ISAP2021レポート|持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム
今回は昨年の11月にパシフィコ横浜で開催された「ISAP2021 持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム」に参加したレポートを少し編集したものを記事化させていただきます。
イベントの総括
全体を通じて「生物多様性」というトピックにスポットライトが当てられていました。現在日本では「気候変動」や「脱炭素」「人権」に関する話題が多いように感じますが、昨年イギリスのグラスゴーで開催されたCOP26でも森林破壊を2030年までに終わらせるという宣言が出るなど、「生物多様性」に対する関心が高まっていることを感じました。
また昨年6月には、今多くの企業が賛同しようとしている「TCFD」に続く「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォー ス)」が正式に発足しました。
2022年は気候変動や人権に関するトピックと一緒に生物多様性についても目標を策定し、世界全体で話し合われて行くことが予想されます。
注目が高まる「生物多様性」
このセミナーでは、SDGsは「気候変動」「人権」「生物多様性」の3つのトピックに分けることができると言われていました。そして世界では、企業が「気候変動」に取り組んでいることは当たり前になりつつあり、日本でもESG投資などに対する関心からサプライチェーンの人権問題や生物多様性に対して取り組むべきだと話す経営者が増えているそうです。
COP26でも話題になるほど注目されているわけですが、2010年に愛知県名古屋市で開催されたCOP10で設定された生物多様性条約「愛知目標」を達成できなかったということをきちんと胸に刻み、これから2030年までの10年間でどう達成するのか道筋を立てる必要があります。今後は監視し、報告し、レビューを行うようなメカニズムが当たり前になると話されていました。
この話は上場している大企業だけが取り組むものではありません。サプライチェーン全体に関わってくることなので、取引のある中小企業も関係してくるでしょう。30by30という陸の30%、海の30%を保全しようという動きがありますが、それも生物多様性に貢献していることに評価される予定です。よって、企業の所有林や緑化活動もその対象となるため、中小企業でも取り組むことができます。
ここ数年で、気候変動の問題や地球環境を守ることの大切さを知った方は多くいます。しかし、生物多様性についてはまだ知らない方が多いので、企業や地方自治体はこれらが案外身近なものに結びついていることなどを広げていく必要があるでしょう。
グローバルな視点でローカルに落とし込む
SDGsを達成するための解決策を考える際、視野を広く持つ必要があります。例えば、自然エネルギーを発電するために太陽光や風力発電を建設しましょう、という意見を耳にすることがあります。しかし、太陽光発電するための土地を開発することで失われる生物多様性があり、風力発電によって傷付く動物などがいることを忘れてはいけません。動物たちだけでなく、そこで生活を営んでいる人がいること、建設することで地域の文化や景観が失われてしまわないか、ということまで広く視野を持つことが大切になります。
SDGsの主人公は全人類であり、規模の大きいグローバルな問題ではありますが、最終的にはその土地・地域に合わせてローカルに落とし込まなければいけません。地域に住んでいるのは私たち一人一人だからこそ、話し合いを重ねていく必要があるでしょう。
この10年ですべきこと、そしてポストSDGs
これからの10年は、SDGsを達成するためにさまざまな課題に直面することが考えられます。先ほど、SDGsは「気候変動」「人権」「生物多様性」の3つのトピックに分けることができるとお伝えしましたが、私たち人間が勝手に課題を細分化し、バラバラにしてしまっているのではないかという意見もあがりました。
つまり、根っこの根本的な部分では、全ての課題はお互いに作用し関係しあっているのではないか、ということです。よって、企業も「気候変動」だけ取り組めば良いのではなく、全ての課題に即して包括的に取り組んでいく必要があるでしょう。
そして、2030年に目標が達成された後はどうなるのかという問いに対する答えは「空気」でした。SDGsの目標の中に、大気汚染の問題などは含まれていません。しかし、空気は国境に関係なく移動し、大気汚染はさまざまな社会問題や健康被害にも繋がるため、より議論を深めていく必要があると話されていました。
最後に
いかがでしたでしょうか?
私たちは、日々の買い物ひとつとっても投票活動を行っています。例えば、自家用車で移動するのか、自転車で移動するのかなど。私たち一人一人の行動が変わることで、より大きなムーブメントとしてインパクトを与えることができると思うので、私自身ももっと身近に生物多様性について考えていこうと思います。