ZeroAvia|水素燃料電池で飛行する未来の航空機開発
世界は持続可能な社会、すなわち脱炭素社会を目指しており、各国政府はもちろん、多くの産業セクターが大きな転換を求められています。航空業界も同様です。日本のJALやANAも燃費の良い機体の導入や、カーボンオフセット制度などを通じて、カーボンニュートラル実現に向けて動きが活発化しています。しかし、今回ご紹介するZeroAvia社は、二酸化炭素を排出しない水素燃料で飛ぶ飛行機の開発を行なっています。詳しくご紹介します。
ZeroAviaについて
ZeroAviaは、水素燃料電池を使用して安全に飛行機を飛ばすことに挑戦しているベンチャー企業であり、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏やBill Gates(ビル・ゲイツ)氏、そして先週にはBritish Airways(ブリティッシュエアウェイズ)などから投資を受けています。
既にアメリカとイギリスの規制環境で2機のプロトタイプ航空機の実験証明書を取得しており、重要な飛行試験のマイルストーンにも合格しています。
飛行機移動による地球温暖化
世界全体での温室効果ガスの排出量のうち、飛行機による排出量は1.9%、二酸化炭素だけに絞ると2.5%を占めます。
そして今後人口が増え、より多くの人が飛行機による移動をした場合、2050年までに気候変動へ影響を与える割合は25〜50%に増加すると言われています。
現在、ほとんどの飛行機が化石燃料を使用しており、地球温暖化の一因となっています。欧州では、2020年には環境活動家のグレタ・トゥーンベリによって、飛行機に乗ることを恥ずかしいとする「フライトシェイム(飛び恥)」運動も生まれました。
化石燃料以外で飛ぶ飛行機
化石燃料以外の方法で飛行するものでは、バイオ燃料によるものがありますが、燃料となる木材などが大量に必要になることに加え、バッテリーが重すぎることから長距離の飛行には向きません。
一方の水素燃料電池は、水素と空気中の酸素を反応させ、結合させる必要があります。それは太陽光や風力を使用して生成できるため、大きなエネルギーを生み出し、長距離飛行もできるのではないかと期待されています。
そして2020年9月、6人乗り航空機がイギリスのクランフィールド空港から離陸し、8分間の飛行に成功しました。ZeroAviaは、商用サイズの航空機で史上初の水素燃料電池飛行であり、大きな偉業を成し遂げたと発表し、タイム誌も2020年の最大の発明の一つとしてゼロアビアの技術を紹介しました。
実用に向けたソリューション
ZeroAviaは水素を空港またはその近くに保管することで、これまでかかっていた水素の輸送コストを削減します。電解するためのエネルギーにはその地域で生成された再生可能エネルギーを使用します。
そして飛行機の中に搭載されたタンクに水素をため、燃料電池で電気に変換することでエネルギーを供給して飛行します。
しかし、まだまだ課題も多く残っています。燃料電池は重くて複雑であり、長距離の場合は水素をためるための大型の貯蔵庫も必要になります。
また、先ほど成功したとした8分間の飛行実験も、水素燃料電池とバッテリーを組み合わせており、完全に水素燃料電池で飛行したわけではありません。燃料電池車の場合でも、バッテリーを使用しながら出力を安定させるものが多いです。
今後の展望
ZeroAviaは、2024年には10-20人規模の飛行機から始め、段階を追いながら2040年には200人以上の乗客を運べるよう挑戦していくとしています。
最後に
いかがでしたでしょうか?
今回ご紹介した記事の中に「飛び恥」という言葉が出てきましたが、コロナが収束した後の旅行は今までのようにたくさん飛行機に乗って移動することは減り、オンラインツアーなどに置き換わるのではないかと予想されています。
しかし、移動の際に温室効果ガスが排出されない、または大幅に削減することが可能になれば、より多くの人が喜んで旅行に行けるようになります。
ZeroAviaだけでなく、日本国内でも、ホンダのプライベートジェット機にユーグレナのバイオ燃料「サステオ」を使用したフライトが行われており、技術は日々進化しています。
化石燃料を使用せずに多くの人が飛行機で移動できる日を楽しみにしたいと思います!
参照:
Home – ZeroAvia
What share of global CO₂ emissions come from aviation? – Our World in Data
ZeroAvia: The 100 Best Inventions of 2020 | TIME