サウジアラビアの水素メガプロジェクトNEOM、84億ドルの資金調達を完了
サウジアラビア政府が主導する「サウジビジョン2030」の一大プロジェクトである 大規模都市計画NEOMをご存知ですか?NEOMは、サウジアラビア北西部のタブーク州に建設中の計画都市です。
NEOMの「NEO」は古代ギリシャ語で新しいを意味し、最後の1文字「M」は、アラビア語で未来を意味する「モスタクバル(mostaqbal)」の頭文字を取っています。NEOMは、SINDALAH、TROJENA、OXAGON、THE LINEの4つの「地域」で構成されており、超効率性を実現し、100%再生可能エネルギーで稼働するサステナブルな都市構想です。
2022年8月末には、NEOMプロジェクトの同計画の一環で建設される高層ビルプロジェクト「The Line」の概要が発表され話題となりました。「The Line」は、サウジアラビアが面する紅海から内陸の砂漠地帯にかけて一直線上170キロメートルに渡り、高さ500メートル、幅200メートルのビルを建設するという途方もないプロジェクトです。この巨大な建物には、居住空間、ショッピングモール、レジャー施設、学校、公園などが敷設され、900万人が居住する見込みです。建物の両端は170キロ離れていますが、高速鉄道により20分で移動可能になる予定です。
この一大プロジェクトのエネルギー源として水素が導入される予定です。グリーン水素プロジェクトを進める合弁会社であるNEOM Green Hydrogen Company(以下、NGHC)は、新しい工場の建設などに向けて総投資額84億ドルの資金調達が完了したと発表しました。NGHCは、再生可能エネルギー企業であるACWA Power社、産業ガスメーカーのAir Products社、サウジアラビアの開発プロジェクトNEOM社が共同出資した合弁会社で、世界最大の水素プラントの建設を計画しています。2026年に水素プラントを本格稼働させる計画であり、太陽光や風力などの自然エネルギーによって発電された電力を活用し、600トン/日のグリーン水素を生産する予定です。このプロジェクトは、23の銀行や金融機関のコンソーシアムから61億ドルのノンリコース・ファイナンスを受けています。
水素は、産業セクターから排出される温室効果ガスの削減に貢献する次世代エネルギーの一つとして注目されています。サウジアラビアだけでなく、EUでもグリーン水素の生産量を増加させる動きがあります。水素は、太陽光発電や水力発電といった再生可能エネルギーで代替することが難しい、高熱プロセスの製造過程や中長距離移動のエネルギー源として活用が期待されています。IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)によると、石油化学の精製過程やアンモニア生産で水素は使用されていますが、石油化学セクター全体で使用されるグレー水素製造によって、9億MT以上の二酸化炭素が排出されており、気候変動対策のため、グレー水素をブルー水素、グリーン水素へと切り替えていく必要があります。