SDGsと2030年アジェンダ|持続可能な未来へのロードマップ
2030年アジェンダとは、2015年9月にニューヨークの国連本部で開催された「国連持続可能な開発サミット」で全会一致で採択された、持続可能な開発目標(SDGs)の基本となる文章を指します。このアジェンダは3年という時間をかけて作成され、SDGsの17の目標と169のターゲット、SDGsの背景となる目指すべき世界像やテーマごとの考え方、SDGsの実施手段などが記載されています。
2030年アジェンダの正式名称は「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」です。英語の原文はPDF35枚に、日本語訳されたものは37枚にまとめられ、無料で公開されています。
我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(日本語)▼
Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development(英語)▼
2030年アジェンダは、前文、宣言、持続可能な開発目標(SDGs:17ゴール、169ターゲット)、実施手段、フォローアップ・レビューに分かれて構成されています。
SDGsの前身であるMDGsについて
2030年アジェンダの中心に置かれているSDGsですが、その前身となるMDGs(ミレニアム開発目標)について解説します。2000年に国連のサミットで採択され、8つの目標、21のターゲット、60の指標で構成されています。
- 極度の貧困と飢餓の撲滅
- 普遍的な初等教育の達成
- ジェンダー平等の推進と女性の地位向上
- 乳幼児死亡率の削減
- 妊産婦の健康状態の改善
- HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病のまん延防止
- 環境の持続可能性を確保
- 開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
発展途上国向けの開発目標、先進国による途上国の支援という内容が中心となっており、国連の報告書に「MDGアジェンダは、これまでの歴史で最も成功した貧困撲滅のための取り組みであった」と記載されています。
しかし、前進をもたらした一方で、MDGsの「恩恵」を受けた人々と、そこから取り残された人々との格差をもたらしたことも事実としてあります。2015年から2030年までの新たな15年で達成すべき目標であるSDGsは「誰一人取り残さない」ということを誓っており、先進国・途上国関係なく、そして主人公が地球上の全人類となっている点がMDGsとの大きな違いになります。
前文
「このアジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画である」
という一文で始まり、5つのPに分けて説明されています。
人間(People)
我々は、あらゆる形態及び側面において貧困と飢餓に終止符を打ち、すべての人間が尊厳と平等の下に、そして健康な環境の下に、その持てる潜在能力を発揮することができることを確保することを決意する。
地球(Planet)
我々は、地球が現在及び将来の世代の需要を支えることができるように、持続可能な消費及び生産、天然資源の持続可能な管理並びに気候変動に関する緊急の行動をとることを含めて、地球を破壊から守ることを決意する。
繁栄(Prosperity)
我々は、すべての人間が豊かで満たされた生活を享受することができること、また、経済的、社会的及び技術的な進歩が自然との調和のうちに生じることを確保することを決意する。
平和(Peace)
我々は、恐怖及び暴力から自由であり、平和的、公正かつ包摂的な社会を育んでいくことを決意する。平和なくしては持続可能な開発はあり得ず、持続可能な開発なくして平和もあり得ない。
パートナーシップ(Partnership)
我々は、強化された地球規模の連帯の精神に基づき、最も貧しく最も脆弱な人々の必要に特別の焦点をあて、全ての国、全てのステークホルダー及び全ての人の参加を得て、再活性化された「持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップ」を通じてこのアジェンダを実施するに必要とされる手段を動員することを決意する。
宣言
この項目では、採択された国連持続可能な開発サミットで決まったことについてまとめられており、大きく8つに分けられています。
- 導入部
- 我々のビジョン
- 我々の共有する原則と約束
- 今日の世界
- 新アジェンダ
- 実施手段
- フォローアップとレビュー
- 我々の世界を変える行動の呼びかけ
上記の順で説明されており、目指している未来の姿や現在直面している課題、そしてそれらに対する解決策や手段、ステークホルダーの役割などを理解することができます。
持続可能な開発目標(SDGs)とターゲット
次の項目では、SDGsの17の目標と169のターゲットの詳細について書かれています。
17の目標の詳細は以下の通りです。
目標1(貧困) | あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。 |
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目標2(飢餓) | 飢餓を終わらせ,食料安全保障及び栄養改善を実現し,持続可能な農業を促進する。 |
目標3(保健) | あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し,福祉を促進する。 |
目標4(教育) | すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し,生涯学習の機会を促進する。 |
目標5(ジェンダー) | ジェンダー平等を達成し,すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う。 |
目標6(水・衛生) | すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。 |
目標7(エネルギー) | すべての人々の,安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する |
目標8(経済成長と雇用) | 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある 人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する。 |
目標9(インフラ,産業化, イノベーション) | 強靱(レジリエント)なインフラ構築,包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベー ションの推進を図る。 |
目標10(不平等) | 各国内及び各国間の不平等を是正する。 |
目標11(持続可能な都市) | 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する。 |
目標12(持続可能な生産と 消費) | 持続可能な生産消費形態を確保する。 |
目標13(気候変動) | 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。 |
目標14(海洋資源) | 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し,持続可能な形で利用する。 |
目標15(陸上資源) | 陸域生態系の保護,回復,持続可能な利用の推進,持続可能な森林の経営,砂漠化への対処,ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。 |
目標16(平和) | 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し,すべての人々に司法へのアクセスを 提供し,あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する。 |
目標17(実施手段) | 持続可能な開発のための実施手段を強化し,グローバル・パートナーシップを活性化する。 |
実施手段とグローバル・パートナーシップ
2030アジェンダの「実施手段とグローバル・パートナーシップ」は、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための具体的な行動と協力の枠組みを示しています。これらは、各国政府、民間セクター、市民社会、国際機関などが連携し、持続可能な開発を実現するために必要な資源や技術を動員することを求めています。
国内および国際的な資金動員の重要性
まず、国内および国際的な資金動員がSDGs達成の鍵として強調されています。特に、開発途上国では資金不足が課題となっており、公的資金の提供(ODA)や民間投資の促進が重要視されています。これにより、開発途上国が持続可能な開発を推進するための資金を確保できるよう支援します。さらに、租税制度の強化や脱税の防止、資本の不正流出の抑制も必要とされています。
技術革新と技術移転の役割
技術革新と技術移転も重要な実施手段です。特に、クリーン技術や情報通信技術(ICT)の普及が推奨されており、これにより持続可能な経済成長と環境保護が可能になります。開発途上国に対しては、技術移転や技術支援を行うことで技術的な格差を縮小し、SDGs達成に向けた取り組みを後押しします。
国際貿易と市場アクセスの強化
また、持続可能な開発の推進において、国際貿易が果たす役割も大きいとされています。特に、開発途上国がグローバル市場に参加しやすくなるよう、貿易体制の強化と市場アクセスの改善が求められています。これにより、経済成長が促進され、貧困削減にも貢献できると考えられています。
グローバル・パートナーシップの重要性
グローバル・パートナーシップの強化は、2030アジェンダ成功のために不可欠です。このパートナーシップは、すべての国とステークホルダーが平等に参加し、相互に協力し合うことを基盤としています。持続可能な開発のための資金、技術、知識の共有が重要であり、それによってSDGsの目標が実現されます。
ODAの拡充と国際協力の推進
2030アジェンダは、公式開発援助(ODA)の拡充と効果的な活用を強調し、特に後発開発途上国や小島嶼開発途上国(SIDS)に対する支援の強化が必要とされています。加えて、債務の持続可能性を確保し、開発資金を効果的に利用するための国際協力も推進されています。
進捗フォローアップのメカニズム
これらの実施手段とグローバル・パートナーシップの枠組みは、SDGsの進捗をフォローアップし、各国の取り組みを定期的に評価するための重要なメカニズムとして機能します。これにより、2030年までに持続可能な開発を達成するためのグローバルな努力が強化されることが期待されているのです。
フォローアップ・レビュー
2030アジェンダの「フォローアップとレビュー」は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた進捗を評価し、改善策を講じるための枠組みを提供しています。このプロセスは、全ての国やステークホルダーが参加し、透明性、公平性、責任を重視して行われます。
国内レビュー:各国の自主的な進捗評価
まず、各国が自主的に行う国内レビューがこの枠組みの中心となります。各国は、SDGsの達成状況を定期的に評価し、成果や課題を報告します。この国内レビューは、政府だけでなく、民間セクター、学術機関、市民社会など幅広い関係者の参加を得て実施されるべきです。これにより、政策や戦略の効果を高め、必要に応じて調整を行うことができます。また、レビューの結果は透明性を確保するために公表されることが求められています。
地域レビュー:地域レベルでの協力と学び合い
地域レベルでのレビューも重要です。地域機関や多国間プラットフォームを活用し、各国の進捗を共有し、相互に学び合うことで、地域全体のSDGs達成に向けた取り組みが強化されます。特に、地域特有の課題や優先事項に対応するための協力が求められます。
国際レビュー:ハイレベル政治フォーラム(HLPF)の役割
国際レベルでは、ハイレベル政治フォーラム(HLPF)が主要な役割を果たします。HLPFは、SDGsの進捗をグローバルにレビューする場として、毎年開催されます。このフォーラムでは、各国の自主的な国別レビュー(VNRs)が発表され、国際社会全体で進捗状況が議論されます。HLPFを通じて、成功事例や直面する課題が共有され、各国が学び合い、政策を改善するための機会が提供されます。
データ収集と分析の重要性
フォローアップとレビューのプロセスでは、質の高いデータの収集と分析が不可欠です。各国は、進捗を正確に測定するためのデータ基盤を整備し、データの透明性と信頼性を確保する必要があります。特に、開発途上国においては、データ収集能力の強化が重要な課題となっています。国際社会は、これらの国々を支援し、データ収集に必要な技術や資源を提供することが求められています。
政策改善と新たな目標設定
また、レビューの結果に基づいて、政策の改善や新たな目標設定が行われます。これにより、SDGsの達成に向けた取り組みが一層強化されます。フォローアップとレビューの枠組みは、SDGsの達成に向けた全体的な進捗を監視し、各国の努力を支援するための重要な手段です。このプロセスを通じて、国際社会は持続可能な開発の実現に向けて一丸となって取り組み、2030年までに目標を達成することを目指しています。
最後に
いかがでしたでしょうか?
SDGsという言葉は多くの人が知っていると思います。しかし、SDGsが採択された背景や内容まで理解している方はまだあまり多くありません。2030年アジェンダを通じて理解をさらに深めてみるのはいかがでしょうか。