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公正な移行を目指して|オランダ

公正な移行を目指して|オランダ

公正な移行(Just Transition)という言葉をご存知でしょうか?例えば、脱炭素社会の実現に向けて、一般炭鉱山の閉山や石炭火力発電の廃止など大規模な産業構造の転換が進められています。脱炭素社会の移行リスクが高い一部の産業では雇用が失われる可能性があります。そのため、世界全体が環境や社会的問題の解決に取り組むにあたり、すべてのステークホルダーにとって公正かつ平等な方法によりサステナブルな社会への移行を目指す必要があります。

公正な移行とは?

公正な移行(Just Transition)とは、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーへの移行といった 、従来の社会システムから大きく変わる際に起こる変化に対して、そのリスクを最小限に抑えることを指します。例えば、脱炭素社会への移行には、これまで石炭火力発電に関わっていた労働者の雇用減少や恩恵を受けていた地域の衰退といった問題が懸念されています。また、サーキュラーエコノミーへの移行では、廃棄物の処理に関わっている人の雇用減少やこれまで必要だった一次原材料の需要が減ることで、収入が減ってしまうことへの不安を抱いている人がいます。

公正な移行は、新たな社会システムへ移行する過程で新たな社会課題を生み出さずに、世界全体でサステナビリティの向上に貢献し、起こりうる変化に対して配慮しながら移行していくことを意味します。

WBA(World Benchmark Alliance)は、2018年に発足し、社会と世界経済をより持続可能なあり方に導くために必要な金融、脱炭素とエネルギー、食糧と農業、社会といった7つのテーマに関し、世界で影響力のある2000社の取り組みを評価し、サステナブルな社会への移行を促進することを目的としたイニシアチブです。WBAは、公正な移行のために必要な取り組みとして以下の6つの分野を提示しています。

  1. 公正な移行における社会対話とステークホルダー・エンゲージメント
  2. 公正な移行のための計画
  3. グリーンでディーセントな仕事の創出
  4. 人材の確保と再雇用、および/またはスキルアップ
  5. 公正な移行のための社会的保護と社会的影響のマネジメント
  6. 公正な移行のための政策と規制のためのアドボカシー(代弁・意思表明)

サーキュラーエコノミーに移行するオランダの取り組み

EUに対する取り組み

企業のグローバル化は、サプライチェーンをより複雑化させました。今では、商品の生産、消費、廃棄される国や地域が異なります。特定の国や地域は、これまでのリニアエコノミーのモデルの中で経済成長し豊かになりました。また一部の企業も、グローバルに展開したことで大きく成長しました。しかし、同時に貧富の格差拡大、水質汚染や森林伐採といった環境破壊や人権侵害などの問題を引き起こしました。

オランダ政府は、国際的なサーキュラーエコノミーのモデルの構築は、国連が掲げている持続可能な開発目標 SDGsの目標達成にも貢献するとしています。同政府は、世界全体でサーキュラーエコノミーを推進するため、各国の大使館にて地域住民に向けたサーキュラーエコノミーに関するセミナーやイベントの開催を行っています。また、EUに対しては、オランダがEUの議長国であった2016年にサーキュラーエコノミーへの移行を積極的にEUの議題として取り上げました。その結果、2016年6月20日に、EUの環境会議で加盟国による全会一致でサーキュラーエコノミーへの移行を支持することが宣言されました。この宣言により、資源が循環するデザインの採用、製品寿命の延長、廃棄に関する規制の統一、プラスチック廃棄物の削減、食品廃棄物の削減や行動計画の迅速な実施を支援するための協力プラットフォームの確立といった統合的なアプローチをとるよう呼びかけられました。

公正な移行で目指すべき姿

サーキュラーエコノミーを実現するためには、国や企業規模に関係なく、世界全体で取り組む必要があります。しかし、サーキュラーエコノミーへの移行は、社会システム全体を大きく変化させるため、懸念を抱いている国があることも事実です。

例えば、資源が循環することで、これまで必要だった一次原材料の需要が減ります。すると、一次原材料の輸出に大きく依存している国は、大きな打撃を受けるでしょう。移行を推進する際は、それらの影響をきちんと把握しておく必要があります。政府や企業は、移行によって起こる変化を把握することで、将来的に起こりうるリスクに対して適切に対応することが可能になります。

最後に

2050年までにサーキュラーエコノミーを実現するため、オランダは国内だけでなくEUを含めた他国に対しても積極的にリーダーとして関わっています。サーキュラーエコノミーは、SDGsという世界共通の課題を解決するための手段としても注目されています。SDGsは「誰1人取り残さない」ということを誓っており、オランダ政府は「公正な移行」を行うため、サーキュラーエコノミーへの移行で伴う負の側面やリスクを軽減するための調査も進めています。移行に伴う影響度合いは、各国で異なります。日本では、脱炭素社会への移行が少しずつ始まっています。企業は、今後起こりうる変化について把握しながら、より持続可能な社会に向けた取り組みを推進していくことが求められます。

参照:
https://circulareconomy.europa.eu/platform/sites/default/files/17037circulaireeconomie_en.pdf

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丸末彩加

丸末 彩加(まるすえ あやか)。幼少期をアメリカで過ごし、日本と海外どちらの視点も入れながら、楽しく社会問題を解決したいと思っています。趣味は旅行と音楽と食べることです。linkedinでも情報発信しています!

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