森林破壊の追跡義務や新たな炭素税、EUで進む
EUでは、森林破壊の追跡義務化や脱炭素社会に向けた法整備が進んでいます。
2023年4月20日、EU議会は、企業に対して森林破壊の追跡を義務化する法律「欧州森林破壊規制(EUDR)」を可決しました。同法律により、牛、カカオ、コーヒー、パーム油、木材、ゴム、大豆を扱う企業は、自社が生産もしくは調達する原材料の生産現場で、森林破壊を引き起こしていないことを確認し証明する。もしくは、森林破壊が進んでいる地域からの原材料ではないことを証明することが求められます。これらを証明できない場合は、重い罰金を課せられます。また、原材料の原産地を証明する際、適切な手順で踏んでいることを示す必要があり、デューデリジェンス報告書を提出することも求められています。さらに、人権や先住民への影響も考慮し、各原産地国や地域の法令・規制を遵守する必要もあります。
農業の拡大は、森林破壊の最大要因の一つです。FAO(国際連合食糧農業機関)によると、1990年から2020年の間に、約4億2000万ヘクタールの森林が農業のために伐採されています。
Fernによる世論調査では、80%以上のヨーロッパ人が企業は森林破壊を促進する食品や商品の販売を禁止すべきだと考えているという調査結果が出ています。
気候擁護団体Mighty EarthのシニアディレクターであるAlex Wijeratna氏は、「この法律が可決されたことは、森林と共に生活している先住民や野生動物にとって素晴らしいニュースだ。また、政府や企業に森林破壊による食事はしたくないと伝えてきた消費者にとって嬉しいことだ」と述べています。
また、2023年4月25日には、EU理事会が気候変動目標を達成するための新たな法律を採択しました。この法律には、輸入品に対する炭素税の制定やEU排出量取引制度に関する新たな情報が含まれています。同法律は、EU理事会のロードマップである「Fit for 55」を実現するための取り組みに貢献するものです。「Fit for 55」は、2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で55%削減し、2050年までにクライメートニュートラル(気候中立)を達成することを目指しています。EUの炭素国境調整メカニズムであるCBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism)も新設されます。CBAMは、EU製品の炭素価格とEU域外の他国で生産された製品の炭素価格が等しくなるように調整します。EU域外からEU域内にCBAMに該当する製品や商品を輸入する企業は、CBAM証明書の購入が必要となります。