バイオマス発電の仕組みと課題|メリット・デメリット・立地条件を解説
日本は2050年までにカーボンニュートラル、つまり脱炭素社会を目指しています。
2020年のデータを見ると、日本全体で排出される二酸化炭素のうち、エネルギー部門が40%を占めています。
カーボンニュートラルを実現するためには、化石燃料に頼らない太陽光発電や風力発電、地熱発電、中小水力発電、バイオマス発電といった再生可能エネルギーが注目されています。
2018年度の再生可能エネルギーの割合は11.8%ですが、2030年度には22〜24%に引き上げる計画です。
また、再生可能エネルギーの割合は、36〜38%に達するかもしれないとも言われており、再生可能エネルギーの推進がさらに進んでいくと期待されています。
バイオマス発電とその種類
バイオマス発電とは、動植物由来の生物資源を燃やしたり、ガス化したりすることで電力を生み出す方法です。燃料や燃焼方法によって、主に3つの種類に分けられます。
直接燃焼方式
木くずや間伐材(森林の育成のために間引いた木材)、可燃性ごみ、精製した廃油などが燃料として使われます。木くずなどは「木質ペレット」という小さい固形状の燃焼物に、間伐材などは粉砕して「木質チップ」などに加工されます。こうすることで燃焼しやすくなり、エネルギーへの変換効率を高めることができます。
熱分解ガス化方式
木くずや間伐材、可燃性ゴミなどを燃料として使いますが、これらを直接燃やすのではなく、加熱して発生させたガスで発電します。
生物化学的ガス化方式
家畜の糞尿や生ごみ、下水汚泥などを燃やすのではなく、発酵させてメタンなどのバイオガスを発生させ、それを使って発電します。
バイオマス発電のメリット
バイオマス発電のメリットは、主に次の3つがあります。
CO2の排出実質ゼロ
バイオマス発電では、資源を燃やす際にCO2が排出されますが、原料の木材は成長中にCO2を吸収するため、実質的にCO2排出量がゼロ(カーボンニュートラル)になると考えられています。
資源を有効活用することができる
本来ゴミとして処分される建築廃材や食品加工廃棄物、家畜の糞尿などを利用することで、無駄なくエネルギーを活用できます。
家畜の糞尿は水質汚染の原因にもなり得るため、これを発酵させてバイオガスを生産することで環境への負荷を軽減できます。
地域のゴミ処理場の近くにバイオマス発電所を設置すれば、その地域で発生したゴミを使って発電し、エネルギーとして還元することが可能です。
場所を選ばない
バイオマス発電以外の再生可能エネルギーには、それぞれ特定の発電条件があります。
たとえば、太陽光発電は日照時間に依存し、風力発電は年間の平均風速に依存します。水力発電は河川やダムのある場所に依存します。
一方、バイオマス発電には地理的な制約がありません。燃料の種類に応じて、発電所の立地を考慮することが重要です。
例えば、ゴミを燃料にする場合はゴミ処理場の近くに設置するのが理想です。間伐材を使用する場合は林業を行っている地域に、廃油を使用する場合は工業地帯に設置するのが望ましいです。
こうすることで、燃料の調達コストや輸送コストを抑えることができます。
バイオマス発電のデメリット
一方で、バイオマス発電には次のようなデメリットがあります。
発電所の分散
メリットとして、バイオマス発電は他の再生可能エネルギーと比べて場所を自由に選べるとお伝えしました。しかし、その結果として発電所が広範囲に分散しやすく、人件費や運搬費が増えることがあります。
これを解決するためには、畜産農家や林業関係者など、地域全体で連携し、効率的なプラットフォームを構築することが必要です。
燃料を調達する必要がある
バイオマス発電以外の再生可能エネルギーは、日光や風、水などの自然エネルギーを利用しているため、燃料の調達や管理が不要です。
一方、バイオマス発電では、エネルギーに変換しやすくするために「木質ペレット」への加工や、品質管理、さらに在庫を保管する場所が必要になります。
発電効率は低い
現状のバイオマス発電の効率は約20%とされ、これは太陽光発電や地熱発電と同程度です。しかし、水力発電が80〜90%、風力発電が約40%であるのに対して、比較的低いのが現状です。
また、燃料品質のばらつきによって燃焼炉内の温度が安定しないことも課題となっており、安定した品質のバイオマス燃料が求められています。
バイオマス発電の立地条件
バイオマス発電所を建てる場所は、燃料の供給やコストを考える上でとても重要です。
例えば、ゴミを燃料に使う場合は、ゴミ処理場の近くに設置することで輸送コストを抑えられます。間伐材を使う場合は林業が盛んな地域が適しており、廃油を利用するなら工業地帯の近くが便利です。
また、地域との共生や環境保全も大切です。効率よく発電できる場所を選ぶことで、地域にも配慮した運営が可能になります。
このように、バイオマス発電の立地には、効率と環境のバランスが求められます。
バイオマス発電に関する政策と規制
バイオマス発電には、さまざまな政策と規制が関わっています。
日本では、再生可能エネルギーを推進するために、バイオマス発電に対するガイドラインが設定されています。例えば、燃料の安定供給を確保するための計画策定や、地域住民との合意形成が求められます。
さらに、事業計画を認定するためには、環境への影響を評価し地域と協議することが必要です。また、バイオマス燃料の品質や持続可能性を確保するための基準も設けられています。
これらの規制を守りながら、バイオマス発電を効率的で持続可能なものにしていくことが重要です。
最後に
バイオマス発電には、燃料の種類や発電方法によって違いがあることを説明しました。
脱炭素が叫ばれる中で注目されていますが、必ずしもバイオマス発電が「ベスト」な選択肢ではなく、まだまだ課題が多いのも現状です。
それでも、日本は化石燃料の使用を大幅に削減する必要があるため、地理的な制約が少ないバイオマス燃料は、これからの社会において必要な選択肢の一つです。
さらに、バイオマス発電を効果的に普及させるには、政策や規制も重要です。適切な規制と政策が整備されれば、バイオマス発電の持続可能性はさらに高まり、注目されていくでしょう。