山口県宇部市の地域課題と向き合う方法とは?事例から学ぶ
ここ数年で、SDGsという言葉を耳にする機会が増えました。SDGsに対する関心の高さは、東京などの都心部だけでなく、私の住んでいる山口県でも広がりを見せています。本記事では、山口県宇部市に拠点を置き、SDGsと市民活動を繋げるソーシャルプロジェクトを立ち上げている「一般社団法人SDGsてらす」についてご紹介します。
代表の想い
宇部市議会議員、山口県議会議員を経て、県内初の女性市長となった久保田后子さんが代表理事を務めています。久保田さんは、市長時代に国で内閣府より公募のあったSDGs未来都市に応募し、SDGsの達成に向けて優れた取り組みを提案する29都市の1都市として選定されました。これは山口県内初です。また、施行されたのは退任された後ではありましたが、ジェンダー平等に向けて宇部市のパートナーシップ制度の導入に向けても尽力されました。このように、市長時代から住民の暮らしやすさはもちろん、グローバルな視点で政策を進められていました。
その中で、市政で解決できるもの、個人で解決できるものがある一方で、一般社団法人だからこそできることもあると感じたそうです。一般社団法人「SDGsてらす」という名前には、この理念を希望の光として「一隅を照らす」とともに、人々がつながり、アイデアを出し、プロジェクトを推進していく場所としての「テラス」という二つの想いが込められています。
SDGsという言葉は認知度が高いからこそ、さまざまな分野の人々との協働や連携を進め、身近なところから社会課題の解決を目指しています。
そもそもSDGsとは?
SDGsとは、先進国や途上国関係なく、国際社会が協力して2030年までに達成することを目指した目標であると同時に「誰1人取り残さない」というスローガンと合計17の目標が掲げられています。しかし、「貧困をなくそう」や「飢餓をなくそう」といった目標はとても抽象的です。また、まだ食べられるのに捨てられてしまうフードロスが問題になっている日本では、飢餓の問題を想像するのは難しいかもしれません。しかし、実は17の目標にはそれぞれ169のターゲットと数値目標が設定されています。
それぞれの目標やターゲットについて詳しくはこちら▼
SDGsてらすの具体的な活動
日本では少子高齢化や、害獣問題、教育格差、子供の貧困、ジェンダー平等など、地域によってさまざまな問題を抱えています。SDGsは世界共通の目標ですが、代表的な課題を取り上げており、日本特有の問題については取り上げられていません。さらに、日本特有の問題でも、都市部である東京と人口減少や過疎化に悩まされている地方では抱えている社会課題も異なります。
SDGsてらすでは、これらの地域特有の課題を解決することを目指しています。例えば、教育格差をなくすため、youtubeでのオンライン学習支援や、地域企業で廃棄されていた端切れをアップサイクルしたサステナブルファッションの立ち上げ、他にも女性の活躍や多文化共生に関するプロジェクトの準備も進めています。
これらの活動は、地域の住民の声を拾い上げながら取り組みを進めています。初めは少人数でスタートした活動も、共感の輪が広がることで関わる人が増えているそうで、取り組んでいる内容はもちろん、SDGsという言葉によって広がりを見せていると話されていました。また、久保田さんは、これらの活動を認知してもらうだけでなく、そもそもSDGsとは何か?という理解を促進するためのセミナーや講演活動なども積極的に行っています。
最後に
SDGsという言葉の認知度は高い一方で、17の目標はとても抽象的できちんと理解している人はまだまだ少ないように感じます。この理解を深めることはもちろん大切ですが、理解した上で実際のアクションに移すことがさらに重要です。そのためには、まず身の回りにある社会課題を「自分事」として捉える必要があります。SDGsてらすでは、一方的に課題を提示するのではなく、地域から上がった声を元に解決に向けて取り組んでいます。
2030年までに誰一人取り残さずに目標を達成するためには、地域に根ざして多くの人を巻き込みながら地道に活動を行っていく必要があります。これらの活動は地球全体で見ればとても小さなことだと感じてしまいます。しかし、これらが積み重なることで、他の地域でも広がりを見せ、共感の輪がさらに広がっていくのではないかと思います。