太陽の動きまで計算される!ドバイの次世代都市設計事例を紹介
2100年には世界の人口が100億人を突破すると言われており、そのうち85%の人が都市部に住むと言われています。これから都市は、エネルギーや食糧生産、移動方法などを従来の形ではなく、持続可能な都市システムを構築する必要性が高まっています。
前編に引き続き、今回もドバイのサステナブルシティの持続可能な社会の仕組みの具体事例をお届けします。
太陽の動きまで計算する
サステナブルシティの住宅ゾーンでは、スタイリッシュでモダンなキューブ型デザインの一戸建て住宅が集まっています。中東は日光が非常に強いため、太陽の傾斜を計算し、日が長く当たる方角には窓を設計しないことや影が多くできるように設計されています。これらの条件をクリアしながらプライバシーの確保もきちんとされていました。
また、ドバイでは真夏の最高気温の平均が38度を超えるので、外壁には断熱効果のある素材が使用されています。そうすることでエアコンの使いすぎや電力の消費を抑えることができます。
消費するエネルギーを自然エネルギーに変えることも重要ですが、そもそも消費しないための工夫を行うことも重要だと感じました。
移動は電気バギー
サステナブルシティの市内(住宅地や公園、お買い物をするゾーン)は電気バギーで移動します。サステナブルシティ全体は以下の図のようになっており、電気バギーを使っても端から端までおよそ15分程度で移動することができます。
赤色で囲んである部分は全て駐車場になっており、住民の方は普通の自家用車も所有していますが、住宅近くの駐車場までしか乗り入れることができません。住民が所有している自家用車のうち30%近くが電気自動車だそうで、充電のためのエネルギーは駐車場の屋根に敷き詰められている太陽光パネルで発電されたものが使用されています。また、この充電器は住民だけでなく、外部の人も利用可能だそうです。
サステナブルシティ内を移動することができる電気バギーは、シェア自転車のようになっており、サステナブルシティの住民カードを持っていれば誰でも利用することができます。(色付きのみ。白色は所有されたもの)実際、サステナブルシティに移り住んでから自家用車をあまり使用しなくなったと全体の53%の人たちが回答していることも紹介されていました。
サーキュラーエコノミーの鍵は細分化されたごみの分別
ドバイでは、観光地でのごみの分別の仕組みは見かけましたが、他のエリアでは全て一緒にゴミ箱に捨てられています。しかし、サステナブルシティでは98%の人がゴミをきちんと分別をしています。これは、人々の「気持ち」ではなく、そうせざるを得ない仕組み・システム作りが上手にされているからだと感じました。
ドバイは多国籍都市であり、サステナブルシティだけでも61ヵ国の人々が集まって暮らしています。街の中に設置されたゴミ箱は、紙類・プラスチック・一般ごみ・金属類・ガラスと細かく分類されており、文字と絵柄を使って誰もが理解できるよう工夫されていました。
次に衣類についてです。日本では衣類をアパレル店舗のリサイクルボックスへ持っていく必要があり、億劫に感じてしまうことがあります。しかしサステナブルシティでは、少し離れた敷地内に回収ボックスが設置されていました。身近でアクセスが良いので、衣類をリサイクルする意識向上に繋がります。
最後に電子機器専門の回収コンテナについてです。コンテナの中に入ると、故障して電源が入らないものと、まだ使えるものなのかで分別します。投函する際は名前や電話番号を入力し、誰が投函したのかという情報がデジタルで管理されます。
ゴミの分別以外での取り組み
資源を循環させ、上手に活用されている事例も多くありました。一見普通の木に見えますが、サステナブルシティを建設した時に使用した鉄骨などがそのまま利用されています。タイヤは自転車置き場として利用されていました。タイヤはリサイクルしにくいものの一つなので、とても良い活用方法です。
また、サステナブルシティにある自転車屋では、全てリユースのものが販売されていました。本来はゴミとなってしまう自転車の部品を交換したり磨いたりすることで長く使用することができます。
子どもたちが遊ぶ公園の遊具やオフィス内で使用されている家具、レストランやカフェで使用されている椅子のほとんどが木製です。サステナブルシティで使用されているもののほとんどは、リサイクル可能なものでできています。それだけでなく、本来は廃棄されるはずだったものをアップサイクルし、資源を無駄にしない工夫も行われていました。
街全体でリサイクルできないものは上手く活用し、それ以外のものはリサイクル可能なものを使用するなど、資源の無駄を減らす取り組みをあちこちで発見することができました。
最後に
私がサステナブルシティで一番感動したことは、万人が理解できるごみの分別の仕組みです。言語や文化的背景が異なる人々が利用することを前提に、シンプルかつ利用しやすい分別・回収システムが設計・運営されています。
一方で、大きい都市システムの場合、サステナブルシティとはシステムの規模が異なるため、同様の循環・仕組みを使えないケースも考えられます。改めて「都市システム」は、エネルギー、食糧、モビリティ、生産と消費など多くの分野と関わり合いがあることを感じました。複雑なシステムを変えていくためには、俯瞰的な視野でシステム設計を組み直し、実行できるリーダーシップが何より重要だと今回の訪問で気付かされました。
今回ご紹介した事例はこちらのyoutubeでもご紹介しております。