持続可能な食品革新とリサイクルの未来|オランダと日本の企業事例
貧困問題や食品ロス、気候変動、海洋汚染など、世界には多くの問題が山積しています。そこで2015年に誕生したのがSDGs(持続可能な開発目標)です。SDGsは、2030年までに達成することを目指す世界共通のゴールです。
これまで、企業が環境や社会に対して配慮すると、利益を追求することはできないと考えられてきました。しかし、今ではビジネスを通じて、SDGsにも関連する社会や環境問題の解決に向けて動き出している企業が増えています。
今回は持続可能な「食」や、廃棄物の再利用などについて、革新的なアイデアで事業に取り組んでいる企業をご紹介します。
日本の動き
日本では、自治体や企業が中心となり活動を行っています。自治体では、食品ロスにまつわるサプライチェーンの効率化や、リサイクル率の目標を掲げるなど、適切に目標を設定し具体的な活動に落とし込んで実施をしています。
企業については、生産と再利用の循環を作ることや、環境に負荷のない素材を選定するなど、無駄を省き永久的に持続できるものづくりを推進しています。
目標12においては、消費者となる私たちがどう行動するかも非常に重要です。ゴミを減らす、環境に配慮した商品を購入するなど、意識を持つことが重要です。
食料・製品の持続可能性を追求する企業3選
持続可能な社会を作るためには、イノベーションと革新的なアイデアが重要になります。これからご紹介する企業は、その両方を上手く掛け合わせた事業を行っています。
サプライチェーンの短縮と環境に負荷をかけず効率的な食品の生産を成し遂げたコールドスミス社、虫に着目し持続可能な食品の生産を行っているANTCICADA、被災地のビニールシートを再利用し商品を手がけるNEXUSVII.。これら3社のアイデアと技術力は目を見張るものがあります。
ゴールドスミス
2015年よりオランダで「Floating Farm(水上農場)」プロジェクトをスタートし、2020年に世界初の水上牧場「Floating Farm Dairy」を作り上げたゴールドスミス社。
ロッテルダムの港に浮かぶ、酪農場を運営しています。酪農場は埋め立て地を必要とせず、水上にある3階建ての建物内で牛の飼育から製品の生産までを行っています。3階に牛舎、2階に牛乳やヨーグルトを作る処理場、1階に材料や製品を作るために必要な設備を置いています。
牛舎では、肥料洗浄ロボットと搾乳ロボットによる効率的な飼育が行われています。また、1階には雨や排水を再利用するシステムを置き、資源を無駄遣いしない仕組みづくりも行っています。
「Floating Farm(水上農場)」は都市に近い港に位置しており、このことはサプライチェーンの短縮化に繋がっています。都市の廃棄物を牛の飼料に再利用し、食品ロスを防ぎます。また酪農場の壁は透明で外から見ることができるようになっており、生産者と消費者を身近に結びつける役割も担っています。 イノベーションを駆使し、水上という今までになかった場所で酪農をすることで、無駄を最小限にし人々の生活を豊かにする取り組みに貢献しています。
ANTCICADA
東京の日本橋で、昆虫を使った食を提供するANTCICADA。コース料理とコオロギラーメンの二種類のメニューを提供しています。
日本においては食品がすぐ手に入り、食料が足りないと実感することは少ないかも知れません。しかし日本の食糧自給率は非常に低く、世界の人口増加に伴って肉などのタンパク源が手に入りにくい未来が予想されています。また、洪水や災害により、食物がうまく育たななかった場合のリスクヘッジも必要です。
ANTCICADAでは今までになかった「昆虫食」という切り口で、食料に対しての新たな価値観を提供しています。コオロギで出汁をとったラーメンや、新しい食材を活用したコース料理は、丁寧に作られどれも美しく仕上げられています。日本では昆虫を食べることに馴染みがないですが、ポジティブに食品としての昆虫の可能性を追求しています。
NEXUSVII.
千葉県発祥のNEXUSVII.は“Multiple Maniax & Technix”をコンセプトに2001年に設立し、MEDICOM TOYやPORTERなどとクロスオーバーするなど、話題となっています。
NEXUSVII.は、昨年の台風15号で被災した千葉の復興プロジェクトを行っています。被災地で使われたビニールシートを再利用したバックを作り、売上金の一部を被災地支援金として送っています。ビニールシートを再利用したバックは鮮やかな青で、製品によって異なった色合いになっていることも魅力になっています。
このプロジェクトは「THE 15」PROJECTとして、NEXUSVII.のオンラインストア上で行われています。ビニールシートを再利用したバック以外にも、「THE15」が付いた商品を購入すると、売り上げの一部が被災地に還元される仕組みになっています。
本来廃棄されるはずだったビニールシートを製品に再利用し、売り上げを支援金にするこの取り組みは、無駄をなくし消費者の意識を上げ、被災地の復興にも繋がる取り組みといえます。
まとめ
環境に対する取り組みは、人々に広がっていくことが必要です。今回ご紹介した企業では、インパクトのある取り組みを見えやすい形で提示し、人々の環境問題に対する意識を上げる役割も果たしています。
また、取り組む中で、別の面で無駄が出ていないかを考えることも重要です。廃棄物を再利用する、環境負荷の少ない素材や設備を使うことがこれにつながります。今回ご紹介した3社は、どれも可能な限り無駄を省き環境に配慮した取り組みをしていました。
私たちは周りがしている取り組みを見て、自分たちが次に何をするか考えることが必要です。3社の取り組みに学び、自分たちができる行動に落とし込んで実行していかなければなりません。