仙台で観光レジリエンスサミット開催。観光回復に向けて「仙台声明」を採択
2024年11月9日(土)から11日(月)にかけて、観光庁とUN Tourism(世界観光機関)が連携し、仙台市で「観光レジリエンスサミット」が開催されました[1]。
日本のように予測不能な災害の多い国では、観光レジリエンスの考え方は必要不可欠であり、レジリエンスな観光に対応できるまちづくりが求められています。
本記事では、観光レジリエンスについて解説するとともに、観光レジリエンスサミットの概要についても紹介します。
観光レジリエンスとは
「レジリエンス(resilience)」とは、「(困難・苦境からの)回復力」や「弾性(しなやかさ)」を意味する言葉です。観光の分野では、「観光レジリエンス」として「自然災害や危機に対面した時、コミュニティや地域が、状況に耐えると同時に適応し、復活する能力」を指します。
日本では東日本大震災以降に、復興に関する研究で注目されるようになった考え方です。
観光レジリエンスの重要性
地球温暖化による環境の変化が著しい近年において、危機に際してもすばやく回復していける観光レジリエンスは非常に重要です。
地球温暖化は2024年時点でも止まることなく進行しています。
- 世界平均気温:過去100年で0.74℃上昇
- 世界平均海面水位:過去100年で17cm上昇
近年になるほど、地球温暖化の傾向が見て取れます[2]。
地球温暖化による気候変動は、極端な天候や自然災害の頻発化を招き、観光地に直接的な影響を及ぼします。観光地のインフラ整備や防災計画の強化といった、レジリエンスなまちづくりが必要です。
国連総会においても、観光レジリエンスは重要視されており、その重要性のあらわれとして2027年を「持続可能なレジリエンス国際年」とすることが採択されました。
観光レジリエンスは、世界中のどの国にとっても最重要テーマといえます。
観光レジリエンスサミットが仙台で開催
観光レジリエンスサミットは、2024年11月9日(土)〜11日(月)に、仙台市で開催されました。
サミットは三日間開催され、約100人が参加、シンポジウムやエクスカーションを実施しました[3]。2日目に実施された閣僚級会合では、観光レジリエンス向上に向けて、議論が行われました。
サミットでは「仙台声明」が採択されました。「仙台声明」とは、危機や自然災害による影響の予防と最小化、回復過程の観点から、観光レジリエンスの向上に向けた今後の取組の方向性を取りまとめたものです。
観光レジリエンスの分野は、自然災害が多い日本が、世界でリーダーシップをとっていける分野です。日本が観光レジリエンスの先進国となるべく、取り組みを積極的にすすめていくことが重要です。
なぜ仙台で開催されたのか
仙台市は、東日本大震災からの復興に取り組んでいます。2015年には第3回国連防災世界会議が開催され、「仙台防災枠組2015-2030」が採択された土地です。
アジア太平洋部ハリー・ファン氏が、今回の会議が仙台で開催されることの意義を強調し、
東日本大震災からの観光の復興が実践された仙台の取り組みは、世界が学ぶべきである
との考えを示しています[4]。
観光レジリエンスの課題と未来
観光レジリエンス強化への取り組みは、地域にとって未来への投資となります。今後はAIやデータを活用することで、コミュニティの取り組み状況のリアルタイムでの可視化も実現されるでしょう。
危機発生前には、以下のような、危機や自然災害による影響の予防と最小化のための取り組みが課題です[5]。
- リスクの事前周知
- 危機発生時における迅速かつ正確な情報収集と発信
- 風評被害対策の実施
- シミュレーションなどを通じた個人や組織の対応力の向上
- 関係者の役割分担の明確化、連携体制の構築
リスクの事前周知や情報の収集・発信には、携帯性と即時性の高いスマホで完結できることが重要です。個人や組織の対応力の向上に必要なシミュレーションや訓練には、地域の協力も必要になるでしょう。
- 観光戦略へ、危機や自然災害から得た教訓を活用
- 観光の継続・再開のための官民連携の強化
- 需要の回復に伴う地域の将来像に沿った新たな観光商品の開発
危機発生後には、以上のような取り組みを並行して行い、影響の吸収と回復過程に努める必要があります。
これからの観光レジリエンス
本記事では、観光レジリエンスについて、仙台市で開催された観光レジリエンスサミットとともに解説しました。
観光レジリエンスは、地球温暖化が進行する現代において、非常に重要な考え方です。観光レジリエンスサミットで採択された「仙台声明」では、危機発生前と危機発生後での実行策が整理されています。
これからの観光レジリエンスは、自然災害が多く復興の経験もある日本がリーダーシップをとって、「仙台声明」の準拠などを通じて、世界を先導していくことが重要になるでしょう。
参照
[1]「観光レジリエンスサミット」を東北・仙台にて開催 ~観光レジリエンスの向上に向けて「仙台声明」を採択~ | 2024年 | 報道発表 | 観光庁
[2] 1. 地球規模の温暖化の影響 現在生じている影響/将来予測される影響 2. 日本への影響 現 3
[3]「観光レジリエンスサミット」の開催|仙台市
[4]日本と国連の連携で「観光レジリエンス(回復力)サミット」初開催、「仙台声明」を採択、自然災害や危機発生時の影響防止・最小化に向けて
[5]共同声明「仙台声明」の概要
観光分野のレジリエンス(復活力)とは? その意味と仕組みを考えてみた【コラム】