日本のゴミ問題と解決策|リサイクルとアップサイクルの海外企業から学ぶ
2021年3月に環境省が発表した資料によると、日本の年間のゴミ総排出量は4,274万トン(東京ドーム約115杯分)、1人1日当たりのゴミ排出量は918グラム(約お茶碗6杯分)です。このままでは、2040年にはゴミを埋め立てるための最終処分場(埋立地)が無くなってしまうといわれていますが、その解決策は未だに見つかっていません。
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この記事では、日本のゴミ問題の現状、海外のリサイクル・アップサイクル事例やサーキュラーエコノミー(循環経済)に向けたサステナブルな取り組みをしている3つの企業をご紹介します。
日本のゴミ問題
日本のゴミ問題は深刻です。環境省の調査によれば、年間で東京ドーム約115杯分、4,274万トンものゴミが排出され、1日1人当たりに換算しても918gと決して少ないとはいえない状況です(令和元年度)。リサイクル率は19.6%にとどまり、ほとんどのゴミが焼却され埋め立てられている現状がうかがえます。
ゴミを埋め立てる最終処分場の余力はあと21.4年分しかないとされており、埋め立てによる環境負荷も懸念されています。ゴミを削減しリサイクル率を高めるなど、持続可能性にむけた取り組みは喫緊の課題です。
ゴミに新たな価値を与えるアップサイクル事例
世界のゴミの問題も深刻で、地球上では毎年20億トンものゴミが発生しています。日本のような焼却設備は普及していない国も多く、毎年膨大な量のゴミがそのまま埋め立てられたり、ゴミ山のように放置されたりしています。
そんな中、ゴミと思われているものから原料を作り出すアップサイクル(廃棄物に新しい価値を与える)の取り組みが世界中で進んでいます。分別していないゴミをサステナブル(持続可能)な代替プラスチックに変える技術を開発したイスラエルの企業をはじめ、世界の3つの企業の取り組みから学びましょう。
UBQ Materials Ltd.(イスラエル)
UBQ Material(UBQマテリアル)はイスラエルに本社のあるリサイクル・原料(UBQ)メーカーです。埋め立てるほかに行先のない家庭ゴミを“UBQ™”という、植物由来の環境に優しい代替プラスチック素材に生まれ変わらせる技術があります。
UBQマテリアルでは、回収したゴミのうちリサイクル性の高い金属や鉱物は取り除いて、通常のリサイクル工場に送ります。そのほかの残ったゴミ、例えば食品や汚れたおむつ・紙・段ボール、庭木などの植物、分別されていないプラスチックなどを原料として“UBQ™”を作ります。これらのゴミは、これまではリサイクルできないと考えられていたものばかりです。
UBQマテリアルは、家庭ゴミの大半が有機材料で構成されていることに着目しました。高度な廃棄物変換技術により、それらの廃棄物をリグニン、セルロース、繊維、糖などの基本的な粒子構造に分解。“UBQ™”を作る分子に組み換え、立て直すことで作られています。
そうして作られた“UBQ™”は、幅広い産業用途の原料として利用可能です。プラスチック、木材、コンクリート、鉱物の代替品として、自動車部品、家庭用品、自治体のゴミ箱、レストラン内製品などの製品の生産に活用されています。
UBQマテリアルによれば、世界中の年間20億トンものゴミの80%は埋め立てられ(オープン・ダンピングなど適切でない埋め立て方法も含む)、そのうちリサイクルされているゴミはわずか4%です。
“UBQ™”を作る方法ですが、石油や化石燃料を使用しないため、環境に優しく価格も安定しています。さらに、再リサイクルも可能なのでサステナブルです。このテクノロジーは、ゴミをアップサイクルでき、循環を繰り返すことのできるサーキュラーエコノミー型の事業として注目を集めています。 また、UBQマテリアルは2018年よりB Corp認証(アメリカの非営利団体B Labが、環境や社会への影響、透明性や持続可能性などの厳しい基準を満たした営利企業を認証する制度)を受けています。2019年には環境のためのベスト企業にも選出されました。
Origin Materials(アメリカ)
アメリカのOrigin Materials(オリジン社)は、食用以外の植物由来原料より化学品を製造している会社です。バイオマス、つまり植物由来の炭素をフラニック中間体と呼ばれる構成化学物質クロロメチルフルフラール(CMF)とハイドロサーマルカーボン(HTC)、およびその他の副産物に変換するプラットフォーム技術を開発しています。
オリジン社の技術とシステムを活用すれば、食品・飲料の包装、衣料、繊維、プラスチック、自動車部品、カーペット、タイヤ、接着剤、土壌改良材などを石油由来のものと置き換えることが可能です。よってネットゼロ(温室効果ガスの実質ゼロ)を達成することも可能。オリジン社はダノン、ネスレ、ペプシコなどの世界的企業とともに、リサイクル可能で100%植物由来のペットボトルの開発なども行っています。
このオリジン社の技術は特許を取得しています。経済性や脱炭素に向けた動きは、第三者機関によって検証されており、複数の世界的企業や投資家からの支持を得ています。一例として、2021年5月には、三菱ガス化学株式会社が植物由来原料からの化学品の開発・工業化に向けたパートナーシップの構築を発表しています。
FORUST(アメリカ)
FORUST(フォルスト社)は木くずやおがくずなどから、デジタルマテリアル化された木材を、3Dプリント技術を用いて生産しています。ホワイトアッシュからゼブラウッド、オーク、マホガニーなど、ほぼすべての木目を模倣することができ、見た目も天然の木材と遜色ありません。
フォルスト社によれば、世界で毎年150億本の木が切り倒され、紙製品・建築材料・家具などに利用されています。その際に毎年何百万トンもの切れ端やおがくずなどの木材廃棄物が発生しています。この廃棄物の一部は回収され、燃料用の木質ペレットにダウンサイクル(格下利用)されている場合もありますが、残りのおがくずは燃やされたり、空気を汚染したり、埋め立て地に送られたりしています。
おがくずは自然由来で生分解性ですが、分解の過程で高濃度のリグニンと脂肪酸を放出します。これは水を汚染し、野生動物や微生物に悪影響を及ぼす可能性があり、大量に埋めると有害なのではないかと懸念されています。こうしたリスクを減らし、木材と同じようにアップサイクルでき、有効活用できるフォルスト社の取り組みは、コストの削減も期待でき今後ますます注目を集めていくでしょう。
まとめ
ゴミのアップサイクルにより、新しい価値を与える取り組み事例をご紹介しました。ゴミを材料に変える取り組みや技術が広がっていけば、私たちの世界からゴミをなくせる日も近いのかもしれません。
自社から排出されるゴミをできる範囲でリサイクルしたり、包装材をリサイクルしやすい素材に変えるなど、少しずつ取り組みや意識を高めていくことが大切ではないでしょうか。紹介した事例のような最新の技術は、自社で実践することは難しくても、パートナーシップを構築することで目標に近づくことができるでしょう。