京都市、2026年3月から宿泊税を引き上げる方針を発表
京都市が2026年3月から宿泊税を引き上げる方針を発表しました。現行では宿泊客1人あたり200~1000円が、改正案では最高額は10,000円になります。
とくに高額な宿泊料金を払う訪問客にとっては最大10倍もの「増税案」です。京都市では見込まれる増収額をインフラ整備や災害対策の財源にあてるとしています。
2024年1~11月に日本を訪れた海外からの旅行者数は史上最高の3,338万人を記録しました。この数字は前年同期比では30.6%増であり、コロナ禍以前の2019年に過去最高を記録した3,188万人をも上回ります。京都はそのなかでも最人気の旅行先です。
その反面、市内の交通渋滞や大量のゴミによる景観破壊など、オーバーツーリズムへの不満は市民と観光客の双方から高まっています。宿泊税の増額がその解決につながるのであればまさにウィンウィンなのですが、その実効性を危ぶむ声も多く上がっています。
South China Morning Postの記事では、京都での宿泊を避けて大坂など近郊の都市から日帰りで京都を訪れる観光客が増えるだろうと予想しています。もしそうなれば、京都市は宿泊収入が減り、しかも交通機関の混雑はかえって悪化するという事態も考えらます。
オーバーツーリズム対策の現状
京都と同様に歴史的遺産で知られるイタリアのベニス、スペインのバルセロナ、オランダのアムステルダムなど、観光に人気がある都市が宿泊者に税金を課す例は世界的に見れば珍しいことではありません。
しかし、こうした都市でオーバーツーリズムの状況が改善されたという話は残念ながらあまり聞きません。それどころか、「観光客よ、家に帰れ。あなたたちは歓迎されていない」などといったプラカードを掲げた市民のデモが話題になっているくらいです。
京都市の改正案でもまだ安すぎるという見方もあります。1泊あたり100,000円以上の宿泊料金に対して10,000円の宿泊税が大きな注目を集めていますが、その課税率を計算すると最大でも10%です。
Consumer Reportによると、昨年は大谷翔平選手の活躍もあって多くの日本人が訪れたカリフォルニア州ロサンゼルスの宿泊税率は15.5%。米国内にある他の多くの都市も10%を超える宿泊税を課しています。
日本政府は、2030年に日本を訪れる外国人旅行者を昨年の2倍近くとなる6,000万人に増やす目標を掲げています。その反面、京都や富士山などの少ない観光地に訪問客が集中する現状への抜本的な対策が十分に練られているとは言い難いようです。
オーバーツーリズムの問題は被害に直面する地域だけではなく、国全体で取り組むべきではないでしょうか。