エシカルとは|サステナブルとの違いやライフスタイルへの取り入れ方は?
エシカルファッションやエシカルフードなど、エシカルという言葉に触れる機会が増えています。エシカルとは何か。そして、エシカルをライフスタイルに取り入れるために何をすれば良いか解説します。
エシカルとは
エシカル(ethical)は「倫理的な」という意味です。
法律による明確な規制によるものではなく、「人や地球環境、社会、地域に対して多数の人が正しいと思う行動基準」を指します。
「エシカル消費」「エシカルファッション」など「エシカル」と様々な名詞を組み合わせることで、多様な分野に適用できます。
エシカルの重要性と消費に対する考え方
では、なぜ今エシカルが重要なのでしょうか。
近年、気候変動による温暖化と異常気象、森林・水資源の枯渇、食料危機、生物多様性の損失など地球環境は著しく変化しています。そして、経済的利益を優先する社会システムによって国際的に経済格差が広がっています。
生産技術や物流システムの発達により、多様な商品やサービスが気軽に手に入るようになり、生活が便利になりました。しかしその一方で、商品が消費者の手に届くまでの過程において、環境破壊や労働搾取、児童労働などが行われていることが浮き彫りになっています。
この問題の原因の一つとして、生産者と消費者の繋がりが複雑化し、商品がもたらす豊かさと商品が生まれた背景が切り離されていることが挙げられます。どこで、誰が、どのように作っているかを知らずに消費することは、無意識に生産者の犠牲の上に成り立っている商品を手に取っているかもしれないのです。
これらの課題を同時に解決していくために、人や社会、地球環境に配慮した倫理的に正しい消費を行う「エシカル」という概念が有効とされ、重要性が高まっています。
生産者の顔は見えなくても、私たちの暮らしは人や地球環境と繋がっています。
日々、なんらかの消費をする際の選択「何を食べるか(食べないか)」「何を着るか(着ないか)」「お金をどう使うか(使わないか)」によって生産者や地球環境に影響を与えることを常に意識していかなければなりません。
エシカル、サステナブル、SDGsの違い
「エシカル」と同様、社会や地球に関連する用語である「サステナブル」「SDGs」との違いや関連性を紹介します。
サステナブルとは
サステナブル(Sustainable)は、sustain(持続する)とable(〜できる)からなる言葉です。「持続可能な」「ずっと続けていける」という意味があります。
SDGsとは
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。SDGsは2015年9月に国連の「持続可能な開発サミット」で採択された2016年から2030年までの15年間で達成するために掲げた目標です。
SDGsは17の目標と、具体的な169のターゲットで構成されています。エシカルは特に目標12「つくる責任つかう責任、持続可能な消費と生産のパターンを確保する」と関連しています。生産者と消費者が、ともに持続可能な生産消費形態を目指すという内容です。
違いと関係性
- サステナブル:広範囲にわたる持続可能な発展を指す概念であり、エシカルな考え方やSDGsの目標を実現するための基本的な理念です。
- エシカル:個々の行動や選択が倫理的であるべきだという考え方で、サステナブルな社会を実現するための重要な要素の一つです。
- SDGs:国際的に合意された具体的な目標で、サステナブルな発展とエシカルな行動を実現するための具体的な指針を提供しています。
このように、サステナブル、エシカル、SDGsはそれぞれ異なりますが、相互に関連しながら持続可能な社会の実現を目指しています。
エシカル消費(倫理的消費)とは
エシカル消費とは、地域の活性化、雇用を含む、人、社会、地球環境に配慮した消費行動を指します。
買い物をするときに、価格や品質だけではなく、環境への負荷や生産者の人権、労働条件など社会的な背景まで考慮して商品や企業を選ぶ人のことをエシカルコンシューマー(倫理的消費者)といいます。
ではエシカル消費とは、実際にどのような行動や商品・サービスの消費が該当するのでしょうか。具体例を紹介します。
フェアトレード
エシカル消費に関わる貿易の仕組みとして挙げられるのが「フェアトレード(Fair Trade)」 公平・公正な貿易です。
本来、貿易とは、輸出する国と輸入する国の両方に利益をもたらすものですが、実際には、「一方の国は豊かになるが、一方の国は豊かにならない」という貿易が行われています。「消費のために誰かが犠牲になる」「安い商品を手に入れるために誰かが搾取される」といった不公正・不平等な問題は、世界の各地で起きています。
このような現状を変えて、「貿易によってお互いの国が豊かになる」という貿易本来の姿を取り戻すのが「フェアトレード」の取り組みです。代表的な商品として、フェアトレードコーヒーやフェアトレードチョコレートが挙げられます。
基準を守り認定を受けた商品には「フェアトレードマーク」(認証ラベル)が貼られており、見分けられるようになっています。
エシカルフード
エシカルフードとは、食品の生産工程での地球環境や動物への負荷を可能な限り提言して生産・販売されている食品のことです。
以下のような特徴があります。
- 動物にとってストレスや苦痛のない環境で育てられている
- 本来なら廃棄となる規格外サイズの野菜や果物、魚介類等を販売する
- オーガニックや無農薬、有機栽培により、生産工程での環境負荷を管理している
- 生産者と消費者が対等で、適切な価格設定がされている
エシカル雑貨
エシカル雑貨とは、地球環境と社会問題へ配慮した商品や、持続可能なモノづくりに貢献した雑貨です。プラスチックごみ削減のために、繰り返し使える商品などが該当します。
以下のような商品があります。
- タンブラー(廃棄される竹やトウモロコシの茎などをアップサイクルして製造)
- シリコンラップ(洗って繰り返し何度も使える)
- 弁当箱(廃棄されるコーヒーかすと竹粉をアップサイクルして製造)
- マイストロー(中身を開いて洗える、持ち運びやすいシリコン製)
エシカルファッション
エシカルファッションとは、素材開発、生産から流通、廃棄に至るまでの全ての工程において、人や地球環境に配慮されて製造された倫理的なファッションを指します。
2013年4月にバングラデシュの縫製工場「ラナ・プラザ」の崩壊事故が起き、死者1100人以上、負傷者2500人以上の大惨事となりました。この工場では、先進国の消費者が安価で入手できるファストファッションのブランドや、世界的に有名な高級アパレルブランドの商品が作られていました。この事故をきっかけとしてアパレル企業は生産現場に責任を持つべきという意識が高まり、エシカルファッションが注目されるようになりました。
具体的には以下のような対策を行っています。
- 製造現場の労働者の賃金や権利、労働環境を守る
- 不要になった製品を回収し、リサイクルを行う
- 動物の毛皮や皮を材料とせず、動物由来ではないオーガニックコットン、麻、テンセルなどの素材を使用する
- 原材料の生産・製品の製造・輸送までの工程において環境負荷を管理している
エシカルトラベル
近年、世界でエシカルトラベルやサステナブルツーリズムが注目を集めています。このような旅行形態は、地域社会や環境に配慮した旅行を指し、観光地の文化や伝統を尊重し、地元の経済に貢献することを重視しています。持続可能な観光を目指し、自然環境や文化遺産の保護を優先しながら、観光地の長期的な発展を支援するものです。
観光地としての人気が高まっている日本でも、急激な観光客の増加により地域住民の生活や自然環境への影響が深刻化するオーバーツーリズムが問題になっている地域があります。
沖縄県では持続可能な観光地を目指す対策として、エシカルの概念を取り入れた「エシカルトラベルオキナワ」を実践しています。沖縄の自然や伝統文化、産業を体験できる観光プログラムを通して、観光客が地域の人々との交流を深め、住民の暮らしや自然環境などに関心を持つ機会を設けることを目的としています。
以下に、沖縄で実施されている「エシカルトラベルオキナワ」のプログラムの一例をご紹介します。
TRUE BLUE OKINAWA 海洋プラスチックアート作り体験
古宇利島にあるアート工房&ショップ「TRUE BLUE OKINAWA」の海洋プラスチックアート作り体験では、海洋プラスチックを使ったアクセサリーやランプシェード作りを楽しめます。
沖縄といえば、青く澄んだ美しい海が有名ですが、実際は海底に多くのプラスチックごみなどが沈んでおり、ウミガメの20パーセントが海洋ごみを誤食しているといわれています。プラスチックは100年以上自然分解されないため、世界中で深刻な環境問題となっています。
回収した海洋プラスチックごみを、洗浄して色ごとに選別し、機械で細かく粉砕して作品の材料としています。(加熱する前に有害物質の有無を検査)海洋ごみを原材料にしているとは思えない、美しい色合いのリングなどを制作することができます。
詳しくはこちら:TRUE BLUE OKINAWA
又吉コーヒー園のコーヒー豆収穫&焙煎体験
沖縄本島北部の国頭郡東村に位置する又吉コーヒー園は、広大な敷地にキャンプ場、コテージ、カフェなどを備える観光農園です。果実の収穫から生豆への加工、焙煎、抽出まで体験し、コーヒー1杯の価値を考えるツアーを提供しています。
ツアーでは、果実の手摘み作業→水洗い、乾燥→脱穀作業→焙煎、と本格的にコーヒー豆が完成するまでの行程を体験できます。果実摘み作業は機械で行っているイメージがあるかもしれませんが、機械を使用しているのは世界でも一部の農園だけで、実際は多くの農園で手作業で行われています。果実摘みから焙煎まで自分で作ることで、普段何気なく飲んでいるコーヒーの価値を知り、貴重な一杯のコーヒーが楽しめます。
詳しくはこちら:又吉コーヒー園
最後に
世界は貧困、人権問題、環境破壊など多くの課題を抱えています。従来の消費生活を続けていくと、地球環境の持続可能性を維持できなくなるかもしれません。世界中で問題解決への取り組みが加速している中、私たちが自分でできることの1つは、社会貢献になる商品を積極的に選択することです。
すべてをエシカルにするのは難しいかもしれません。まずは、毎日のコーヒーをフェアトレードに変えてみる、ワードローブに一着、エシカルファッションを取り入れるなど自分が普段よく使うもの、お金をかけているものからエシカルを取り入れてみてはいかがでしょうか。