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【後編】実は知らないだけかも?日本で起きている人権侵害について

【後編】実は知らないだけかも?日本で起きている人権侵害について - 障害者・外国人・LGBTQ+

日本国内でも、私たちが知らないだけでさまざまな人権侵害が起こっています。

アメリカの国務省により発表された「2020年人身取引報告書」(2020 Country Reports on Human Rights Practices: Japan)です。

今回の後編では、この報告書の第6部「差別、社会的虐待、人身取引」に関する部分の障害者、国籍や人種におけるマイノリティー、アイヌなどの先住民族、LGBTQ+の人権、そして第7部「労働者の権利」の強制労働の禁止という部分より一部抜粋して紹介していきます。

前編ではこの報告書の評価方法、そして女性と子どもの人権について紹介しておりますので、こちらもぜひご覧ください。

障害者

障害者の人権

公共建築物の建設プロジェクトでは、障害者のための設備を整備することが法律で義務付けられていますが、一部の公共サービスについては障害者の利用が制限されていました。

また、障害者に対する虐待も深刻な問題として取り上げられています。家族や障害者福祉施設職員、また雇用主からの虐待を経験した障害者は全国にいます。また民間の調査によると、障害のある女性に対する差別や性的虐待もあったそうです。

障害者権利擁護団体の報告によると、女性の障害者は男性の障害者に比べて、高い失業率や職場での継続的なハラスメントなどの虐待や差別を受けたとされています。

精神衛生ケアの専門家は、精神障害への偏見を軽減し、うつ病やその他の精神疾患は治療可能な生物学に基づく疾患であることを一般の人々に知らしめる政府の努力が十分でなかったと主張しています。

国籍・人種・民族に基づくマイノリティーグループの人たち

部落民
部落民の権利擁護団体は、多くの部落民が社会経済的状況の改善を実現したにもかかわらず、雇用、結婚、住居、不動産価値評価の面での差別が横行している状況が続いたと報告しています。

外国人
日本生まれ日本育ちで日本で教育を受けた外国人、日本の永住権を有する外国人、帰化した日本人をここでは指します。

彼らは住居、教育、医療、および雇用の機会の制限など、さまざまな形で根深い社会的差別を受けています。「外国人」や「外国人のように見える」日本国民は、ホテルやレストランなど一般の人々にサービスを提供している民間施設への入場を、時には「外国人お断り」と書かれた看板によって禁じられたと報告されています。

朝鮮半島にルーツのある人
朝鮮半島に出自のある人たちのコミュニティーの複数の代表は、ヘイトスピーチがあったことを報告しています。

先住民

アイヌを先住民族として認め、アイヌ差別と権利侵害を禁止し、アイヌの文化を保護し促進すると法律で定められています。また、国および地方自治体に対して、地域を支援し、地域経済と観光業を振興する対策を講じることも義務付けられています。

しかし報告書では、アイヌの人々が貧困と教育の障害に直面しているとされます。

また、明治時代に廃止された伝統的な慣習や権利の回復を求め、河川での商業的なサケ漁の禁止免除を求め訴訟を起こしました。しかし国は、明治時代の同化政策でアイヌの村が消滅したため、土地やサケ漁の権利を持つ部族は存在しないと主張しています。

性的指向および性同一性に基づく暴力行為、犯罪化、その他の虐待

LGBTQ+

LGBTQ+のTに当てはまるトランスジェンダー(心と身体が一致していない人を指します)の方々に対し、法的に認定するためには生殖機能を持たないことを義務付けており、事実上ほとんどの人に対して不妊手術を義務付けています。また、精神鑑定を受け、国際疾病分類で認められていない疾病である「性同一性障害」の診断、未婚かつ20歳以上であること、20歳未満の子どもがいないことなどの追加条件も満たさなければなりません。

LGBTQ+の人々の権利を擁護する団体から、差別、アウティング、いじめ、嫌がらせ、および暴力行為があったとの報告がありました。96の人権およびLGBTQ+に関わる団体が、自民党に対して性的指向や性同一性に基づく差別を防止する法律を導入するよう求めています。

政府の調査によると、性的少数者の権利保護を目的とした方針を持つ企業は、わずか10%強に過ぎません。LGBTQ+の権利擁護団体は、差別を禁止する条例の導入や、同性パートナーシップを認める自治体が増えていることを歓迎しています。

法務省も2019年に、性的指向や性同一性に基づく潜在的な人権侵害についての問い合わせに対し、法的助言を行うなどしています。

次に、第7部「労働者の権利」より、強制労働の禁止という項目について紹介します。

強制労働の禁止

外国人労働者

法律によりあらゆる形態の強制労働は禁止されていますが、何が強制労働にあたるのか明確に定義されていないため、検察官の裁量に委ねられています。

そして、外国人労働者に対する法律の執行は不十分であり、製造業、建設業および造船業において強制労働の兆候があったとしています。

これは主に、技能実習制度(TITP)を通じて外国人を雇用している中小企業に多くみられます。技能実習制度は、外国人労働者が日本に入国し、事実上の臨時労働者事業のような形で最長5年間の就業を認める制度であり、この分野の多くの専門家は人身取引およびその他の労働者虐待の温床になりやすいとしています。

技能実習生として働く外国人労働者は、政府が禁止しているにもかかわらず、移動の自由および技能実習制度関係者以外の人物との連絡の制限、賃金の未払い、長時間労働、母国の仲介業者に対する多額の借金、ならびに身分証明書の取り上げを経験しています。

彼らの中には、仕事を得るため自国で最高100万円(9200ドル)を支払った人や、実習を切り上げようとした場合に、このような資金が自国の仲介業者に没収されることが契約の下で義務付けられていた技能実習生もいました。これらは全て違法行為であるにも関わらず発生していました。

外国人技能実習機構は、技能実習生の職場を立入検査するなど対策を強化していましたが、人員不足や言語の壁により上手くコミュニケーションが取れなかったなど、人権侵害が起こっていることを特定するためには効果的でなかったと評価されています。

最後に

いかがでしたでしょうか?

この報告書は、各国政府の取り組みを4段階で評価しており、日本は最高評価からランクを一つ落としています。その原因の一つがこの外国人労働者に関わるところであり、大手企業などはサプライチェーンを通じて人権侵害が起きていないか、取り組みを強化しています。

大手企業と取引のある中小企業はすでに取り組みが始まっており、今後は取引がなくても人権へ配慮することが当たり前の時代になるのではないでしょうか。

参照:
https://jp.usembassy.gov/ja/human-rights-report-2020-japan-ja/
https://jobrainbow.jp/magazine/transgid
https://www.hrw.org/ja/news/2020/05/15/375074

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丸末彩加

丸末 彩加(まるすえ あやか)。幼少期をアメリカで過ごし、日本と海外どちらの視点も入れながら、楽しく社会問題を解決したいと思っています。趣味は旅行と音楽と食べることです。linkedinでも情報発信しています!

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