FSC認証マークとは?森林資源との関係から認証適用範囲や取得方法まで紹介

気候変動対策において、特に森林の保全や活用は重要な課題となっています。
世界の陸地の3分の1を占める森林は、重要な炭酸ガス吸収源ですが、アマゾンやスマトラ島などの世界屈指の生物多様性の高さ誇る熱帯雨林が近年加速度的に減少しています。乱伐だけでなく、焼き畑農業などによる無計画な農地への転用によっても、森林資源の減少がもたらされています。
脱炭素領域で重要な森林管理に対応する仕組みが、欧州などで開発されており、国内でも特に、FSC認証として注目されています。
FSC認証制度やFSC認証マークとは、どのような指標なのでしょうか。
本記事では、FSC認証制度の基本について紹介するとともに、FSC認証マークの取得や適用範囲など、FSC認証マークについて詳しく解説します。
FSC認証と森林資源利用の関係

FSC認証とは、適切な森林管理がなされているかを検証する国際的な認証制度のひとつです。森林認証制度として創設され、適切な森林経営や持続可能な森林経営をしている森林を認証しています。
森林による炭酸ガス吸収は、光合成により脱炭素が積極的に実行される、いわば、天然のめぐみともいえる植物が生み出すプロセスです。化学的にも炭酸ガス吸収は実施可能ですが、植物などを使用するバイオ資源の利用は従来から期待されている活動です。
CO2の増加は、気候変動に直接的に影響を及ぼしますが、森林の健全なリサイクルを実践することにより、最近の極端な高温による猛暑や熱波、また局所的な大雨被害や洪水などを低減する一助ともなります。
ある国内大手製紙会社の例では、国内・海外で57万haの森林を生産林や環境保全林として管理しています。
この森林群全体で1年間に約1億3500万トンのCO2を固定していることになり、この量は約1500万人の日本人が1年間に排出するCO2量に匹敵しています。
森林活動の管理方法として期待されているのが、FSC認証などの認証制度です。特に、適切な森林管理が行われているかどうか、さらには認証を受けた森林から得られる木材やその他の資源で製品がつくられているかどうかなど、森林の保全と活用のプロセス全体に関連する制度ともいえます。
森林管理では、生物の多様性、水資源・土壌等への環境影響のほかに、社会的・経済的側面の森林機能の維持が考慮されています。
国内製紙会社でも、脱炭素などがまったく注目されていなかった時代から、木材を使うものは、木を植える義務があるといった方針を実践しているメーカーもあります。
森林のリサイクルにより、炭酸ガスの固定量を維持させることも可能となります。このように持続可能な森林経営は、気候変動対策にも有効な手段なのです。
世界の森林認証制度とFSC認証
国際的な森林認証制度としては、国際的な森林管理協議会(FSC)が管理する「FSC認証」とPEFC森林認証プログラムが管理する「PEFC認証」の2つが存在しています。
認証名 | FSC認証 | PEFC認証 |
---|---|---|
機関 | WWF(世界自然保護基金)中心 | ヨーロッパ11カ国の認証組織 |
森林面積 | 約2億3,008万ha | 約3億2,846万ha |
CoC認証取得件数 | 5万件以上(137ヶ国) | 1万2千件以上(77ヶ国) |
FSC認証とは、Forest Stewardship Councilの略称ですが、「WWF(世界自然保護基金)」を中心として1993年に発足しています。世界的規模で森林認証を実施しており、独立した認証機関で認証審査が実施されます。
国別、地域別規準の設定が可能となっており、既に82ヶ国で認証された森林面積は約2億3,008万haとなっています。さらに認証マークのひとつである、CoC認証取得件数は137ヶ国で5万件以上に達しています。
次にPEFC認証は、FSC認証より遅れて、ヨーロッパ11カ国の認証組織がPan European Forest Certification を設立し1999年に発足しました。欧州起源での、汎欧州プロセスによる規準・指標に基づき、各国独自の認証制度を承認する仕組みとなっています。
2025年現在、44カ国の認証制度が相互承認済みであり、欧州以外でも米国のSFI、カナダのCSAなども加盟しています。認証された森林面積合計は、約3億2,846万haに達しており、CoC認証取得件数も77ヶ国で1万2千件以上となっています。
なお、我が国独自の森林認証制度も設定されています。一般社団法人 緑の循環認証会議(SGEC/PEFCーJ)が管理する「SGEC認証」があり、SGEC認証は平成28年6月にPEFC認証と相互承認されています。
FSC認証マークの適用範囲と種類
各国で利用されているFSC認証ですが、世界の認証取得の件数としては一番多く、広く認められた制度です。
FSC認証を取得すると、利用する資材などにFSC認証マークをつけることができます。
世界中で利用されているFSC認証マークですが、さらにFM認証とCoC認証のふたつに区分されています。
まず、適切な森林管理が行われていることを認証する「森林管理の認証(FM認証)」があります。
例えば、パルプメーカーなどが保有している自社林などでも、すでにFM認証を受けている例があります。なおFM認証では、10の原則と70の基準といわれる厳格な規則で、森林が管理されています。(下図を参照)

たとえば原則1の法律遵守においては、「法律や国際的なルールを守っていること」が謳われており、森林や環境保護については、原則6~10の項目で下記のようにルール化されています。
原則6:豊かな森林の自然環境を守ること
原則7:いろいろな意見を聞きながら森の管理を計画すること
原則8:森の管理の状態を定期的にチェックすること
原則9:環境や文化など、その森が持つ大切な価値を守ること
原則10:環境に配慮した管理活動をきちんと実施していること
このようにFSCの母体ともなっている世界自然保護基金WWFの意向が、広く反映されているといえます。
また、森林管理の認証を受けた森林からの木材や、パルプなどの木材製品であることを認証する「加工・流通過程の管理の認証(CoC認証)」があります。
こちらは、自社林などを保有する企業だけではなく、森林から生産されるあらゆる資材が対象となるもので、必然的に認証マークを取得した製品の数が多くなります。国内の中小企業でも、CoC認証マークをつけた紙製品などがすでに販売されています。
例えば、伐採されたFM認証材を流通や紙製品加工などの過程で適切に管理していることが求められます。
なお両方の認証を取得した事業者による製品は、トータルでもFSC認証品と認められることとなっています。

FSC認証マークの種類
FSC認証製品に使用され、消費者が目にするFSC認証マークには、以下の3種類があります。
□ FSC100%
FSC認証林からの原料を100%使用している製品です。
□ FSC ミックス
FSC認証林からの材料に加え、FSCが認めている材料を複数組み合わせている製品です。ただし認証材の割合が70%以下の場合は、ラベルの使用は認められません。

□ FSCリサイクル
100%リサイクルされた原材料から作られた製品です。原材料の70%以上がリサイクルされている場合につけられます。リサイクル原材料を利用することについても、FSCはラベルの使用を認めています。

FSC認証ラベルの見方
次に、実際に消費者が目にするFSC認証ラベルの見方についても説明します。例えば、FSC認証製品用のFSCラベルには、認証製品に関するいろいろな情報が記載されています。

□ ラベルタイトル/ラベルテキスト/製品タイプ
「FSCミックス」「FSCリサイクル」などの製品について、原材料の種類によって、使用する製品タイプ名などを記載します。
□ メビウスループマーク
「FSCリサイクル」製品について、リサイクルが可能でリサイクル材料を使用していることを示します。また数字はリサイクル原料の割合を指します。
□ ライセンスコード
FSCの次に記載された数字は、認証取得者ごとの固有の番号(ライセンスコード)です。FSC本部とライセンス契約書を交わすと使用できるもので、「認証取得者の検索」で番号を入力すると、認証取得名や認証取得日などの情報を閲覧することもできます。
国内で販売されているFSC認証マークのついた紙製品の例としては、下図のような例があります。
ここではFSC認証のある「FSCミックス」の製品であることがわかります。FSC認証林から造られたパルプとFSCが認めている材料を、複数組み合わせている製品ということです。

FSC認証マークの取得方法
FSC認証の取得方法は、第三者機関の審査による国際認証です。FSC認証の公正性は、認証自体を直接FSCがおこなうのではなく、第三者機関により設定される仕組みによって担保されています。
FSCが策定する認証基準にもとづいて、最初の基準審査だけでなく、翌年以降の年次監査や5年毎の更新審査を実施します。
FSC認証では、世界共通の基準の下に、各国の状況に合わせて作られたより細かい指標が策定され、審査ですべての基準について大きな問題がないと確認された場合に認証が与えられます。
FSC認証制度運営と基準づくりを担うFSC本体と、審査・監査を行う認証機関を分けることにより、公正・公平な制度として認識されているのです。

まとめ
FSC認証制度の基本から紹介し、FSC認証マークの取得や利用など、FSC認証マークについて幅広く解説しました。
気候変動対策において、特に森林の保全や活用は重要な課題となっていますが、このような場面で役立つのが、FSC認証ともいえます。
世界自然保護機関WWFが、欧州などの機関と一緒にはじめた制度ですが、すでに国内でも製紙メーカーなどを中心に活用がすすんでいます。

