IASB、財務諸表における気候関連情報開示の改善策を検討
IASBは、企業が財務諸表において、気候関連リスクを開示する際に求める要項を変更することを検討するため、新しいプロジェクトを開始すると発表しました。
IASB(The International Accounting Standards Board)とは、IFRS財団に属する独立の会計基準設定機関です。同審議会は、基準の開発や改訂の検討項目の設定やプロジェクト計画の策定とその実行について、全面的な裁量権を有しています。
今回発表されたプロジェクトは、5年ごとに開催される同審議会の活動や作業計画に関する公開協議である「アジェンダ協議」にて、財務諸表における気候関連リスクの開示を強化する意見が寄せられたためです。具体的には、以下のような声が寄せられています。
- 気候関連リスクの影響を受けると予想される企業が、なぜ財務諸表にその影響に関する情報を提供しないのか。
- ネットゼロを約束した企業が、なぜその約束の結果として負債を認識したり、資産価値を減損したりしないのか。
- 気候変動は長期的なリスクとして財務諸表に適切に反映されない可能性がある。
現在設定されている開示基準は、気候関連事項について明確に言及されていません。しかし、投資家は、気候関連のリスクが資産及び負債の帳簿価格に与える影響についてより詳しい情報を求めています。
IASB議長であるAndreas Barckow氏は、「同プロジェクトは、調査を通じて財務諸表における気候関連リスクの報告に関する利害関係者の懸念の性質や原因を探ることから始める」と発表しています。また、現在ISBB(国際サステナビリティ基準審議会)が作成している2つの報告基準を考慮し、IASBとISBBが求める情報を相互に補完するものになる可能性があります。
さらにIASBは、ISSBの報告基準を基にリスクだけでなく機会も対象とするか、気候以外の持続可能性に関連するリスクや機会も対象とするか、ISSBの報告基準の適用によるシナリオ分析が資産・負債の測定にどのように反映されるかといった懸念点も検討する可能性があると声明を出しています。
参照:
IFRS – Connectivity in practice: the IASB’s new project on Climate-related Risks in the Financial Statements
IASBとは(基礎知識) | 日本公認会計士協会