IBM調査|ESGは収益の増加に繋がる、7割以上の企業が回答
ESGという言葉が社会に広がりました。しかし、世の中には、ESGに対して疑問を抱く人々と社会や環境を改善していくためには不可欠だと考える人々がいます。
アメリカのニューヨークに本社を置くテクノロジー関連企業であるIBMは、ESGに関する新しい調査結果を発表しました。調査は、2万人以上の消費者を対象に、持続可能性と社会的責任に対する意識調査を行っています。また、22の業界、34ヶ国2500人の経営者に対し、組織のESG戦略やアプローチ、運用によって期待する利益やESGをどう評価しているかといった調査結果の分析も実施しました。
経営者を対象とした調査では、ESGが企業の最優先事項だと回答した人の割合が76%に上りました。また、72%の経営者がESGへの取り組みはコストセンターではなく、収益を上げるための手段として考えています。現在、ESGの取り組みはコンプライアンスやリスクマネジメントに重点が置かれています。
しかし今後は、収益が向上すると予想している人の割合が45%、イノベーションの促進に期待している人は35%という調査結果が発表されました。
一方、消費者を対象とした調査では、サステナビリティに対する関心が強いことが明らかになりました。回答した消費者のうち、約3分の2が「環境に対する配慮」や「社会的責任」が重要だと回答しています。そして、環境や社会に配慮した企業で働きたいと回答した消費者の割合は70%以上に上ります。40%以上の消費者が、環境や社会に配慮した企業で働くためであれば収入が下がっても構わないと回答しており、過去1年間に転職した人の4分の1はそのために転職したと回答しています。
経営者と消費者の両者にとって最優先事項となっているESGですが、データ関連の課題を強調しています。例えば、経営者を対象とした調査では、41%の経営者がESGを推進する上でデータが不十分であり、組織の課題として挙げています。加えて、国によって制度や規制が障壁になっているとも明らかにしています。消費者を対象とした調査でも同様です。環境に配慮された商品を購入したいと考えた際、十分なデータがあると回答した消費者は41%に留まっています。また、就職や転職先として決定する際も、企業に関するESG関連データが不足していると指摘しています。
さらに、本調査では、企業と消費者の間での認識の差も浮き彫りになりました。経営者の74%は、ステークホルダーが組織のESG目標やESGの取り組み、パフォーマンスを理解していると回答しています。しかし、消費者を対象とした調査では、企業のサステナビリティに対する取り組みの声明を信頼していると回答した消費者の数が、2021年の48%から20%と大幅に減少してることが判明しました。
IBMのコンサルティングを行っているJonathan Wright(ジョナサン・ライト)氏は、次のように述べています。
「自分達の消費を通じて環境や社会に対して取り組みたいという動きが、消費者の間で強まっています。消費者の大多数が、ESGに取り組む企業で働きたいと考える中で、今後企業はより透明性を重視し、ESGに関連するデータを開示しやすい環境を整える必要があるでしょう」