スマートで持続可能な都市づくりに向けて|ドバイ万博から学ぶ
ドバイ万博のドイツパビリオン「Campus Germany」は、「教育(Education)」と「エンターテイメント(Entertainment)」を組み合わせた「エデュテイメント(Edutainment)」をテーマにしています。館内は、エネルギー、フューチャーシティ(未来都市)、生物多様性の3つのラボ(ゾーン)に分かれています。それぞれのラボで学んだあとは、Graduation Hallで卒業式を行います。
フューチャーシティーラボ
フューチャーシティラボは、私たちが今後どのような都市に住みたいかを考えるゾーンです。 フューチャーシティラボの入口では、「2100年には世界の人口の85%が都市部に住むと言われていますが、どのような街づくりをするべきでしょうか?」と問われます。
2020年から2100年までのメガシティには東京も含まれています。
フューチャーシティラボでは、未来のモビリティ、資源循環による新たな建築素材や持続可能な食糧生産の事例を知ることができます。
未来のモビリティ
CARGOCAP社の効率的な輸送システムの事例が、未来のモビリティの事例として展示されています。CARGOCAP社が開発したキャップと呼ばれる輸送車両は、地下の輸送用パイプラインを活用します。このパイプラインは最新の技術で施工され、大規模な工事を行う必要がありません。
同社の輸送システムは、コンピューターで自動管理されます。例えば、キャップ同士がお互いの位置を把握し、自動で距離を調整する事が可能です。この自動調整機能によって、キャップで輸送する貨物を安全、迅速かつ時間通りに輸送することが可能です。
キャップによって運ばれた貨物は、CARGOCAPステーションで直接受取人に渡されます。直接の引き渡しが難しい場合は、目的地に最も近いハブステーションからトラック等でラストマイルの配送がされます。ステーションがある場所は、地上への接続が可能で、ここで地上配送に切り替わります。同社の輸送システムは、天候に左右されないだけでなく、地上での輸送距離を短縮できることから騒音緩和や排気ガス抑制に貢献します。
未来の建物
建設セクターは、世界全体で排出される二酸化炭素のうち4割近くの排出を占めています。建物の建設時に使用されるコンクリート、接着剤やその他の建材は、リサイクルが難しい素材です。しかし、フューチャーシティラボで展示されていた素材は、リサイクルされた素材を使用しており、またリユースを考慮し、素材設計が行われています。
廃ガラスから作られたものや壊れて廃棄されるブロックを再利用したもの、また粘土や麻から作られたもの、廃棄野菜から作られた素材が展示されていました。
未来の食糧生産
これから食糧生産のシステムは大きく変化します。フューチャーシティラボでは、INFARM社による垂直農法の事例が展示されています。同社は、日本にも進出しているドイツの次世代型屋内垂直農法を行う企業です。
栽培する野菜にとって最適な環境が、リモートによって管理されます。天候の影響を受けないため、消費者は一年中栄養価の高い食材を手に入れることが可能です。垂直農法は、従来の方法と比べて輸送にかかる二酸化炭素の排出削減に繋がるなど、環境に優しい食糧の生産方法です。具体的には、フードマイルを90%、水の利用を95%、土地利用を95%削減することができ、さらに無農薬で栽培できることが示されています。
持続可能な食料調達の事例
昆虫は、栄養価が高いので魚のエサとして活用します。魚を育てるために使用した水は、農作物の栽培に利用します。展示では、トマトが栽培され、そのトマトについた昆虫を魚のエサにするといった、循環する食料システムが一例として示されています。
こちらのゲームは、マイクロプラスチックを吸収するバクテリアに関して学ぶゲームです。タッチパネルの画面には、たくさんのマイクロプラスチックがばら撒かれます。指でバクテリアを動かしながら、より多くのマイクロプラスチックを吸収した人が勝つというとてもシンプルなゲームです。ゲームを通して、プラスチックを好んで食べるバクテリアの研究が行われていることを知ることができます。
コンクリートとフルーツジュースで発電できる研究についてです。壁に使用することで、壁で発電してエネルギーを供給できるそうです。
大都市には、これまで多くの人々が集まりさまざまなイノベーションが起きました。しかし、大都市に人口が集中しすぎると、新たな環境的かつ社会的課題を生み出します。人口の都市一極集中を回避し、都市システムが健全に機能するために、人口流入のトレンドも変化させる必要があります。フューチャーシティラボの出口では、より効率的な移動手段や持続可能な食料調達、そして持続可能な形でエネルギーを供給する必要があるという言葉で締めくくられていました。
最後に
日本でも昔は土壁など自然由来の建築材料を使用していました。それらの素材は、日本の土地や気候と合っており、環境に配慮された建築素材でした。今後は、新しい素材をうまく活用し、組み合わせながら、また自然と調和していた時代のことも振り返って融合させながら、日本でも持続可能な街づくりが進むことを願います。