とIGES(公益財団法人地球環境戦略研究機関)が共同で翻訳し、現在もWeb上で無料ダウンロードできるようになっています。
SDGコンパスの示す5ステップ
いかにして企業がSDGsに最大限貢献でき、経営戦略と整合させることができるのか。この問題に企業が取り組むための手順は、次の5つのステップにまとめられます。
- SDGsを理解する
- 優先課題を決定する
- 目標を設定する
- 経営へ統合する
- 報告とコミュニケーションを行う
順に解説します。
ステップ1:SDGsを理解する
まずはSDGsを理解するということが最初のステップとなります。
SDGsの理念を正しく理解し、自社がそこに取り込むことにどのような意味があるのか、具体的行動を起こす前に学ぶことが重要なステップです。17の目標と169のターゲットを持つSDGsを企業の経営戦略へ落とし込むためには、経営者だけでなく社員全員が正しくSDGsを理解しなければ先へは進めません。この時、先行してSDGsに取り組んでいる企業の事例を参考にする場合もあるかもしれません。また、セミナーへの参加や講師を招いて研修を行うなどのアクションも良いでしょう。
しかし、その場合でもSDGsを表面的にしか理解せず、上っ面だけの他社の模倣となってしまうことは失敗の元となります。まずはSDGsの掲げる理念や目標を理解しつつ、自社の経営へと落とし込むためのアイデアなどを書きとめ、そのプロセスを記録しておくことが次のステップへと繋がるのです。なお、環境省では日本企業に向けた活用ガイドを発行し、SDGsに取り組む企業の事例集などもWeb上で公開しています。
>>環境省ホームページ(総合環境政策/持続可能な開発目標(SDGs)の推進)
ステップ2:優先課題を決定する
続いてのステップでは、各企業ごとの課題に優先順位を決定していくことが推奨されます。
SDGsに設定された17の目標と169のターゲットは、そのすべてが1企業で対処できる問題ではありません。それらの課題の中から、自社に関連性のある目標をピックアップ。優先順位が高いと判断される項目から、順番に取り組んでいく下地を作ります。
そのためには、ステップ1で理解したSDGsの理念を元に、社員各人がアイデアを出し合うための話し合い(ディスカッション)の場を設けるのも良いでしょう。この際、SDGコンパスでは、バリューチェーンによるSDGsのマッピングを行うことを推奨しています。
バリューチェーン全体で業界や社会と、自社との関係を俯瞰してみることで、自社の活動が負の影響を与えている課題に気付けるはずです。この時、場合によっては外部のステークホルダーと協働し課題抽出を図る施策も有効でしょう。
ステップ3:目標を設定する
ステップ2で特定された優先課題を土台としてSDGsの目標設定を行います。
この時、KPI(主要業績評価指標)を定めたり、期限を定めたりするなど、具体的な数値を入れた目標設定とすることで、より具体的な目標となり取り組み自体の道筋も明確となるでしょう。ただし、この目標設定をする際「自社の営業戦略上どのような価値が得られるか」という視点は、企業経営では欠かすことのできないものですが、SDGsへの取り組みは短期的には収益としてマイナス効果となることは往々にしてありえます。
それでもSDGsへの貢献が自社や社会に対して浸透していけば、中長期的に見ればそれ自体が企業価値の向上に繋がり、やがては収益へと返ってくるはずです。目先の収益だけにとらわれた目標設定ではなく、より広範囲に視野を向けて考えることが求められるでしょう。そのためにもSDGコンパスでは、インサイド・アウト・アプローチではなく、アウトサイド・イン・アプローチを取ることが推奨されています。
アウトサイド・イン・アプローチにより意欲的な目標設定を行えば、目標そのものが宣伝効果や同業他社、ひいては社会へ対して働きかける効果が見込まれ、より社会的意義のある目標となるでしょう。
ステップ4:経営へ統合する
ステップ3の結果、自社の戦略的優先課題として見いだされた具体的なKPIや目標を達成するためには、これらを「持続可能な目標」として経営に統合させなければなりません。それには、経営陣だけではなく従業員1人ひとりが目標に対して取り組んでいくことが求められます。
SDGsに取り組む意義やそこから生まれる価値を正確に従業員へと伝え、理解を求めることが目標達成への第1歩となり、それには企業としての新たな風土・文化・戦略・制度づくりなども必要となるでしょう。
当然のことながら各部署の連携は不可欠です。しかし、企業単独ではなかなか有効な対処法を選択することができない場合があります。実際、既にSDGsに取り組む企業へのアンケートにおいて「企業単独で効果的な対処を取ることはできない」という報告があり、SDGコンパスでも3つのタイプのパートナーシップに取り組むことを推奨しています。
- バリューチェーン・パートナーシップ :バリューチェーン内の企業が相互補完的な技能・技術・資源を組み合わせて市場に新しいソリューションを提供。
- セクター別イニシアチブ :業界全体の基準・慣行の引き上げと共通の課題克服に向けた取組みにおいて、業界のリーダーが協力。
- 多様なステークホルダーによるパートナーシップ :行政、民間企業および市民社会組織が力を合わせて複合的な課題に対処。
ステップ5:報告とコミュニケーションを行う
SDGコンパスの最後のステップは、SDGsに対する取り組みを外部に対して情報開示し、ステークホルダーのニーズに合わせSDGsの進捗状況を定期的に報告・コミュニケーションを行うことです。
ステークホルダーが企業に対して情報開示を求める声は年々大きくなり、それに応えて多くの上場企業では統合報告書を作成し、SDGsに関する実績や目標達成度合いを公表しています。これは上場企業に限ったことではありません。非上場の中小企業も、金融機関をはじめとする取引先や地域社会に対して同様の報告を行うことは、企業にとってプラスの効果をもたらすことができます。
まとめ
今回は企業がSDGsに取り組む際の行動指針について記された、SDGコンパスの5つのステップについて解説してまりました。これらのステップは決して1から5へ流れる一方的・直線的なものではなく、施策を進める中で立ち止まり、振り返り、再検討を重ねていくことも重要なポイントです。SDGsという大きな問題に立ち向かうためには、試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ改善していくことが必要です。1年間という短期的な視点ではなく、3〜5年間かけて企業価値をじっくり高めることができます。この記事、およびSDGコンパスの資料などをよく読み込み、自社の経営理念や事業内容に合った取り組むべき課題をどうか的確に見つけ出してください。