ESG評価と環境への影響の数値化|欧州企業の取り組み事例を紹介
地球温暖化の対策として、業界問わず、温室効果ガス削減への取り組みが急務となっています。ESGに関する非財務情報の開示を行う企業も増加しています。しかし、それだけでなく、どれだけ温室効果ガスを削減し、水資源を節約し、植林活動を行なっているのかを可視化することも重要です。本記事では、温室効果ガス削減に向けて取り組むことはもちろん、私たち消費者が理解できるよう可視化することにも力を入れている海外企業を3社ご紹介します。
気候変動の具体的な対策|日本の動き
日本は2021年4月に、温室効果ガスを2013年比で46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けることを表明しました。そのため日本では、再生可能エネルギーによる発電や、資源の節約につながる高機能素材・省エネテクノロジーの研究・開発に力を入れています。
私たちの生活においては、エネルギー資源を大切に使うことや、省エネ製品を意識して選ぶことが温室効果ガス削減への一歩になります。
情報を数値化し一緒に取り組む
温室効果ガス削減やサステナブルな資源確保への取り組みは、目標を掲げて推進していくだけでは十分とは言えません。期間ごとに達成させる数値を明確にし、最終期限までに確実に目標を達成できるように動かなければなりません。そのためには、実行する中で都度分かりやすく成果を提示することが必要です。
これからご紹介する欧州企業は、自分たちの取り組みを数値化し、環境に対する配慮への共感を求めています。具体例を見ていきましょう。
VATTER
オーガニックコットンを使用した下着メーカーです。コットン以外の材料においても、自然由来のものや、環境負荷の少ないものを積極的に採用しています。
VATTERはツリーネーションという非営利団体と協力し、マダガスカルに植林をするプロジェクトを行っています。マダガスカルはさまざまな固有種が住む生態系豊かな島ですが、近年森林破壊が大きな問題となっています。
VETTERで商品を購入すると、購入者の名前で木が発注され、マダガスカルに送られます。その後植林が行われるにあたり、購入者にツリーネーションから電子メールが届く仕組みになっています。商品を購入することが植林につながり、その情報が共有されることによって、購入者に環境保護の当事者意識が芽生えます。
また、期間ごとに何本の木が植えられたかをホームページで公表しています。植林によって再生された森林面積や、削減されたCO2排出量も併せてデータで公開されています。目に見える形で植林の活動を提示し、人々に環境保護への意識を持ってもらえるよう働きかけています。
Triarchy
環境に負荷をかけない製品作りを行っているアパレルブランドです。Triarchyのオンラインストアでは、温室効果ガス削減・エネルギー節約・節水・農薬使用の削減・植林の5つの項目において、企業がどれだけ貢献できたかが数値化されています。
また、企業全体の達成率のみならず、商品ごとに同じ項目を設け、環境への負荷回避率を明記しています。一方でポジティブな数値だけでなく、どれだけCO2を排出しているかと言うネガティブな数値も提示しています。
Triarchyでは、排出したCO2を相殺するためのプロジェクトも併せて行っています。太陽光発電プロジェクトにおいては、インドにソーラーパネルを設置し、持続可能なエネルギーの発電に取り組んでいます。
同社がトルコに構える風力発電プロジェクトでは、風力発電所に資金提供をし、火力発電を再生可能エネルギーへ置き換えることを推進しています。飲料水のソーシャルプロジェクトでは、他社と協力して革新的なろ過システムで生成された飲料水をカンボジア市民へ提供。フィルターに水を通し飲料水をつくるこの方法は、水を沸騰させる必要がなく、火力が使われないためCO2を削減することができます。
nu-in
持続可能な生産・活動を目指すファッションブランドです。環境への負荷が少ない素材を使い、リサイクルを推進しています。
コットンやポリエステルなどの素材はリサイクルして再利用し、プラスチックゴミなどから生成された素材なども積極的に採用しています。またコットンなどの自然由来の素材は、有害な農薬を使わず、環境に負荷をかけない方法で生産されたものだけを使用するように徹底しています。
生産工場においても、エネルギーを無駄に使わない工夫をしています。ソーラーパネルを設置することや、雨水を利用するシステムなどを導入しています。また、ジーンズを作る際には、本来大量の水が消費されますが、自社開発の洗浄設備により水の使用量を最大80%削減しながら、良質の製品を作ることに成功。
同社のオンラインストアでは、商品ごとに使用された素材と環境負荷に対するインパクトが明記されています。例えば、商品がリサイクル素材100%で作られたことや、節水やCO2削減にどの程度貢献したかなどを知ることが可能。環境への配慮の有無が、商品を選ぶ基準の一つになるよう、情報を提供しています。
まとめ
持続可能な社会を築く上では、環境への配慮を数値化して人々に知らせるだけでなく、多くの人に当事者意識を持ってもらうことが大切です。今回ご紹介した企業の例では、商品ごとに環境に対するインパクトが明記されており、商品購入をきっかけに環境保全に協力する実感を得られる仕組みがありました。インパクトを数値化し、知らせ、協力する、この流れを繰り返していくことで、サスティナビリティへの理解が深まり、環境保全への輪が大きくなっていくように思います。
まずは知り、少しずつでも協力していくことが、持続可能な社会を継続していく上で非常に重要なことではないでしょうか。