オランダ・アムステルダム「デニムシティ」持続可能なデニム・ジーンズを
ジーンズは、流行り廃りがなく、どんな衣類とも合わせやすく、多くの人に愛されているファッションアイテムの一つです。しかし、ジーンズは環境に優しくないと訴える人もいます。ジーンズを一着製造するためには、6,800〜10,000リットルの真水を使用します。ジーンズの素材となる原材料の環境負荷も考慮すると、環境に対する負の影響はさらに大きいでしょう。
この記事は、デニム産業を持続可能で環境負荷が低いビジネスモデルに変えていこうと取り組んでいるオランダ・アムステルダムの「デニムシティ」を紹介します。
現地の様子をご覧いただけるこちらの動画も、ぜひご覧ください。
デニムで人を繋ぐプラットフォーム
オランダ・アムステルダムの中心地に位置するDenim City(デニムシティ)は、デニム・ジーンズに関連する企業や消費者を繋ぐプラットフォームの役割を果たしています。デニムシティの建屋は、元々は鉄道の車庫でしたが、リノベーションを行い建屋を再利用しています。
デニムシティには、HOUSE OF DENIM FOUNDATION(ハウス・オブ・デニム財団)というデニム製造や販売に関連する企業やプロジェクトを支援する財団のオフィスがあります。他にも、デニムを販売する店舗、ワークショップコーナーやデニムデザイナーなどのクラフトマンシップを学ぶことのできる学校Jean School(ジーン スクール)などもあります。
House of Denim foundation
HOUSE OF DENIM FOUNDATIONは、「Towards a Brighter Blue(輝かしい青へ)」というミッションを掲げています。同財団は、デニム・ジーンズに関するプロジェクトやイベントの開催を通じて、デニム産業に関わる人々を繋いでいます。具体的には、以下で紹介する「Denim City Store」「Denim City Academy」「Denim City Archive」を運営することで、デニム・ジーンズに関するプラットフォームとしての機能を果たしてます。
Denim City store
デニムシティ内にある「Denim City Store」は、BENZAK、DENHAM、EDWIN、KINGS OF INDIGO、KUYICHI、NUDIE JEANS、MUURといったブランドを扱っており、実際にジーンズやデニム商品を購入することができます。「Denim City Store」に陳列されているジーンズを手に取ってみると、商品のタグには「オーガニックコットンのみ使用」や「サステナビリティに10年以上取り組んでいます」といったメッセージが書かれています。
毎週火曜日と木曜日は修理職人が常駐し、消費者はジーンズの修理を依頼する事ができます。そして、修理だけでなく、オーダーメイドの相談や注文も受け付けています。
Denim City Academy
デニムについて詳しく知りたい人は、デニムシティの「Denim City Academy」で、学習コースやデニム生地を使ったワークショップに参加することができます。
「Denim City Academy」は、7つの学習コースを提供しています。学習コースによって対象者は異なり、デニムについて関心のある個人や団体向けに、デニムの歴史や染色方法について学ぶコースやデニムによる環境負荷について関心のある人に向けたサステナビリティに焦点を当てた学習コースがあります。また、バイヤーやデザイナー、製品の開発者を対象としたデニムの洗濯方法について学ぶコースもあります。
デニムシティで参加できるワークショップには、半日かけて鞄を製作するものから、4日間かけてジャケットを製作するものまで内容や期間はさまざまです。他にも、ジーンズやエプロン、自身のデニムをカスタマイズできるコースなど、合わせて5つのワークショップを開催しています。
学習コースについて詳しくはこちら▼
ワークショップの遂行人数や値段など詳しくはこちら▼
Denim Deal
Denim Dealは、サプライチェーン全体でデニム産業をより持続可能なものにしようと取り組んでいる国際的なネットワークです。デニムの製品を消費者に届けるまでに、綿花農場から生産工場、ブランド、流通など、原料調達から製造まで約100社が関わっています。Denim Dealは、サプライチェーン全体を巻き込みながら、製造過程で使用する水や二酸化炭素の排出削減、生地のリサイクルやアップサイクルを通じてサーキュラーエコノミーにも貢献し、デニム産業がより持続可能で環境負荷が低い産業になることを目指しています。
取り組みの一例として、Denim Dealに賛同し署名を行った企業は、Denim Dealが掲げている目標達成に協力することが求められます。例えば、Denim Dealに参加している企業は、原材料から作られるバージン生地を使用するのではなく、リサイクル繊維を全体の5%ほど織り交ぜた素材を積極的に使用する新しい業界標準を設けました。KINGS OF INDIGO、KUYICHIやMUD jeansといったデニムブランドは、Denim Dealに賛同・署名を行っており、リサイクル繊維を20%ほど織り交ぜた新しいデニム生地を使用する意向を示し、全体で300万着を生産・販売する野心的な目標を掲げています。
Denim City Archive
デニムシティには、デニムを扱うブランドの商品が展示されたアーカイブコーナー「Denim City Archive」があります。中を見学することはできませんでしたが、同コーナーには、LEEやLEVI’S、DIESELといったブランドの製品が展示されているとホームページに書かれています。また、岡山県倉敷市児島に本社を置くデニムメーカー株式会社ジャパンブルーの「桃太郎ジーンズ」もあるそうです。
最後に
多くの人々に愛されるデニムですが、原材料であるコットンを染色してできるデニムの製造過程は、大量の水を使用するなど、環境負荷が大きいという課題を抱えています。デニム産業では、現在抱えている課題を解決し、持続可能で環境負荷が低いビジネスモデルに移行するため、世界中で環境に配慮したデニム生地の開発やリサイクルに取り組んでいます。
デニムシティのように、デニム好きな人々がイベントなどを通じて学び、交流できるコミュニティがあることは、デニムに関する知識を深め、産業全体について知ってもらうために重要です。また、デニムを製造するブランドだけがサステナビリティに取り組むのではなく、サプライチェーン全体を巻き込むDenim Deal仕組みは、今後デニム産業の常識を大きく変えていくでしょう。
私は、デニムシティの目指す未来に共感し、その力になりたいと思ったため、環境に優しいジーンズを購入しました!購入したジーンズは、コットンではなく、ユーカリを原料とする「リヨセル」や「レーヨン」を利用したサステナブルな素材から作られています。履き心地は、従来のジーンズと変わりありません。
日本国内でもリサイクル繊維を使用したデニムを見つけることができます。普段着るもの全てをサステナブルなアイテムに変えることは難しいかもしれません。しかし、本記事を通じて少しでも興味が沸いた方は、まずは一部をサステナブルなアイテムに変えてみるところから挑戦してみてほしいと思います。