オーガニック・テキスタイル「GOTS認証」に転換するドイツのアパレルメーカー
環境先進国ドイツにおけるオーガニックフード事情はすでに多くのメディアで取り上げられており、世界的にも認知されていると言えるでしょう。しかし、食にこだわる人は身に付ける衣類や化粧品、寝具に至るまで全てにこだわりを持ちます。例えば、オーガニック食材しか買わない人が、化学物質だらけの化粧品や化学繊維のみで作られた安価な衣類を買うでしょうか?
世界規模でサステナビリティーが重要視されるようになった昨今、安価なファストファッションブランドであってもリサイクル素材やオーガニック素材を使用し、店頭には不要となった古着をリユースやアップサイクルするために収集する回収ボックスが設置されるようになりました。
そういった活動が増え、浸透していくことは非常に良いことですが、一体どんな方法でリサイクルされたのか、どんな環境で生産されたオーガニック素材なのか、私たちの多くは知りません。そんな私たちでも簡単に見分けることができるのが認証マークです。多数の認証マークが存在しますが、アパレル産業における世界基準のオーガニックテキスタイル認証は「GOTS」が最も有名でしょう。
「GOTS」発足から20年目の2021年には認証施設が過去最多となる。
「GOTS」とは、グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダードの略称であり、有機栽培(飼育)の原料を使用し、環境と社会に配慮して加工・流通したことを示すオーガニックの繊維製品の国際認証制度です。
対象となる繊維製品は、糸や生地などの中間製品から、衣服、アクセサリー、ホーム・テキスタイル、ベッド用品、パーソナルケア製品までを含み、広い意味での繊維製品が対象となります。認証には、原料繊維がオーガニックであることだけではなく、繊維の収穫、加工、製造、流通のすべての過程が環境・社会に配慮した方法であることを求められ、生産履歴の追跡が保証されています。さらには、年に一度、第三者認証機関による監査を受けなければなりません。オーガニック認定原料の使用量は70~100%、他の一般製品からの汚染、混入がないよう管理されている目印になります。
「GOTS」の発表によると、2021年には認証件数が過去最多を記録し、現在、世界80ヵ国で12,388の認証施設が存在するとのことです。増加率が高かった国ベスト5は、1位トルコ(1,799 件)2位イタリア (894 件) 、3位ドイツ(817 件)、4位ポルトガル( 608 件)、5位フランス (122 件)という結果になっています。
2002年に発足した「GOTS」は昨年で20周年を迎えました。マネージングディレクターのクラウディア・ケルステン氏は以下のように述べています。
「2002年当時は、多くの人にとって夢物語のように思えたものが、この20 年で現実となりました。私たちは、すべての主要市場で認められているオーガニックテキスタイル認証と、持続可能なサプライチェーンから調達された真のオーガニック製品を選択する力を消費者に与える基準を作り上げました」
GOTS認証のテキスタイルを使用しているドイツのアパレルメーカー
では、実際にはどんなブランドがGOTS認証の生地を使用しているのでしょうか?ドイツに焦点を当て、様々なジャンルからブランドを紹介していきたいと思います。
Manakaa Project(マナカ・プロジェクト)
「Manakaa Project(マナカ・プロジェクト)」は、クラフトマンシップとサステナビリティを融合させたブランドとして、ステファニー・ブランクとヴァレリー・ティースマイヤの2人によって、2019年にベルリンでスタートしました。インドの伝統技術である刺繍と80年という歴史を誇る広島のガラスビーズ「MIYUKI」を取り入れたミニマルモードなデザインを特徴とします。インドのcocoon社の殺虫剤などを一切使用せず、自然環境で育てられた蚕から採れた100%オーガニックシルク、ゴビ砂漠の放牧で育てられたカシミヤのウールなど、GOTS認証による生地を全体の85%使用しています。メインビジューとなるガラスビーズは全て男性の刺繍職人の手作業によって一針ずつ縫われており、芸術的な美しさを誇ります。
INFANTIUM Victoria(インファンティウム・ヴィクトリア)
「INFANTIUM Victoria(インファンティウム・ヴィクトリア)」は、2015年にハノーバーで設立された子供ども服ブランドです。GOTS認証のオーガニックコットンを多数使用しており、パッチワークや大胆なレイヤード、アヴァンギャルドなデザインが特徴的です。
Anekdot(アネクドット)
「Anekdot(アネクドット)」は、すべてハンドメイドによって生産されているベルリン発のラグジュアリーランジェリーブランドです。下着、水着、ルームウェアと幅広く展開しており、オーガニックコットン製品にはGOTS認証の生地を使用しています。生産工程で発生した残材やデッドストック、ヴィンテージのトリミングされた素材をアップサイクルして使用しているため、大量生産はしておらず、限定数での販売を行っています。
JYOTI – FAIR WORK(ジョティ・フェアワークス)
「JYOTI – FAIR WORK(ジョティ・フェアワークス)」は、ベルリンに店舗を持ち、インドで生産を行っているフェアトレードファッションブランドです。南インドのチッタプール、ロンダ、ハイデラバードの3カ所に縫製工場を構え、地元のNPOと共に恵まれない女性たちに訓練と雇用などを提供しています。伝統的な技術を駆使した手作業によって生地を織り、プリントしています。使用されているのはすべてGOTS認証のオーガニックコットンです。
Pinqponq(ピンポン)
2014年にケルンで誕生した「Pinqponq(ピンポン)」は、100%リサイクルPET生地を使用したデザイン性と機能性を兼ね揃えたサステナブルなバッグブランドです。トルコ、ベトナム、ミャンマーのサプライチェーンとパートナーシップを結び、資源を大切にする製造工程やデリバリーチェーンの透明性を示しています。100%コットンのTシャツにはGOTS認証のオーガニックコットンを使用しています。
これらのブランドはほんの一部ですが、GOTS認証のオーガニックコットンが最も需要があることが分かります。他にも、麻、ウール、シルクと言った天然素材が対象となっており、下記URLのオフィシャルサイトからGOTSの認定サプライヤーを調べることが可能です。
GOTS認証の生地は有機農法であることにフォーカスされがちですが、特筆すべきは、フェアトレードやるか、いつ、どこで、誰によって作られた製品なのかを明らかにするトレーサビリティシステムが取り入れられているか、労働環境に問題はないか、児童労働が行われていないかなどの厳しい規定を設けている点です。GOTSが認証した生地で作られた衣類は決して安くはありません。しかし、肌に優しく、地球環境にも優しく、長年着ることができるといった絶対的な安心感と先に述べたような社会活動にも貢献できていることを考えたら充分な価値があるのではないでしょうか?