気候変動への次の一歩、COP29の全貌を解説
気候対策交渉を行うCOP29は予定より2日間延長され、24年11月24日に閉幕しました。COP29の大きなテーマは、「気候資金」。特に気候変動の影響を最も受けやすい国や地域を支援する、金銭的な支援を含めた新たな枠組みの構築が焦点となりました。
そして、昨年のCOP28で合意された「化石燃料の段階的削減」や「損失と被害基金」の具体化を進める重要なステージとして期待されていました。
COP28では歴史的な合意がいくつもなされましたが、その実施に向けた具体的なロードマップや資金提供の確保には依然として課題が残っています。
特に先進国と発展途上国の間での温度差や合意の実現可能性が議論を呼び、COP29はこれらの課題を乗り越えるための重要な場と見られていました。COP29に参加し、現場で感じたことを含めて、記事を執筆します。
COP29の概要と参加者
COP29は2024年11月11日から22日まで、アゼルバイジャンのバクーで開催されました。この会議では、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第29回締約国会議(COP29)、京都議定書第19回締約国会議(CMP19)、パリ協定第6回締約国会議(CMA6)、および補助機関会合(SBSTA61およびSBI61)が行われました。会議には 約67,000人が登録され、締約国の代表団、オブザーバーやメディアが参加しました。
主な成果と合意事項
(a) 主な成果の概要
新しい気候資金目標(NCQG)の設定
COP29では、発展途上国向けの気候行動資金として確保するという新しい集団的定量目標(NCQG)が合意されました。これまでの途上国支援目標である年間1,000億ドルを見直し、「2035年までに年間少なくとも3,000億ドル」に引き上げることが決定されました。
また、すべての国や関連機関に対し、公的および民間の資金を活用し、途上国向けの気候行動支援を2035年までに年間1兆3,000億ドル以上に拡大することが求められました。
・パリ協定の市場ベース協力メカニズムの始動
パリ協定の第6条(市場メカニズム)の実施に向けた運用ルールが確定し、世界規模での排出削減を促進する枠組みが整いました。
(b) 各国のスタンス
途上国が求めていた年間1兆ドル以上の気候資金要望に対し、「2035年までに年間少なくとも3,000億ドル」というNCQGに対して「COP29は依然として包括性を欠き、重要な議論に十分な時間が割かれなかった。特に弱い立場にある国々の切実な声が軽視されている」との批判が途上国や小島嶼国より相次ぎました。
また、合意されたNCQGに関しては、2025年から2035年までの気候資金を確保するために、途上国のニーズを反映し、先進国からの補助金を通じた公的資金の導入を優先すべきだとの意見も寄せられています。
国際的な開発や環境保全の議論で繰り返し見られる、先進国と発展途上国の対立が、気候対策の実行フェーズで浮き彫りになっています。発展途上国の立場では、「気候変動の主な原因は歴史的に先進国にある」と主張し、先進国が責任を持って資金と技術支援を提供すべきだと求めています。
特に、気候変動による被害を受けやすい国々は、適応策や損失補填のためにより多くの財政的支援が必要となり、先進国に対して補償を求めています。
一方で先進国の立場では、発展途上国も成長に伴う温室効果ガス排出量の増加を抑える責任があると強調します。さらに、自国の経済的制約から、すべての資金を先進国が負担することは難しいという現実もあります。
(c) 新しいメカニズムやイニシアティブ
気候資金の新たな目標設定以外に注目したい新たな合意や提唱は以下の通りです。
・グローバルカーボン市場の枠組み合意
各国は、温室効果ガス排出削減を促進するため、国連主導のグローバルカーボン市場の品質基準を承認しました。
・再生可能エネルギーとエネルギー貯蔵の目標設定
再生可能エネルギー容量を2030年までに3倍に増やし、エネルギー貯蔵容量を6倍に拡大することが提唱されました。
・クリーン水素市場の促進
クリーン水素のグローバル市場を形成し、規制や技術的障壁を解消するための宣言が行われました。
・「COP休戦」の呼びかけ
平和と気候行動の重要性を強調する「COP休戦」の提案がなされました。
3. 主な論点と課題
(a) 期待と現実のギャップ
気候変動に対する緩和策をスピーディーに実行させるために必要な議論と合意が不十分な状況です。例えば、パリ協定で定めた各目標に対する進捗状況を5年ごとに包括的に評価するグローバル・ストックテイク(GST)の結果実施に関する議論や、GSTに基づく次回の国別貢献(NDC)準備に関する報告書の議論、公正な移行プログラムの枠組みと具体的な内容の議論(技術メカニズムと財務メカニズムの連携含む)等、気候行動を加速させる上で重要なアジェンダについて合意に至らなかったことに不満を表明した参加国が多くありました。
次回のNDC提出期限である、2025年2月までに参加国各国で具体的な緩和に対する行動を確定させる必要性が高まっています。
各国による野心的な目標の引き上げの期待値が高まる中、注目を集めたのは、イギリスのスターマー首相でした。同国は9月末、国内最後の石炭火力発電所を停止し、G7(主要7か国)の中で初めて石炭火力発電を全廃しました。これにより、142年続いた石炭火力発電の歴史に幕を下ろし、前回のCOP28で合意された「エネルギーシステムからの化石燃料脱却」に向けて、大きな一歩を踏み出したことを世界に示しました。
さらに、2025年2月までにすべての国が国連に提出することが求められている2035年までの温室効果ガス削減目標について、スターマー首相は3か月前倒しでCOP29の首脳級会合で発表する道を選びました。その目標は、2035年までに1990年比で少なくとも81%削減するという、極めて野心的な内容です。
首相は「英国は世界の気候リーダーとなる」と力強く宣言し、気候変動対策における英国のリーダーシップを明確に示しました。この演説は、COP29の主な目的である「2035年の野心的な削減目標提出に向けた機運の醸成」において重要な役割を果たし、今後本格化する交渉の方向性を大きく牽引することが期待されています。
また、24年11月17日〜19日で実施されたG20(金融・世界経済に関する首脳会合)リオデジャネイロ・サミットで、ブラジルはGHG排出量を実質ゼロにするネットゼロを同国が当初目標より10年早い2050年までに達成できるという見通しを示した。
このほかにも複数の国でNDCの目標更新に関しての発言ありましたが、GHG排出量が多い先進国を中心に世界全体が野心的な目標の更新に向けて動こうという雰囲気はCOP29の会場では感じられませんでした。
(b) 資金問題
COP29で合意された新たな資金支援目標は、途上国側の厳しい批判が示すように、必要とされる資金規模には明らかに不足していると言えます。
しかし、先進国が実現困難な巨額の資金支援目標を掲げても、実行されず、問題の解決を先送りするだけの可能性があります。
先進国の懐事情として、外国への大規模な資金支援が国内世論の理解を得るのが難しく、自国民から批判を受けるような状況では、途上国への支援そのものが実施困難になる可能性も否定できません。
先進国の公的資金に依存する支援には限界があるため、今後は資金拠出国の多様化や民間資金の積極的な活用など、資金支援の方法を大きく見直す必要があることもCOP29では強調されました。
今回の合意文書では、2035年までに少なくとも年間1.3兆ドルの資金を途上国の気候行動支援に充てるという目標が掲げられ、「バクーからベレンまでの1.3兆ドルへのロードマップ」が設立されました。具体的には、資金ニーズの明確化、多様な資金支援手法の開発、幅広い資金拠出者の確保、適切な資金提供者とのマッチングなど、実効性のある施策の推進を目指します。
さらに、新興国が抱える課題は資金不足に限らず、法制度、技術、人材育成など多岐にわたります。したがって、単に資金を提供するだけでは気候変動問題を解決することは難しい状況です。資金支援の拡充を図ると同時に、法制度の整備、必要な技術の開発・導入、人材育成や能力向上を支援する取り組みも強化する必要があります。
特に民間資金や技術の活用を進めるには、途上国向けの適切な金融スキームを構築することが重要です。さらに、民間企業が「ビジネス」として参入できる環境を整えるために、契約や権利に関する基本的な法制度の整備、透明性の高い行政運営や政策策定、会計監査や情報開示などの企業統治の透明性向上を進めることが求められます。
COP29で合意された新たな資金支援目標は、途上国側の厳しい批判が示すように、必要とされる資金規模には明らかに不足していると言えます。
しかし、先進国が実現困難な巨額の資金支援目標を掲げても、実行されず、問題の解決を先送りするだけの可能性があります。先進国の懐事情として、外国への大規模な資金支援が国内世論の理解を得るのが難しく、自国民から批判を受けるような状況では、途上国への支援そのものが実施困難になる可能性も否定できません。
先進国の公的資金に依存する支援には限界があるため、今後は資金拠出国の多様化や民間資金の積極的な活用など、資金支援の方法を大きく見直す必要があることもCOP29では強調されました。
今回の合意文書では、2035年までに少なくとも年間1.3兆ドルの資金を途上国の気候行動支援に充てるという目標が掲げられ、「バクーからベレンまでの1.3兆ドルへのロードマップ」が設立されました。具体的には、資金ニーズの明確化、多様な資金支援手法の開発、幅広い資金拠出者の確保、適切な資金提供者とのマッチングなど、実効性のある施策の推進を目指します。
さらに、新興国が抱える課題は資金不足に限らず、法制度、技術、人材育成など多岐にわたります。したがって、単に資金を提供するだけでは気候変動問題を解決することは難しい状況です。資金支援の拡充を図ると同時に、法制度の整備、必要な技術の開発・導入、人材育成や能力向上を支援する取り組みも強化する必要があります。特に民間資金や技術の活用を進めるには、途上国向けの適切な金融スキームを構築することが重要です。
さらに、民間企業が「ビジネス」として参入できる環境を整えるために、契約や権利に関する基本的な法制度の整備、透明性の高い行政運営や政策策定、会計監査や情報開示などの企業統治の透明性向上を進めることが求められます。
(c) 短期目標と長期戦略の矛盾
短期目標と長期戦略の矛盾は、気候変動対策における信頼性や実効性を損なう要因となっています。この矛盾を解消するためには、長期的なビジョンを維持しつつ、短期的な行動を着実に積み重ねていく必要があります。COP29でも気候活動を推進するNPOやNGOから矛盾点に関する指摘が相次ぎました。主な矛盾点と理由を説明します。
・短期的な排出削減目標と化石燃料利用の現実
多くの国々が短期的な経済成長やエネルギー安全保障を優先し、化石燃料の利用を継続する一方で、2035年や2050年までの長期的な脱炭素目標を掲げています。特にエネルギー危機や地政学的な影響により、短期的には石炭やガスの利用が増加している国もあります。
・気候資金の短期拠出と長期的な必要額
短期的な資金拠出が限定的である一方、2035年や2050年に向けた長期的な目標を達成するには、はるかに大規模な資金が必要です。現在の資金提供のスピードでは、途上国が必要とする気候対策の準備や実施に追いつけません。
・再生可能エネルギーへの移行とインフラ整備のタイムラグ
再生可能エネルギーへの移行が長期的な目標として掲げられている一方で、そのために必要なインフラ整備や技術開発が短期的に進んでいません。特に発展途上国では、エネルギー転換に必要な資金や技術が不足しており、長期目標との間に大きなギャップが生じています。
・ 政治的リーダーシップと実行力の乖離
長期目標は国際的な会議で合意されるものの、各国の政治的リーダーシップや政策実行力が短期的な利益や国内政治に縛られ、具体的な行動に結びつかないケースが多いです。
・技術開発とその普及の速度
長期的な目標達成には、革新的な技術の開発と普及が必要ですが、その進展は短期的には十分に速くありません。また、カーボンキャプチャー技術(CCUS等)やグリーン水素には注目が集まりますが、新技術の普及にはコスト削減とインフラ整備が伴うため、これが短期的な取り組みと食い違う場合があります。
4. ビジネスと社会への影響
(a) グローバル経済への影響
気候変動対策は新たな経済競争を生み出しています。例えば、EU域外から輸入される製品に対して、その生産過程で排出された炭素量に応じたコストを課す制度である欧州国境炭素税(CBAM:Carbon Border Adjustment Mechanism)の影響を懸念する声を多く聞きました。CBAMは、2023年10月から、セメント、肥料、電気、鉄鋼、水素、アルミニウムを対象に暫定適用が開始されています。
2026年以降に本格導入され、排出量に応じた実際の課税が始まる予定です。また、オーストラリアでも環境規制の緩い国からの輸入品に課税するCBAM導入の検討が進んでいます。脱炭素化社会の実現を目指したい市場では、同市場の国際競争力を維持することも目的に、CBAMの導入がさらに推進されるかもしれません。脱炭素化は、国の経済力や企業の競争力に大きな影響を与え、グローバル経済における勝ちパターンが変わる可能性があります。
(b) 地域社会と気候変動の適応
気候変動による悪影響が既に発生しているという認識が世界で広まっています。GHG排出量の削減を段階的に行えたとしても、気候を含めた地球環境の悪化は当分継続してしまいます。
そのため、実際の物理的な被害を回避もしくは軽減する、気候変動への適応の重要性が増しています。地域社会が気候変動に適応するには、いくつかの課題があります。
まず、気候変動の影響は地域ごとに異なるため、それぞれの特性に応じた適応策が必要です。たとえば、沿岸地域では海面上昇や台風被害、農村地域では干ばつや洪水が主な懸念となりますが、これに対応する資金や技術が不足している地域も少なくありません。
さらに、適応策の計画や実施において、地域住民の参加が十分に得られない場合、適応策が現実に即したものにならないリスクがあります。加えて、自治体レベルでは予算や人材の制約があり、必要なインフラ整備や自然災害対策が進みにくい状況もあります。
これらの課題を克服するには、政府や国際機関による資金や技術支援、地域コミュニティとの連携強化、教育や情報共有による住民の理解促進が鍵となります。
(c) 日本の企業や社会へのインパクト
COPでの合意事項は、日本の企業や社会に多大な影響を与える可能性があります。まず、2035年までの温室効果ガス削減目標の具体化により、企業は脱炭素化を加速し、省エネ技術や再生可能エネルギーの導入が求められます。
また、炭素国境税や炭素市場整備により、輸出産業への影響が懸念されるため、低炭素技術の開発やカーボンフットプリント削減の重要性が増します。気候資金の拡充は金融機関に新たな投資機会を提供し、ESG投資の強化が期待されます。社会全体では、省資源ライフスタイルへの移行が求められ、政府や企業による気候教育などの啓発活動が鍵となります。
5. 今後の展望と提言
(a) COP30への課題と期待
COP30はブラジルの北部パラ州の州都でアマゾン地域にあるベレンで2025年11月10日〜22日に開催を予定しています。課題として、まず途上国への気候資金の不足が挙げられます。COP29で設定された年間3,000億ドルの目標は依然として途上国の需要に届いておらず、より実効性のある資金拠出の枠組みが必要です。また、短期的なエネルギー安全保障と長期的な脱炭素目標との矛盾も克服すべき重要な課題です。
一方、期待されるのは、各国が2035年までの温室効果ガス削減目標を明確にし、実行計画を共有することです。さらに、再生可能エネルギーやグリーン技術の普及、炭素市場の国際的なルール整備が進むことで、グローバルな気候行動が加速することが期待されます。
COP30の議長国であるブラジルは、熱帯雨林を活用したNbS(Nature-based Solutions、ネイチャーベースソリューション、自然を活用した解決策)に対して気候資金を流入させていきたいという強い想いがあります。アマゾンは「地球の肺」と呼ばれ、地球環境において不可欠な役割を果たしています。光合成により地球の酸素の約20%を供給し、膨大な二酸化炭素を吸収して気候変動を抑制します。
また、蒸発散を通じて地球規模の水循環を調節し、気候安定に寄与しています。さらに、多様な動植物が生息する生物多様性の宝庫として、生態系のバランス維持にも重要です。
しかし、森林破壊が進むとこれらの機能が損なわれ、地球全体の環境に深刻な影響を及ぼします。NbSを基盤としたボランタリークレジット等は厳格なルールに移行している最中です。COP30でNbSを活用した削減・吸収系の価値見直しの動きにも注目です。
(b)記者からの提言
気候対策交渉は、合意・ルール形成のフェーズから本格的な実行フェーズに移行している中、国レベルの交渉が非常に難しくなっていると感じます。COPの気候対策交渉が難航する理由は、多様な国益や課題の違いにあります。発展途上国は歴史的排出の責任を問う一方、先進国は新興国も含めた行動を求めています。
また、短期的な経済成長と長期的な脱炭素目標の矛盾や、技術・資金格差も交渉を複雑化させています。気候資金不足や「共通だが差異ある責任」の解釈を巡る意見の対立も主要な課題です。
さらに、国内の政治や世論の影響、グローバルリーダーシップの不足が国際合意の妨げとなっています。この状況を改善するには、公平な資金・技術支援や強力な国際協調が求められます。
そして、人類が抱えている地球環境に関する課題はエネルギー問題に起因した気候変動だけではありません。COP29では、「The triple planetary crisis(3つの地球的危機)」に触れられる場面も多くありました。3つの地球的危機とは、気候変動、自然・生物多様性喪失、環境汚染を指します。
これらは人間の安全保障とも密接に関連しており、地球の健全性と人類の幸福を脅かすとされています。これら3つの環境危機は相互に関連しており、統合的な対策が必要です。政府、企業、個人がそれぞれ責任を果たし、持続可能な社会の構築に向けた行動を起こすことが急務です。特に、教育や啓発活動を通じて環境意識を高め、次世代に負の遺産を残さない努力が求められます。
国レベルの交渉が行き詰まりを見せる中、希望は民間企業を中心とする非国家セクターだと考えます。特に先進国を拠点とする民間企業のサステナビリティリテラシーがとても重要です。先進国は多くの原材料等を途上国から購入しており、国境を跨いだバリューチェーンを保有しているケースが多いです。
これらの民間企業は自社内だけでなく、バリューチェーンで発生している環境的・社会的課題を認識する動きが加速しています。バリューチェーンで発生している課題を認識し、企業としての責任範囲を拡大出来るかどうか。責任を感じない限り、行動は起きません。
そして国の役割は、企業のバリューチェーンの責任を果たすための経済的な仕組みを導入することです。キーワードは、「民間企業」「サステナビリティリテラシー向上」「バリューチェーン」「企業責任の拡大」の4点であり、これによって世界全体が脱炭素化社会に向けて推進するための炭素市場が確立し、スケールするかが決まります。
今は民間企業が自主的な取り組みで努力をし続けています。この自主的な取り組みをしっかりと後押しする仕組みを先進国が率先して、経済システムに導入できるかどうかで2100年の地球環境がどうなっているかが決まります。
COP29の開会のあいさつに登壇した国連のグテーレス事務総長は、世界の首脳に向けて、パリ協定がめざす1.5度目標を実現するため、COP29の主要議題に合意するよう強く求めました。
特に気候資金について、「世界が資金を払わなければ、人類がその代償を払うことになる」とし、「資金支援は慈善ではなく、投資であり、気候変動対策は選択肢ではなく、義務だ」と述べ、あらためて新しい気候資金の目標に合意するよう訴えました。COP29で前進した議題はあったものの、人類が直面している気候危機の解決の道筋が見えたとは言えない状況です。
また、気候変動交渉とは別の枠組みで進んでいる生物多様性(CBT COP)やプラスチック汚染の条約交渉(プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書に関わる交渉)の大きな課題の1つは「資金」であることが明確になっています。
無限大にはない資金を人類の持続化可能な成長と開発のためにどのように活用していくのか。気候変動対策に関することだけでなく、プラネタリーバウンダリーで指摘されている3つの地球的危機に対して同時にアプローチができる条約交渉の場へとCOPは変化していく必要があるのかもしれません。