IEAと日本のエネルギー政策|持続可能な未来への道筋と課題
私たちは生活する上で、多くの電力を消費しています。現在皆さんがされているように、記事を読むために使用しているスマートフォンやパソコンも、使用するには充電するための電力が必要です。しかしエネルギー産業は、世界全体で排出される温室効果ガスのうち、25%と最も多くの割合を占めています。世界では脱炭素社会を実現するために、化石燃料ではなく太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーなどの代替エネルギーの導入が加速しています。
日本のエネルギー事情
日本における2018年度の自給率はわずか11.8%と、エネルギー源として使用される石炭・石油・天然ガスを海外からの輸入に大きく依存しています。
そこで、化石燃料以外でエネルギーを発電しようとエネルギー源の分散が進みました。しかし、東日本大地震で福島第一原発の事故が起きてしまったことで原子力発電所が停止し、以降温室効果ガスの排出量は増加し続けています。
再生可能エネルギーについても2018年度の割合は全体の18%、2020年は21%と導入数は増加傾向にありますが、まだまだ少ない状況が続いています。
これらのエネルギー資源について議論する際に出てくるのが、国際エネルギー機関IEAです。
IEAとは?
IEAとは、International Energy Agencyのことで日本語では国際エネルギー機関となります。
「政府や業界と協力して、すべての人にとって安全で持続可能なエネルギーの未来を形作る」ことをミッションに掲げており、1973年に第一次石油危機が起きたことを受け、石油を中心としたエネルギーの安全保障を目指している経済協力開発機構(OECD)の下部組織として1974年に発足しました。
このように、初めは石油輸出国機構(OPEC)へ対抗するために誕生しており、石油を消費する国々で構成されていましたが、現在は地球の人々がより手頃な価格で、より賢く、より持続可能なエネルギーへアクセスするためにデータの収集、分析、解決方法の提示や格好政府に向けた政策提言などを行っています。
IEAに参加するためには、OECDに参加している加盟国であること、尚且つ自国の前年の1日あたりの石油純輸入量90日分を備蓄しているかどうか、という基準を満たす必要があります。
現在IEAは、OECDに加盟しているカナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、韓国、英国、米国など30ヶ国と、アイスランド、チリ、イスラエルなどIEAには加盟していないが参加を申請中の国などを含めた合計38ヶ国で構成されています。
また、OECDに加盟していない中国やインドネシア、インドなどに対しても協力を要請しています。
IEAの活動
IEAでは以下の「4つのE」を目標に掲げています。
- エネルギー安全保障の確保(Energy Security)
- 経済成長(Economic Development)
- 環境保護(Environmental Awareness)
- 世界的なエンゲージメント(Engagement Worldwide)
石油市場の情報収集や分析に加え、自給率が低く石油の輸入に依存している日本のエネルギー自給を向上させていくための取り組みなども行っています。例えば、省エネに関する研究や普及、太陽光発電や風力発電などの代替エネルギーの開発や情報公開を通じて利用の促進を図っています。
また上記でも述べた通り、OECDに加盟はしているがIEAには参加していない国や、OECDの非参加国に協力を求めていくことなど、さまざまな事柄に取り組んでいます。
IEAの意思決定権は、全ての加盟国からの代表で構成される理事会に委ねられており、定期的に開催されます。通常は2年ごとの開催が原則です。
日本にとってのIEA
日本は石油の供給の大半を海外に依存しているので、万が一供給が途絶えてしまった場合はこのIEAの緊急時対応システムを利用することになります。その点で、日本のエネルギー安全保障上とても重要です。
また、IEAは多くの情報を元にデータ分析を行っており、エネルギー政策に関して広い知見を持っています。そのため、それらの情報共有や意見交換の場としても重要です。
そして、IEAは4〜5年ごとに国別に詳細審査を行い政策提言を行います。これは日本のエネルギー政策に対しても、とても有効なインプットとなっています。
日本に関するレポートはこちら(英語)
日本はIEAの活動に積極的に参加しており、日本の分担金分担率は米国に次ぎ第2位(2021年、13.068%)となっており、IEAの正規職員約300名のうち邦人職員は11名(2021年8月現在)となっています。
石油備蓄放出のニュース
昨年秋頃、コロナの感染が収束し経済活動が活発化したことで、原油の値段が上昇しました。その際、日本政府は一時的な措置として、原油価格の抑制のためにアメリカのバイデン政権からの要請を受け、国内消費量数日分に相当する石油の国家備蓄を提供しました。また、アメリカも過去最大の石油備蓄の放出を行いました。
このように、石油に依存することは、私たちの生活にも大なり小なり影響が出ます。IEAが作成しているレポートなどに目を通し、より手頃な価格で、より賢く、より持続可能なエネルギーへアクセスするたに賢い選択をしていけたらと思います。
参照:
資源エネルギー庁WEBサイト|資源エネルギー庁
国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の概要|外務省
IEA – International Energy Agency