ソーシャルビジネスの事例と持続可能な未来への取り組み|ドバイ万博
これまで環境や人権に配慮すると企業は利益を追求できないと考えられていました。しかし、私たち人類が持続的に地球に住み続けるには解決すべき課題が数多くあり、現在ではその考え方が大きく変化しています。本記事では、SDGsの目標達成や持続可能な社会の実現に向けて、世界各国で行われているソーシャルビジネスの事例が紹介されているThe Good Placeパビリオンの紹介をします。
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各国の企業の取り組み事例を紹介します。
MeeToo Education
イギリス発のメンタルヘルスをケアするアプリを開発したMeeToo Educationという企業の事例が紹介されています。
イギリスでは、2018年からエビデンス(科学的根拠)の検証を行なっており、効果があると判断されたことから全ての中学生にメンタルヘルス教育を行なっています。その背景には、自殺率や自傷行為の件数増加があります。
2018年、当時のメイ首相が打ち出したメンタルヘルス政策には、学校や職場でのメンタルヘルス教育や対策、コミュニティを通じたメンタルヘルス、オンライン・セラピーの活用などが挙げられていました。
こちらのアプリは、思春期に当たる特に10代の若者を対象としており、著名でさまざまな相談ができるようになっています。そしてこれはただの情報共有の場ではなく、メンタルケアの専門家がアプリを管理しているのが大きな特徴です。
写真の輪っかの中には、実際に使用した方の感想が紹介されていました。使用者は、使用後にとても気持ちが楽になったそうです。
WheeLog
日本の事例も紹介されていました。日本には車椅子を利用している人が200万人もいると言われていますが、街中で見かけることはほとんどありません。それはバリアフリー情報が少ないからだそうです。
WheeLogでは、バリアフリーに関する情報を共有するアプリを開発し、リアルタイムで地図が更新できるようになっています。実際に車椅子を利用している人が通ったルートや、利用しやすい施設、また行きたい場所のバリアフリー情報をリクエストすることもできます。WheeLogのおかげで積極的に外へ出ていくきっかけを掴み、本人の意欲や自立心にも良い影響を与えているそうです。
余談ですが、先日、東京都内で階段では運べない重たいキャリーケースを運んでいたのですが、地上からメトロの改札階行きのへエレベーターを探すためにマップを開いて、横断歩道を渡って、と確かに車椅子を利用していたら移動する前に色々なことを調べる必要があるなと身をもって経験しました。
Desert Control
年々砂漠化が進行し、農作物が育たなくなってしまっている一方で、世界の人口は増加しています。北欧ノルウェー発のDesert Controlという企業は、この問題に対する解決策を紹介しています。
農作物の育たない貧しい土壌(砂漠の砂)を肥沃な土地に変える「Liquid Natural Clay(LNC)」という技術を開発し、なんとこれまで7年から12年かかっていたものを7時間にまで短縮することに成功しています。スプレーして表面を加工する方法なのですが、一度行ったら3-5年は持つそうです。また必要な肥料や水の量もこれまでの半分で済み、さらに作物の収穫量は62%も増加するそうです。
Mobility for Africa
ジンバブエの事例で、農村部に住む女性をターゲットに電気三輪車を販売した事例が紹介されています。地域の人たちのニーズを満たし、アクセスしやすく長期かつ低金利で購入できるよう設計されています。さらに電気で動くので環境にも配慮されています。
これまで農村部に住む女性は、徒歩で移動していたため1日のほとんどの時間を移動が占めていました。しかし、この三輪車を使用することで農作物をより新鮮な状態で市場に出せたり、逆に持って帰ることができるようになりました。また、時間に余裕ができたことで家族や子どもと一緒に過ごす時間が増えたそうです。
MyAGRO
アフリカの農村部では銀行へ行くよりもスマホの方が簡単にアクセスできます。MyAGROでは、マリ、タンザニア、セネガルの小規模農家を支援するためのモバイルを活用した独自のプラットフォームを構築しています。農家は6ヶ月〜8ヶ月に渡って少しずつ支払いを行うと、種を植える時期に間に合うようにスマホを通じて高品質な種と肥料が購入できるサービスを提供しています。それだけでなく、その地域に合わせて収穫量を向上させるための農業技術などもシェアしています。
最後に
こちらの写真はパビリオンを出る最後の壁に書かれていた言葉で、直訳すると次のようになります。「扉の外の世界はまだ変わっていないね。より良くしていこう」万博の中で私に1番刺さっている言葉かもしれません。
企業である以上利益を追求する必要がありますが、地元の人たちのニーズに合っていなかったり、金額的に手に届かないというのは意味がありません。長期スパンで物事を見る姿勢や、現地と真摯に向き合って課題解決に取り組んでいるこれらの企業を見習って、今後より多くの社会課題を解決していける企業が増えたら良いなと感じました。