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ベルリンの撮影スタジオ内に欠かせない”Kantine=食堂”が目指すゼロウェイスト

ベルリンの撮影スタジオ内に欠かせない”Kantine=食堂”が目指すゼロウェイスト

ベルリンには街の中心地でありながら、24,000平方メートルもの広大な敷地と100年以上の歴史を誇る映画やドラマの撮影スタジオ「Atelier Gardens(アトリエ・ガーデンズ)」があります。もとは、1917年に「BUFA(正式名称:Berlin Union Film)」という名称で政府がプロパガンダ映画を制作するために設立したスタジオですが、のちにドイツ映画産業の繁栄に大きく貢献することになりました。

そこから時を経て、2021年12月に「Atelier Gardens」へと引き継がれました。「Atelier Gardens」とは、テンペルホーフ空港跡地や歴史ある映画やテレビを象徴する敷地の再開発を担うプロジェクト団体であり、”Celebrating Soul, Soil, Society”をモットーに掲げ、都市における再生生活のための総合的なアプローチへの野心と、原則的に人間は地球上の生命に役立つ貢献ができるという信念の元にさまざまな活動を行っています。

ベルリンの撮影スタジオ内に欠かせない”Kantine=食堂”が目指すゼロウェイスト

撮影クルーやスタジオ利用者に欠かせない”食堂”

スタジオの敷地内には、5つの撮影スタジオ、ダビングスタジオ、ミキシングスタジオ、ワークショップスペース、ガーデンなどがあり、その一角にあるのが、2022年にオープンした「Roots Radicals(ルーツ・ラディカルズ)」が手掛ける”Kantine(カンティーネ)”です。Kantineとはドイツ語で食堂やカフェテリアを意味します。「Roots Radicals」が位置するのは、1953年頃には応接室として使用されており、2010年代に未来的なデザインへと変わり、そして現在の食堂へとリニューアルされました。オープン以来、撮影スタジオで働くスタッフや利用者に良心的な値段でランチを提供しています。

ベルリンの撮影スタジオ内に欠かせない”Kantine=食堂”が目指すゼロウェイスト
ベルリンの撮影スタジオ内に欠かせない”Kantine=食堂”が目指すゼロウェイスト

「Roots Radicals」は、ゼロウェイストを目指す循環型レストランであり、廃棄された野菜や果物が主な食材となっています。主な提供先は、ベルリンを拠点に有機栽培を行っている「Tiny Farms(タイニー・ファーム)」です。同社は、ブランデンブルク州をターゲットに、わずか0.5ヘクタールの土地に持続可能な農場を作り、投資コストを最小限に抑え、化石燃料をほとんど使わない土壌に優しい有機栽培法を実施しています。

店内は、入ってすぐ右側に広々したオープンキッチンがあり、内装は、風情ある剥き出しのコンクリートに木材のテーブルと椅子が並んでいます。シンプルなデザインながら温かみを感じさせる内装はまさに“食堂”といった雰囲気で、栄養バランスも考えられた美味しい食事を良心的な値段で提供してくれるここはスタジオにとって必要不可欠な存在となっています。

ベルリンの撮影スタジオ内に欠かせない”Kantine=食堂”が目指すゼロウェイスト

 廃棄を出さずに規格外の野菜・果物も救う

「Roots Radicals」はもともとケータリングサービスやワークショップを行っていたプロジェクトです。それだけでなく、使い切れず残ってしまった食材から加工食品を開発し、オフィシャルのオンラインショップとクロイツベルク区に位置する屋内マーケット「Markthalle Neun(マルクトハレ・ノイン)」にて販売を行っていました。スタジオ内に拠点を構えたことから、食堂内でも加工食品の販売をスタートさせることになり、4月28日にはオリジナル加工食品のお披露目と販売を記念したイベントが開催されました。ピクルス、発酵食品、ソース、スープ、ビネガー、フルーツジャム、スパイスなどがメインとなっており、使い切れなかった食材を廃棄してゴミを増やしてしまうことなく、加工することによって日持ちする保存食に作り変えることに成功しています。

ベルリンの撮影スタジオ内に欠かせない”Kantine=食堂”が目指すゼロウェイスト
ベルリンの撮影スタジオ内に欠かせない”Kantine=食堂”が目指すゼロウェイスト

イベント時にお得なセット価格10ユーロ(1ドリンク付き)で販売していたのが、新商品のグリーントマトとライムの酸味とハラペーニョをミックスしたホットソースと発酵させたサンバルフレークのスパイスです。ホットソースは、「Tiny Farms」から提供された熟しきれなかった青いトマトから作られており、熟したバナナとブラックペッパーの香りが調和を生み出し、ゆっくり発酵させることで風味が溶け合っていくとのことです。

辛いものが得意ではない筆者ですが、ドレッシングを作る際に少量トッピングしてピリ辛に仕上げることができたり、ちょっとしたアクセントにもなります。スパイスも辛いですが、料理の上に少しトッピングするだけでキレイなピンク色の効果で彩りが良くなり、ワンランク上の料理に見せることができる優れものです。ホットソース以外にもピクルスやチャツネ、シロップやジャムなどに加工され、このように救済された野菜や果物からアイデアと開発技術によって新製品が次々と誕生しています。

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食品以外にもエコバッグなどのオリジナルグッズも販売中。

また、加工食品を入れている容器も全てリサイクルで、空いた容器は他の用途に使うことも可能です。プラスチック容器よりもガラス瓶の方が何度も再利用することができる上に、デザイン性も高く品質の良さが際立ちます。カラフルでオシャレな調味料をキッチンに並べて置くだけでも楽しい気分を味わうことができます。

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生分解性のおむつと赤ちゃんの排出物から堆肥作りを行っているベルリン発のスタートアップ「DYCLE(ダイクル)」ともパートナー提携しており、「Roots Radicals」のコンポストを監修しています。生ゴミが可能な限り出ないように工夫されているため、飲食店とは思えないほど廃棄が少なく、専門家も驚くほどのようです。また「Atelier Gardens」にも同様にコンポストが設置されており、スタジオ全体でサステナブルな活動を行っています。コンポストだけに限らず、スタジオの作りや関連イベントなどにも非常に興味があります。

ベルリンにおけるファッションスワップの需要

ベルリンの撮影スタジオ内に欠かせない”Kantine=食堂”が目指すゼロウェイスト

同イベントでは、加工食品の販売だけでなく、不要となった衣類や雑貨を持参し、他の来場者が持参した衣類と交換することができる「ファッションスワップ」も開催されました。エコ先進国のドイツであっても「ファッションスワップ」をメインとしたイベントはそれほど大々的には開催されていませんが、子供服やカジュアルなレディースが豊富に揃っていて、スワップする人たちも若い女性が中心となって楽しそうに選んでいるのが印象的でした。

ベルリンでは、アパートメントの一角に不用品を置き、欲しい人が自由に持ち帰ることができる生活習慣があります。着なくなったから、使わなくなったからと言ってすぐに捨ててしまうのではなく、他に必要としている人に譲ることができ、ゴミを減らす効果もあるのです。筆者も引越しや断捨離したい時、逆に欲しいものが見つかる場合もあるため、頻繁に活用しており、ホームレスや困っている人に直接提供したこともあります。

こういったサステナブルな習慣は、ベルリンで暮らす人々には当たり前に根付いており、意識することなく自然に行うことができています。そのため「ファッションスワップ」というイベントにする必要がないのかもしれません。趣向を変えて、ファッションブランドやアパレル関係者が主催のもと開催されたらセンスの良いものやトレンドアイテムが集まり、もっと需要が高まるのではないでしょうか。「Roots Radicals」では定期的にイベントを開催していくとのことなので、今後の動向も追っていきたいと思います。

Picture of 宮沢香奈

宮沢香奈

宮沢香奈(みやざわ かな)ライター/PR ブランドディレクター、プレスなどを経て、2012年からフリーランスライターとして本格的に執筆活動をスタート。2014年に東京からベルリンへと活動拠点を移し、ヨーロッパのローカルカルチャーを中心とした記事を多くの媒体にて執筆中。また、国内外のフェスや音楽レーベル、ファッションブランドのPRとしても活動中。

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