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ビジネスで実現するSDGs|事例

近年ますます取り組みが加速するSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、その前進であるMDGs(ミレニアム開発目標)と比較した時、大きな特徴が1つあります。それは、SDGsでは企業がその目標達成における重要な実施主体と位置づけられており、SDGsコンパス(SDGsの企業行動指針)などを用意して、その取り組みを全面的に後押ししている点です。

SDGsコンパスについてはこちら▼

こうした状況も受け、企業がSDGsに関連して社会課題に取り組むケースは増えていますが、それは社会貢献という意義を見出すだけでなく、SDGs自体をビジネスチャンスとして捉えています。そこでこの記事では、今現在SDGsに積極的に取り組む企業がSDGsとビジネスをどのように捉えて活動しているのか。また、そこからビジネス上どのようなメリットを見越しているのかなどを、実例を交えてご紹介します。

「社会課題解決」としての位置付け

 日本企業はSDGs等の社会課題解決をどのように位置付けているのか、その認識を見てみると、約 7 割の企業が「企業の責任」として、あるいは「持続可能性に関わる企業価値の向上」のために重要と考えていることがわかります。「本業の一環として社会課題解決に取り組んでいる」と回答する積極的な企業も約 63%に上ります。

 「ステークホルダーとの関係強化」や「さまざまなビジネスリスク対策」のために重要と考える企業は 4 割台と中程度であり、「新たなビジネスチャンス」と捉える企業は 37%程度にとどまっています。

 他方、重要とは考えていないとする企業は 4%程度であり、回答した大多数の企業では何らかの理由で社会課題解決をビジネス上重要なものとして捉えていることが見受けられます。

社会課題(SDGs等)解決の位置付けについて
引用:一般財団法人企業活力研究所「社会課題(SDGs 等)解決に向けた取り組みと国際機関・政府・産業界の連携のあり方に関する調査研究報告書(2017年)」

また他方で、SDGsの市場規模は目標により小さいもので70兆円、大きなモノでは800兆円程度とし、すべてをあわせれば1000兆円を超える市場規模のビジネスチャンスがあるとする試算結果もあります。

SDGsの各目標の市場規模試算結果
出典:デロイトトーマツコンサルティング【「SDGsビジネス」の市場規模】

こうした数字の根拠としては、さまざまな要因が考えられますが、ここでは3つの要因に絞って解説したいと思います。

社会の課題はニーズである

承知の通りSDGsとは国家や企業・個人の垣根を超えて考えなければならない、地球規模の取り組みが求められる問題です。しかし、SDGsに取り組むということは利益を追求すべき企業においても、大きな恩恵をもたらします。

それはSDGsに取り組んでいるという世間の好意的な評価であり、企業ブランドの向上による収益のアップが見込まれるという直接的な企業価値。さらには、社会課題の解決に取り組む企業であるという自尊心が従業員の働く意欲を倍増させたり、ステークホルダーたちとのより理想的な関係構築といったものまでさまざまです。

そしてなにより、「課題」があるということはその解決が求められるということで、そこには「ニーズ」が発生しています。このニーズを解決する事業に取り組むことができれば、それは新たなビジネスの開拓や、既存ビジネスのさらなる発展を得ることができるのです。

Z世代はSDGsへの関心が高い

突然ですが「Z世代」という言葉をご存知でしょうか。

これは、厳密な定義はさておき日本では主として1990年代後半から2012年頃に生まれた世代で、2021年現在9~21歳ぐらいの若者たちを指しています。

この世代の特徴としては、インターネットの普及後に生まれた世代として、デジタル機器の取り扱い、さらにはSNSやスマホの利用に対してネイティブであるということが挙げられます。

実はこうしたZ世代の若者たちはSDGsなど社会問題に対する関心が、我々大人が考えているより高いという報告もあります。

z世代の社会課題に対する興味関心
出典:SHIBUYA109 lab.【社会課題・SDGsに関する調査(2020年)】

これは株式会社SHIBUYA109エンタテイメント(本社:東京都渋谷区)が運営する、若者マーケテイング研究機関「SHIBUYA109 lab.」がaround20(20歳前後)の男女を対象に行なった調査結果です。この表からもZ世代のSDGsへの関心の高さが見て取れます。

Z世代は地球温暖化などの環境問題や、東日本大震災によってエネルギーのあり方を問われる経験を幼い頃から目の当たりにして育ってきました。そしてそうした問題への興味関心を容易に手に入れることのできるインターネット、主にスマホという媒体を使って情報収集を行い、SNSなどで個人の意見を発信。同じ価値観を持つ仲間たちと情報や意見を交換することで、世界中の課題に敏感に反応できる土壌を造り上げています。

こうした背景を元にZ世代は何かを買う、サービスを受けるという際に、その企業やブランドがSDGsをはじめとする社会課題に取り組んでいる企業かどうかを重視するケースもあります。つまり、この世代をメインターゲットとする企業などでは、SDGsに取り組むことこそが自社のビジネスを大きく飛躍させるチャンスと捉えることもできるのです。

ESG投資額へのシフト

SDGsと根底が類似したキーワードとして、ESGがあります。

ESGとは次の3つの言葉の頭文字を取って作られた言葉です。

  • 環境(Environment)
  • 社会(Social)
  • ガバナンス(Governance:企業統治)

そして今、各国の機関投資家たちが、このESGに取り組む企業への投資(ESG投資)に注目し、年々ESG投資へのシフトを進めているといいます。

投資する際にESGを考慮するかの調査結果
引用:電通PRコンサルティング『2020年度 ESG/SDGsに関する意識調査』結果

この調査結果を見ても、実に77.6%の個人投資家たちがESGへの取り組みを考慮した投資を行っていることが分かります。つまり、企業が新規ビジネスの資金調達を行う際は、こうした個人投資家たちの心をつかむ必要があり、当然各金融機関もそういった流れには同調するでしょう。

そうした意味からも、ESGあるいはSDGsに取り組んでいる企業であるとアピールすることは、企業の根幹をなす資金調達の面から見ても有効な戦略なのです。

SDGsに取り組む先進事例:サラヤ

SARAYAサステナビリティレポート
引用:SARAYAサステナビリティレポート2022

ではここで、SDGsに取り組む1つの事例をご紹介します。大阪府大阪市に本社を置くサラヤ株式会社は、消毒剤や洗浄剤、医療品、食品を製造する化学・日用品メーカーで、1952年に創業しました。

コーポレート・スローガンは「いのちをつなぐSARAYA」で、ホームページのトップバナーにはそのスローガンとともに「世界の衛生・環境・健康に貢献する」という言葉が書かれてあり、これはまさにSDGsの理念に沿った言葉です。

花王、ライオン、P&Gなどの大手化学・日用品メーカーが寡占状態を占める業界において、SDGsへの取り組みを前面に押し出し市場の開拓を続けています。

同社は「サラヤにとってのマテリアルなSDGs」として、SDGs17の目標のうち14の目標を選出。その取り組みに対する詳細な「現在位置」を知らせる「持続可能性レポート」を、2002年以降毎年公表しています。

現在同社では、日本国内のみならず世界の各国においていくつもの拠点を開設し、さまざまなSDGs目標に向けた取り組みを続けており、2020年度版のレポートではトップコミットメントとして、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に困惑する世界へ向けて、次のような宣言をしています。

2020 年は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)により、国々が分断され、経済活動が低迷し、世界の状況が大きく変化しました。これからその回復に向けて、さらには地球と地域の持続可能な発展に向けて、舵を切って方向を正し、エンジンをふかして推進力をあげ、事業を進めなければなりません。

引用:サラヤ持続可能性レポート2020

このように全社が一丸となりSDGsの課題解決に邁進(まいしん)し、それを詳細なレポートとして現在位置をインターネットを通じて消費者や投資家、取引先などのステークホルダーへと公表することは、SDGsへの取り組みを進めていく上では非常に重大なミッションです。

同社の試みは多くの企業にとって参考となる事例であるとともに、地域社会の共感を集め、さらなるビジネスの拡大への起爆剤ともなることでしょう。

まとめ

SDGsに取り組むということは、社会貢献というだけでは企業活動との両立は難しいと考えられるかもしれません。

しかし、それに加えてSDGs自体が大きなビジネスチャンスであること、その理由を理解することにより、自社の理念に沿った社会貢献による利益の拡大を目指せるはずです。

ここで紹介したSDGsビジネスのキーワードや、サラヤの事例などを参考にして、ぜひともSDGsビジネスで新たな扉を押し開いてみてください。

参考:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』【サラヤ】

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