SDGs達成へのテクノロジーと水セキュリティ|スイスパビリオン
SDGsやサステナビリティという言葉を耳にする機会が増え、気候変動や海洋汚染などさまざまな社会問題に直面していると感じている人が増えてきているように思います。
ドバイ万博でも、サステナビリティというサブテーマが設けられており、今回ご紹介するスイスパビリオンでは世界で話題となっている水セキュリティに関する取り組みが紹介されていました。
また、スイスは国連の専門機関であるWIPO(世界知的所有権機関)が発表するグローバル・イノベーション・インデックス2021で最もイノベーションが起こった国として表彰されており、さまざまなイノベーションの紹介もされていました。
スイスパビリオンについて
スイスパビリオンは、見た目のインパクトが強いパビリオンの一つで、最終日まで多くの人が並んでいました。「Reflection(反射)」という名前がつけられており、2つの意味が込められています。1つ目はパビリオン自体が鏡張りになって反射していること、2つ目は美しい自然を見てサステナブルな未来を実現するために私たちが今できることは何か、と内省してみようというメッセージを表しています。
赤い絨毯の上に書いてある文字をそのまま見ても理解できないのですが、顔をあげてパビリオンに反射した文字をみるとSwitzerlandと書かれていることに気が付きます。
まるで登山!霧の中を進んで標高4,000メートルへ
スイスパビリオンは大きく前半部分と後半部分に分けることができます。前半部分では、標高4,000メートルまで登山するような設計になっていました。
霧で数メートル先が見えない緩やかな坂を登っていきます。とても幻想的で360度見渡せる巨大スクリーンには、スイスの山並みの映像が映し出されていました。
そして坂道を登り切ると標高4,478メートルの頂上に来たことを示す標識が設置されていました。
次の空間では、インスタグラムのアカウントでQRコードを読み取ると、実際の頂上がどのようになっているのかを画面越しに360度見渡せるようになっており、実際に登ってみたくなる工夫がされていると感じました。
スイスの未来に対する取り組み
頂上から下山していきますが、エレベーターやエスカレーターで有名なSchindler(シンドラー)が紹介されており、実際にエスカレーターに乗って次のゾーンへ進んでいきます。
後半部分では、さまざまなイノベーションの紹介や、水資源の重要性、スイスの水セキュリティーに対する取り組みなどが紹介されていました。
井戸を覗いて知るスイスの企業
さまざまな企業が井戸を覗くような形で紹介されていました。
Clariant
こちらの企業は化学企業で、環境に配慮した商品なども開発しています。
例えば、洗剤などに含まれる界面活性剤ですが、暮らしを便利にしてくれる一方で海や川へ流れ出ても分解しないため水質汚染を引き起こしています。Clariantは生分解性(自然に還る)成分でできた界面活性剤の開発をしています。
Didier Voirol eyewear
こちらは2008年に創業したスイスの高級なアイウェアブランドで、実物と共に紹介されていました。
その他紹介されていた企業について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。(英語)
イノベーションに対する考え方
これらは井戸ではなく、イノベーションに対する考え方を水を使用して表しています。
真ん中に穴が空いており、天井からそこに一滴ずつ水が落ちていました。この一滴一滴はアイディアを表しており、イノベーションは急に起こるものではなく、さまざまなアイディアが集まって起こるものだというのを表しています。
水セキュリティーに対するスイスの取り組み事例
スイスは世界中の人々が安全な水へアクセスできるよう、そして水資源を巡った紛争を防ぐため、Blue Peaceというイニシアチブを2010年に立ち上げて活動を行ってます。
上記のパネルの左側には、地球上の水のうち3%が淡水ですが、そのうち安全に飲めるのは1%しかないという事実や、人間が1日に最低限必要な水の量は50〜100リットルであることなど、水にまつわる知識の紹介がされていました。
そして右側にはBlue Peaceイニシアチブがもたらしているインパクトについて、具体的に以下の6つが紹介されていました。
- 平和
- 健康
- 環境負荷削減
- 食糧危機の緩和
- 経済成長
- エネルギー
平和に対する影響としては、国境や立場を越えて共に協力し合うので、国家間の緊張を緩和する作用があります。
健康と環境への影響は言うまでもないかもしれませんが、水質汚染を改善することで私たち人間の健康リスクの低減に繋がり、また生態系の保護にも繋がります。
そして持続可能な形で水資源を活用することで、農作物に与える水を安定的に供給できるので食糧危機の緩和にも繋がっています。こうして生活の基盤が整うことで産業が発展し、経済成長に繋がります。また、水力発電を行うことで安定してエネルギーを供給できることも紹介されていました。
最後に
日本は水害も多く発生しますが、水資源に恵まれている国です。私たちは水道をひねると安全に飲める水が手に入るわけですが、世界に目を向けると水ストレス地域で生活している人が多くいます。
また、日本は島国なので他国と共有している湖や川はありません。しかし多くの国(153ヵ国)は上流や下流、国境になっている川などがあり、水資源を共有していることを知りました。
これから起こる人口の増加に対応していくために、水セキュリティーについて再度私たちも考える必要があると強く感じたパビリオンでした。