SDGsブランディングを成功させるには?メリットや企業事例を紹介
インターネットの普及によって、誰もが世間に対して発信ができるようになった時代、企業にはサステナブルなブランディングが求められます。SDGsに取り組む企業においても、自社のPR活動の一環としてホームページや各種メディアで発信することは必要なアクションです。
とはいえ、その取り組みに実態が伴っていなかったり、企業理念と合わせた齟齬(そご)があったりすれば、かえって消費者をはじめとしたステークホルダーの不信感を買ってしまうでしょう。
この記事では、企業がSDGsブランディングに取り組むメリットやSDGsブランディングを成功させるために注意したい点、SDGsブランディングを行う企業事例を紹介します。
SDGsブランディングのメリット
SDGsの達成に向けた取り組みを企業のブランディングに取り入れることは、他社との差別化を図るだけでなく、多くのメリットを企業にもたらします。その主なメリットを5つ解説します。
企業のイメージ・信頼性が向上
近年、利益追求だけでなく社会貢献を目指す企業は、消費者からより信頼される傾向があります。SDGsへの取り組みを通じて、企業は環境問題や社会課題に対して積極的に対応している姿勢を示し、消費者やステークホルダーにポジティブなイメージを与えることができます。そして、商品やサービスの信頼性も向上し、消費者に選ばれやすくなるのです。
新規市場開拓や資金調達に有利
SDGsに取り組むことで、ビジネスの幅が広がる可能性があります。例えば、新しい市場への参入や新たなビジネスチャンスの創出が期待できます。また、SDGsを意識した活動は、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の高まりから投資家の関心を引きやすく、資金調達の面でも有利です。
社員のモチベーション向上
SDGsの取り組みは、社内の従業員に対してもポジティブな影響を与えます。企業が社会貢献活動に積極的であることを知ることで、従業員は自分の働く企業に誇りを持ちやすくなり、モチベーションが向上します。これにより、労働環境の改善や人材の定着率の向上が期待できます。
持続可能なビジネスモデルの構築
SDGsブランディングを通じて、企業は持続可能なビジネスモデルを構築することができます。これは、長期的な企業の成長と安定性を確保するために非常に重要です。環境に優しい製品の開発やエネルギー効率の改善など、持続可能な取り組みは、企業の競争力を高める要素となります。
SDGsブランディングを成功させるために注意したい点
SDGsに取り組むということは、社会貢献だけでなくSDGsに取り組む地球に優しい企業など、事業戦略上でもプラスのイメージを獲得でき、ビジネスの可能性を広げてくれます。そのため多くのSDGsに取り組む企業では、そのこと自体をメディアを通じて発信することを積極的に行い、消費者に好意的に受け入れられる企業ブランドの獲得を目指すのです。
しかし、SDGsへの取り組みをアピールしておきながら、中には実態が伴っていないケースもあり、そうした状態のことを「SDGsウォッシュ」と呼んで揶揄(やゆ)されることもあります。これは、環境に配慮したイメージを与えておきながら、実際にはエコではない製品で消費者に誤解を与える「グリーンウォッシュ」が語源となって生まれた造語です。
ブランディングを傷つけないようSDGsに取り組もう
SDGsに取り組み地球環境や社会に優しい企業をアピールしておきながら、実際にはそれに反する企業活動を行っていたり、SDGs自体が絵に描いた餅状態でお題目としてしか機能していなかったりすると、消費者は期待した分その企業に対する不信感を強くするでしょう。
今や世界中の企業がSDGsへの取り組みを表明し、ステークホルダーがその理念に共感を寄せいています。そんな中、SDGsウォッシュだとステークホルダーに判断されてしまうことは、SDGsへの貢献をまったくしていない状態よりも、企業の評判を落としてしまうことになりかねません。企業ブランディングのためにSDGsをアピールするためには、SDGsウォッシュだと批判を受けないよう、実態のある取り組みやメディア活動を考える必要があります。
SDGsでブランディングを成功させた企業の事例
ここからは企業をあげてSDGsに取り組み、それを外部にアピールすることでSDGsブランディングを成功させた企業、7社の事例をご紹介します。
味の素「サステナブルブランディング」
日本の食品会社としても大手に属する味の素株式会社では、「Eat Well, Live Well.」をコーポレートスローガンとして、食と健康によるより良い未来を作るために企業活動を展開しています。食という人が生きる上で欠かせないものを扱う企業として、地球全体を意識したサステナブルな視点から、エコな製品づくりを目指す「バイオサイクル」を始めとして、SDGsに紐づくさまざまなマテリアリティ(重要課題)を設定。
その取組みの1つとして、ベトナムで学校給食を提供するプロジェクトを展開しています。これはベトナムの子どもたちの生活を助け、栄養バランスを改善するという取り組みを通じて、企業のブランドイメージを大きく向上させ、将来的な需要の創出へと貢献しているのです。
参考:Our philosophy | グループ企業情報 | 味の素グループ
LIXIL「Change the world, Change the future」
株式会社LIXILでは、「Change the world, Change the future(世界を変える未来を変える)」というスローガンを掲げ、世界中の人々に快適な住環境を提供するために様々なSDGsに関連する取り組みを進めています。特に注目されるのが、トイレの問題に取り組むプロジェクト「SATOトイレ」です。
世界ではまだ多くの人々が適切な衛生環境を持たない地域で生活しています。特に開発途上国においてはトイレの普及率が低く、感染症や水質汚染の原因となっています。LIXILでは、低コストで簡単に設置できるトイレ「SATOトイレ」を開発し、現地の人々に提供することで衛生環境を改善。この取り組みは、SDGs目標6「すべての人に安全な水とトイレを」を達成するための具体的なアクションとして評価され、国際的な賞も受賞しています。
参考:Newsroom|株式会社LIXIL | インパクト(サステナビリティ)
ユニリーバ「持続可能な生活プラン」
ユニリーバは、持続可能な生活を推進するために「ユニリーバ持続可能な生活プラン(USLP)」を導入しています。これは、製品の製造から消費、廃棄までの全ライフサイクルで持続可能な取り組みを行うことを目指しています。
ユニリーバは製品の持続可能性に注力しており、原材料の調達から製造、販売、廃棄までのすべての段階で環境への影響を最小限に抑える取り組みを進めています。この取り組みには、再生可能エネルギーの使用、水の効率的な利用、プラスチック廃棄物の削減が含まれます。
また、社会的貢献にも力を入れており、全世界で数百万の農家とパートナーシップを結び、持続可能な農業を推進。さらに、女性のエンパワーメントや子供の栄養改善プログラムなど、SDGsの複数の目標に寄与する取り組みも行っています。
参考:ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン 10年の進捗 | Unilever
花王「サステナブル生活提案」
花王株式会社は、日用品メーカーとして、環境に配慮した製品の開発と販売に積極的に取り組んでいます。花王の「サステナブル生活提案」は、環境に優しい製品の普及と、消費者の日常生活におけるサステナブルな選択を促進することを目指しています。
中でもエコ製品の開発において先駆者的な役割を果たしており、少ない水量で効果的に洗浄できる洗剤や、リサイクル可能なパッケージを使用した製品など、環境に配慮した製品を多数開発しています。
さらに、花王は消費者教育にも力を入れています。消費者に対して環境に優しい生活習慣を提案し、サステナブルな選択を促進するためのキャンペーンや教育プログラムを積極的に実施。これらの活動を通じて、消費者が持続可能な生活を実現するためのサポートを提供しています。
パタゴニア「1% for the Planet」
パタゴニアは、環境保護活動を推進するために「1% for the Planet」というプログラムを導入しています。このプログラムでは、売上の1%を環境保護団体に寄付し、地球環境の保護に貢献しています。
パタゴニアは、環境保護活動の支援に力を入れており、世界中の環境保護団体と協力して、自然保護や気候変動対策などの取り組みも支援。
また、環境に配慮した製品の提供にも注力しています。リサイクル素材を使用した製品や、長寿命で修理可能な製品を提供することで、環境への負荷を減少させる取り組みを行っています。消費者が持続可能な選択を行うことができるようサポートしているのです。
パタゴニアは、これらの取り組みを通じて世界中の消費者から高い評価を得ており、環境保護のリーダーとしての地位を確立しています。
参考:1% for the Planet | パタゴニア | Patagonia
ピープルポート「パソコン処分で子ども支援」
神奈川県横浜市に本社を構えるピープルポート株式会社では、一般企業で不要になったパソコンなどの電子機器を回収し、リーユース・リサイクルをして「ZERO PC」として販売しています。これは廃棄物やCO2の削減を通して環境問題に貢献するだけでなく、企業が無償・もしくは安価でユーズドの電子機器を手放した分の収益を、満足に教育を受けられない子どもたちの支援に寄付することで、1万社の協力を目指した「こども支援プロジェクト」の立ち上げへとつながりました。
さらに、同社のリユース・リサイクル工場では、母国での紛争や迫害を理由に日本に逃れてきたアフリカなど多くの難民たちを雇用。彼らが日本社会に馴染めるようなサポートをするなど、いくつものSDGs目標に貢献する取り組みが行われています。これらは認定NPO団体との提携を行いながら賛同企業の協力を得て活動していますが、本業への負担をかけずにSDGsへ取り組む社会貢献ができると、参加企業からも好意的に受け入れられています。
参考:ピープルポート|企業のパソコン処分で参加する子どもの教育支援
虎屋本店「和菓子の移動教室」
広島県福山市にある株式会社虎屋本舗は、創業400年の老舗和菓子店舗です。同社では公式サイトにも「創業四〇〇年。和菓子を通じて子ども達に伝えたい事がある。」という企業コピーが掲げらているように、和菓子を通じてSDGsへ取り組んでいます。
SDGsに取り組む以前から、同社では社内の熟練の職人を離島や山間部へ派遣して、その地域の子どもたちだけでなく、障がい者支援学級や高齢者福祉施設などで菓子教室を実施していました。菓子作りを通じた地域社会との交流で、企業戦略としてもCSV(共有価値創造)戦略を推進し、外務省が主催する「第2回ジャパンSDGsアワード」において、「SDGsパートナーシップ賞」を受賞しています。
さらに和菓子文化の地域での浸透・継承に力を注ぎながら、高齢者の積極雇用も行うなど、人材のダイバーシティも進めるなど、SDGsのゴールと企業ブランディングを重ね合わせた活動を行う同社の取り組みは、地域創生のロールモデルとなり得ると注目を集めています。
まとめ
世界中の企業がSDGsに取り組み、それを外部に発信することにより企業ブランディングを行う現代。その中で的確な発信を行うことは、SDGsへの取り組みが自社やその地域において適したものであるかを精査する必要があります。
根拠のない情報や誇張表現・曖昧な表現を避け、企業理念と乖離(かいり)のないSDGsゴールへ取り組むことによって、SDGsウォッシュを避けることは企業のブランディングを考える上では不可欠な考え方です。SDGsウォッシュによって企業価値を下げてしまうことがないように、SDGsの理念や仕組みをしっかりと理解して、企業理念にあった取り組みを試みてください。