プラスチック削減の未来|日本とドバイの対比から見る意識変革
最近は日本国内でも、プラスチック削減に向けた取り組みが積極的に行われています。政府によるレジ袋の有料化や2022年4月から施行されたプラスチック新法によって、各自治体や企業でもその取り組みが広がりを見せているように感じます。しかし2014年時点で、日本のプラスチック廃棄量は、主な地域・国の中で世界2位となっています。
新型コロナウイルスの流行により、プラスチックによる環境汚染は深刻化しています。各自治体や企業の取り組みだけでなく、消費者の意識も変えていく必要があります。今回は、ドバイで感じた脱プラスチックに向けた発見についてもご紹介します。
プラスチックごみの問題とは
そもそもなぜ、これだけプラスチックが問題となっているのでしょうか?
プラスチックは、金属と比較すると軽量かつ錆びることがありません。また、加工しやすく大量生産が可能なため、生産される量は年々増加しています。しかし、大量生産を行った結果、世界各地から海に流れ込むプラスチックごみの量は年間800万トンと言われており、海洋汚染が深刻化しています。
プラスチックには、大きいものから小さいものまで、さまざまなサイズのものがあります。大きいものは、運航する船舶に絡まることでより多くのエネルギーを必要とし、経済的な損出に繋がったり、誤飲によって生き物が命を落としてしまうケースを引き起こしています。
一方、海に流れ着いたプラスチックが、波や紫外線の影響で劣化することで5mm以下の小さな粒子になったものをマイクロプラスチックと言います。このマイクロプラスチックはどんなに小さくなっても自然分解されることはありません。
このマイクロプラスチックは、地域によっては水道水や食塩、そして私たち人間の血液の中からも既に発見されています。自然に排出されるため、健康に問題はないという研究者がいます。しかし、プラスチックは石油から作られており、油は化学物質との親和性が高いです。これまで海に流れ出た有害物質が、マイクロプラスチックに付着している可能性が高く、人体への影響が懸念されています。ある研究によると、私たちは1週間で約クレジットカード一枚分のプラスチックを食べているとまで言われています。
海洋プラスチック問題についてより詳しく知りたい方はこちら▼
人類共通の問題である
国内でも、個人に対してマイボトル持参の推進や、レジ袋の削減を訴えるスーパーマーケットやコンビニエンスストアが増えました。有名コーヒーチェーンでは、プラスチック削減のため、紙ストローへ切り替えるだけでなく、蓋を無くしたり、店舗によっては繰り返し使えるタンブラーの活用などを行っています。
2022年4月から施行されたプラスチック新法により、コンビニエンスストアではプラスチックから木製のカトラリーを使用するなど、プラスチック削減への動きが加速しています。小さな変化は将来的な大きな変化を作り出すきっかけとなります。
その一方で、これは世界共通の問題です。企業や業界だけが変化するのでなく、私たち一人一人の意識を変えていく、あるいは自然と削減に繋がるシステム作りも重要です。
ドバイで発見した日本との違い
2022年3月にドバイへ滞在した際に感じた、日本との違いについてご紹介します。
ドバイも日本と同様、多くのプラスチックを消費する地域です。基本的に大量消費・大量廃棄型の都市モデルです。しかし、中東は欧州の裏庭ということもあり、欧州からの影響やトレンドを受けやすい地域です。何気なく購入したドリンクにサトウキビ由来のストローが使用されているなど、プラスチック削減に対する意識を感じることができました。
このように、社会に浸透させていくためには、必要なことが2つあると思いました。1つは、「知る機会があること」です。日本の場合、従来のプラスチック製のストローであれば、100本で大体200円以下です。一方、サトウキビ由来のものは2,000円弱と決して安くはありません。しかし、海洋プラスチック問題についてきちんと知ることで、提供する側もできることから取り組もうと意識が変わるきっかけになります。
2つ目は、「選択肢があること」です。問題について理解し、できることから取り組みたいと思っても、身近なところに選択肢がなければ、実践することが出来ません。今回のストローを例にとると、ドバイのスーパーマーケットへ行った際、業務サイズで袋詰めされたサトウキビ由来のストローを発見しました。身近に選択肢があるからこそ、取り入れられるのだと納得しました。
最後に
スーパーマーケットがサステナブルな商品を陳列しても、消費者の意識が低ければ商品は売れ残ってしまいます。だからこそ、「知ること」と「選択肢があること」は同時に進めていく必要があります。
また、東京や大阪などの大都市圏では選択肢がありますが、地方ではなかなか目にする機会がありません。まずは私たち消費者が問題についてきちんと理解し、自治体に対して声を上げることで、日本各地でプラスチック削減に対する取り組みが加速するのではないでしょうか。