ナイジェリア・世界有数の経済大国への道|ドバイ万博で見えた展望
ナイジェリアは、西アフリカに存在する国家です。アフリカ最大の人口と経済規模を有します。また、デジタル分野を中心に、ナイジェリア発スタートアップは増えており、新しい産業が生まれる可能性があります。今後目が離せない国の一つです。
本記事は、2021年10月から2022年3月末の半年間にわたって開催されたドバイ万博のナイジェリアパビリオンの訪問レポートです。サステナビリティ取り組みの観点から取材をしました。
ナイジェリアについて
ナイジェリアは2022年の現時点で人口約2億人とアフリカで最も多く、世界では7番目に人口の多い国となっており、国連の推計では2090年には7億人を突破すると予測されています。そして2050年には、インド、中国に次いで世界3位の人口大国になると予想されています。
地域別で見ても、アフリカ大陸全体の人口は今後増加していき、世界の4人に1人がアフリカ人という時代になります。そして、その5〜6人のうち1人がナイジェリア人になると言われています。
ナイジェリアは今後2050年に向かって人口が増加し、先進国から新興国へ経済が変化する中で、アフリカ大陸の中で一番大きな経済規模になると見込まれています。巨大な経済市場であると同時に雇用対策や交通インフラの整備がまだ追いついておらず、汚職の蔓延などさまざまな経済課題も抱えています。
Pwcの調査レポートでは、ナイジェリアは予測GDPの世界順位が上昇する潜在力を持つが、自国経済の多角化、ガバナンス水準向上とインフラ改善が前提条件であると記載されています。
さらにSDGsの目標別達成度も以下の通りです。
社会課題解決に向けて
これまでアフリカでスタートアップが多く誕生していた国は、ケニアと南アフリカ共和国でした。しかしジェトロによると、2018年のナイジェリアへのベンチャーキャピタル(VC)投資件数は58件、投資額は9,490万ドルで、アフリカで初めて1位となっています。また、スタートアップを支援するインキュベーターの拠点数も、南アフリカに次いで2位(55拠点)となっており、農業、輸送・交通、医療、教育、金融などさまざまな分野の社会課題解決に向けたスタートアップが多く誕生しています。
Kepple Africa Venturesというアフリカのスタートアップ11ヶ国、102社(2022年4月時点)に投資している日本のベンチャーキャピタルがあり、ナイジェリアを含めてアフリカでHRテック、SaaSや医療テック系のスタートアップに対し積極的に投資を行っています。
Kepple Africa Venturesについてはこちら▼
農業分野について
ナイジェリアは原油を輸出することで外貨を稼いでいますが、GDPの農業などの第一次産業の占める割合は21.4%であり、第二次産業(26%)、第三次産業(22.5%)よりも低いですが、人口のおおよそ半分が農林水産業に従事しています。
主な生産物は主食であるキャッサバやヤムイモで、広く食べられているお米もアフリカで最も多く生産されています。また、ナイジェリアのカカオ豆の生産量は世界4位、ゴマは世界5位を誇る農業大国です。
しかし、ナイジェリアでは現在既に食糧不足が発生しており、今後人口が増加するとさらに深刻化すると予想されています。ナイジェリアパビリオンでは、持続可能な食糧システムを実現するため、垂直農法など都市部での栽培栽培も増加していることが紹介されていました。
都市部での水耕栽培や垂直農法といった方法は、今後東京などの大都市では当たり前になると予測されており、人口増加に対応できるだけでなく、農地から都市部まで運ぶ際に排出する二酸化炭素の削減やその過程で出るフードロスの削減にも繋がります。
農家を支えるサービスを提供しているスタートアップには、FarmcrowdyやFarmpowerが紹介されており、ニーズのある作物の生産に必要とする資金をクラウドファンディングで集め、投資家と農家をつなぐプラットフォームを構築しています。
ナイジェリアの人権配慮
ナイジェリアの主な資源には天然ガスや石油がありますが、金も生産されています。しかし、この金の採掘では密輸や健康被害、児童労働など多くの問題が指摘されています。
ナイジェリア政府はERGP(経済回復・成長計画)を導入し、ナイジェリアを投資価値のある魅力的な地域にするため、インフラ整備や農業改革などを行って経済成長を促進しています。その一例として、この金の採掘に関してきちんと人権配慮を行い、Thor Explorationsというサプライチェーンマネジメントを行う企業と連携して児童労働や強制労働がないよう取り組んでいることが紹介されていました。
最後に
ナイジェリアパビリオンでは、自国のお祭り、伝統工芸、世界で活躍しているナイジェリア出身のアーティストや持続可能な世界をつくっていくための取組事例が紹介されていました。人口は購買パワーです。今後も人口が増加することにより、大きな経済成長を秘めている国だと感じました。
一方、飢餓や貧困の問題、人権問題などの課題も多く抱えています。今後温暖化が進むことで、一次産業に対する悪影響が懸念されます。特に農作物に対する影響は大きく、食糧危機と向き合う必要性が高いです。先進国が発展途上国に対して、どのような支援ができるか。気候変動に対する適用の支援の重要度は年々高まっています。