日本製鉄|カーボンニュートラルに向けて一部高炉を電炉へ転換
東京に本社を置く日本製鉄株式会社(以下、日本製鉄)は、高級鋼の量産拠点である九州製鉄所八幡地区及び瀬戸内製鉄所広畑地区の高炉の製鉄工程を電炉へと転換する本格的な検討の開始を発表しました。二酸化炭素の排出量削減のため、製造プロセスを高炉から電炉へ転換し、日本製鉄が掲げているカーボンニュートラルの実現を目指します。
日本の製鉄は、これまで高炉が主流でした。高炉法は、鉄鉱石から酸素を除去するために鉄鉱石と合わせコークス(還元剤、燃料)を投入して燃焼させます。コークスは、燃焼すると大量の一酸化炭素と二酸化炭素を発生します。一方の電炉(電気炉)は、原料となる鉄スクラップをアーク放電によって発生する放電熱によって融解し、酸素や窒素などの不純物を除いて製鋼する方法です。電炉は、高炉と比べて、製鋼工程がないことや生産量当たりに発生する二酸化炭素の量が少ないため、環境負荷を軽減することができます。しかし、電炉はエネルギー効率が低く、不純物の除去が難しいというデメリットもあります。日本製鉄は、水素還元製鉄の研究開発を積極的に行っていますが、まだ技術が確立されておらず、実現には時間がかかる見込みです。そのため、二酸化炭素排出量を削減する短中期的な戦略として、現時点で実現可能なことを実施します。
鉄は、アルミニウムやCFRP(炭素繊維強化プラスチック)と比較し、製造時の生産量に対する二酸化炭素排出量は少なく、リサイクルにも優れているためライフサイクル全体での排出量も少ないと言われています。しかし、用途の幅が広く大量に生産されるため、鉄鋼産業全体から排出される二酸化炭素の総量は多いです。環境省が2020年に発表したデータによると、鉄鋼産業は日本全体で排出される二酸化炭素のうち15%を占めます。そのうち日本製鉄からの排出は9%を占めています。
日本製鉄は、2021年3月に発表した中長期経営計画で、気候変動問題への取り組みを経営の最重要課題と位置付けています。そして、独自の取り組みとして「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を公表しています。日本製鉄は、「社会全体のCO2排出量削減に寄与する高機能鋼材とソリューションの提供」「鉄鋼製造プロセスの脱炭素化によるカーボンニュートラルスチールの提供」という2つの価値を提供することで、カーボンニュートラルの実現を目指しています。
そのためには、①高炉水素還元、②大型電炉での高級鋼製造、③100%水素直接還元プロセスという3つの技術の開発・実用化が必要です。日本製鉄は、中間目標である2030年までに二酸化炭素排出量を2013年比で30%削減するという目標達成のため、③に該当する電炉プロセスへの早期の転換を検討すると発表しました。
詳しくは、同社ニュースリリースをご覧ください。
高炉プロセスから電炉プロセスへの転換に向けた本格検討を開始