マレーシアの新しい観光戦略「サステナビリティ」
2025年1月24日、ASEAN Tourism Forum 2025において、マレーシア政府観光局が新たな観光キャンペーン「Visit Malaysia 2026」(VM2026)を発表しました。このキャンペーンは、観光産業を経済成長の柱としながら、文化的価値と環境保護を両立させる持続可能な観光戦略を展開するものとして注目を集めています。
VM2026のテーマは、「豊富な文化」と「持続可能な観光地」としてのブランド強化です。2026年までに、国際観光客5560万人の誘致と1471億リンギット(約4兆4100億円*2025/01/31時点)の観光収入を達成するという目標を掲げています。これを実現するため、文化的体験やエコツーリズムの充実を軸に、観光市場ごとに特化した戦略を展開します。
欧米市場には、マレーシアの熱帯雨林や国立公園を中心としたエコツーリズムが提案されています。ボルネオ島のジャングル探検や、キナバル山での自然散策、マラッカやジョージタウンなど、ユネスコ世界遺産に登録された歴史的エリアを活用した文化ツアーなどです。
一方、インド市場には、豪華なビーチリゾートや伝統文化を背景とした結婚式ロケーションが訴求され、特に高額消費層をターゲットとしたマーケティングが展開されています。
近隣国であるシンガポールやタイには、車でのロードトリップや越境旅行を通じて、短期滞在型観光を推進する計画があります。また、国境をまたいだツアーが提案され、地域全体の観光ネットワークを強化しています。
持続可能性の強化
VM2026のもう一つの重要な柱は、持続可能性の強化です。地域経済の活性化を図るため、地元住民との協力を重視しています。
具体的には、手工芸品や特産品のプロモーションを通じて、観光客に地域文化を直接体験してもらう取り組みが行われています。
さらに、環境保護に向けた具体的な行動として、観光地でのプラスチック廃棄物削減キャンペーンを実施。観光インフラ整備では、電気バスの導入や、宿泊施設での再生可能エネルギーの利用推進が進められています。
また、VM2026では、観光客が持続可能な観光活動に参加することを奨励しており、マングローブの植林活動に参加できるエコプログラムや、野生動物保護プロジェクトを見学できるツアーなど、観光と環境保護を結びつけた取り組みが強化されています。これにより、観光客が自然と地域社会への配慮を体感しながら旅行を楽しむことが可能となります。
キャンペーンでは「#NatureToNature」のハッシュタグを活用し、若年層やSNSを多用する世代に向けて、TikTokやInstagramなどのプラットフォームから、エコツーリズムや文化体験の魅力をアピールしています。
さらに、リピーター観光客の獲得もVM2026の重要な要素です。観光客一人ひとりが自分に合った旅行を計画できるよう、カスタマイズ可能なツアープランや多様なアクティビティを提供します。これにより、滞在期間を延ばすだけでなく、再訪を促進する仕組みを整えています。
マレーシア政府観光局のダトゥク・マノハラン・ペリアサミ総局長は、「VM2026は単なる観光キャンペーンではありません。マレーシアの文化、自然、そして現代性のユニークな融合を世界に発信する包括的な取り組みです。このキャンペーンを通じて、マレーシアは世界的な観光ハブとしての地位を確立するでしょう」と述べました。
VM2026は、観光産業を通じて経済的な効果を生むだけでなく、地域社会や環境に配慮した持続可能なモデルケースとしても注目されています。豊かな文化遺産と自然資源を活用し、観光地としての魅力をさらに高めるこのキャンペーンは、未来志向の観光戦略として世界的に注目される存在となるでしょう。